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西岸地区へ捜査開始で衝突:パレスチナ人5人死亡
イスラエル軍は、ハマスが西岸地区で大規模なテロ攻撃を準備しているとの情報を得た。このため、25日夜から26日早朝にかけて、西岸地区5地域に、治安部隊を送り込み、テロリストの捜索・逮捕を試みた。この時に各地で、激しい戦闘となり、パレスチナ人5人が死亡。イスラエル兵2人が重症となった。
パレスチナ人5人のうち、1人はイスラム聖戦だが、4人はハマスであった。死亡した一人は、ジェニン近郊での戦闘で死亡したオサマ・サバ(22)まだ可愛らしさものこる青年である。また、モハンマド・ソバはわずか16歳の少年であった。
One of the Palestinians killed in the overnight gun battle with IDF troops in Burqin near Jenin, is identified as 22 y/o Osama Sobah. pic.twitter.com/3RBhnucvtJ
— Emanuel (Mannie) Fabian (@manniefabian) September 26, 2021
負傷したイスラエル兵2人は、ハイファの病院に搬送された。かなりの重症だが、なんとか命はとりとめているとのこと。この作戦には、軍、警察、国境警備隊、シンベトと4部門が参加していたことから、情報錯綜か、指示系統の乱れか、味方による誤射である可能性が指摘されている。
逮捕されたハマスメンバーたち7人は、皆武器を所持していた。イスラエル軍によると、グループの大部分は逮捕したが、まだ一部が地域にまぎれている可能性があるとことで、今後も逮捕劇が続く可能性が高い。最近、西岸地区で逮捕されていたパレスチナ人も含めると、今回で20人を超えた。
今回、押収した武器は、少なくともライフルのような大型の銃が5丁と、大量の爆弾となっている。国内治安組織シンベトによると、グループは、まさにテロ決行直前であったとのこと。
www.timesofisrael.com/hamas-cell-hit-in-west-bank-raids-planned-massive-jerusalem-terror-attack-tv/
エルサレムでの大規模テロを阻止
ハマスがどんなテロを企画していたかについて、詳細な情報はないが、一つは全国レベルでイスラエル人を誘拐、また殺害することと、エルサレムでは、第二インティファーダの時のような連続爆破テロを計画していたという。ただし、自爆テロの準備はしていなかった。
この大規模捜索が行われた夜、ベネット首相はちょうと、国連総会に出席するために出発するところだった。出発前記者会見の際に、この件について、“非常な緊急事態だった”と述べ、治安維持のための対策であったと述べた。
一方、ハマスは、死亡した者たちは、シオニストの占領に対する殉教だとの5人を称賛する声明を出した。また、この戦闘は、パレスチナ自治政府が、シオニスト(イスラエル)と、ラマラで治安維持の協力にむけた会談をした結果だと述べた。アッバス議長がラマラでガンツ防衛相と会談したことを指していると思われる。
www.timesofisrael.com/idf-soldiers-armed-palestinians-battle-in-west-bank-during-arrest-raids/
今後どうなるかだが、すでにジェニン近郊のヨセフの墓の遺跡とされる場所に行こうとしたユダヤ教徒500人とその保護をしていた治安組織との間に、衝突が発生した他、ハマスメンバーが5人死亡していることから、ガザからのロケット弾攻撃が始まるのではないかとの懸念もある。しばらくは要注意である。
パレスチナ人の内部抗争が後押しか
西岸地区でパレスチナ人5人が死亡する直前の25日、ヘブロンでは、パレスチナ自治政府に反発するファタハメンバーと、パレスチナ自治政府のモハンマド・シュタイエ首相がヘブロンで、地元民たちと緊急会議を行っていた。
ヘブロンでは、昨今、種族間紛争があり、治安が著しく悪化している。無法地帯化がすすみ、ハマスも勢力を伸ばしているとみられることから、地元民や、地域に在住するファタハメンバーたち(パレスチナ自治政府所属)が、パレスチナ自治政府の対処に不満を訴えていた。
パレスチナ人の間では、ハマスを支持する人は多くはないが、パレスチナ自治政府を支持しない人も、統計によると80%近くになるとの結果が出ている。パレスチナ自治政府は、内部でも分裂の危機が始まっているとみられている。
自治政府のシュタイエ首相は、ヘブロンの地元民と会談の後、パレスチナ自治警察に犯罪者や、違法に兵器所持する者を逮捕するとともに、武器も没収するよう、指示を出した。対象になるのは、ハマスも含むということである。
こうした状況からも、ハマスにパレスチナ自治政府がイスラエルと治安において手を組んでいると言わせる結果になったかもしれない。
西岸地区でのイスラエル治安部隊との大きな衝突はこの直後に発生している。ハマスが、自治政府警察に武器を没収されることになる前に、イスラエルでのテロを決行しようとし、これをイスラエルが察知して緊急に大規模逮捕に乗り出したと言うことも考えられる。
www.timesofisrael.com/poll-nearly-80-of-palestinians-want-mahmoud-abbas-to-resign/
問題は、誰が一番のヒーローかということ
今回の西岸地区からイスラエルへの大規模テロを計画していたハマスの狙いについて、今月初頭、イスラム聖戦メンバー6人がイスラエルの刑務所から脱獄に成功し、ヒーロー視されていることも一因ではないかとの見方もある。
ハマスもイスラエルに対して強い態度に出られるということを示すことで、勢力を確保しようとしているということである。
そのヘブロンでは日曜、ナチスの大きな旗が掲げられ、イスラエル軍がこれを撃ち落とす事件も発生していた。パレスチナ人の間で、ヒーローとして認められるためには、イスラエルにどれだけ敵対しているかが、大きな指標になるということである。
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ベネット首相は、国連総会で訪米する直前の記者会において、「イスラエルは、他人によって自分を定義づけすることはない。イランやパレスチナ人との関係によってその存在を定義づけることはない。イランやパレスチナ人の指導者たちにいうが、イスラエルへの執着をやめ、まずは、自分の国の市民たちの現状を見て、その改善につとめるべきである。」と述べた。
石のひとりごと:全く終わりなき問題
まったく、ベネット首相の言う通りである。パレスチナ人たちの課題は、人々の生活ではなく、自分の勢力の安定と増強であり、その手段として、イスラエルへの憎しみが利用されているという点だ。どちらが、よりイスラエルを憎むのか、どれだけ実際に戦っているのかで市民の支持率が決まるというのが、パレスチナ人の国を収める指針なのである。
イスラエルへに憎しみ度が基準になっているという点が、まさにイスラエルに依存しているということである。
それにしても、危機一髪で、大きなテロが阻止されてよかった。国内が混乱すれば、ベネット首相はアメリカはいけなくなっただろう。今回の国連総会への出席は、イスラエルにとって、新しい姿勢を示す重要な機会であった。
これは、全くの石のひとりごとであるが、ベネット首相、この世的にいえば、“ツイている”。聖書的に言えば、主がついておられるということであろうか。