レバノンからISIS追放へ:ヒズボラとレバノン軍がはさみうち 2017.8.14

8月3日、ヒズボラは、元アルカイダ系のシリア反政府勢力と停戦合意した後、取引を行い、反政府勢力戦闘員とシリア難民、計約9000人を、シリアとの国境に位置するレバノン領内アーサル地方から出てシリアへ撤退させることに成功した。BBCがのろのろと出て行く難民たちの列の様子を報じている。 

*アンサル地方は、レバノン領の右上部に小さく見える赤いエリア。周囲はアサド政府軍の支配域である。

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これと引き換えに、ヒズボラが得たのは、ヒズボラ戦闘員の遺体5体。その後、レバノンで拘束されていたシリア人3人と、ヒズボラ戦闘員3人の交換も行われたという。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5000379,00.html

この直後から、ヒズボラと、シリア政府軍は、反政府勢力がいなくなったレバノン領アンサル地方にいるISIS撃滅へと次なるステップを開始した。ヒズボラ・アサドチームは、シリア側から、アンサル地方に向けて攻撃を始める。

www.aljazeera.com/news/2017/07/arsal-hezbollah-jabhat-fateh-al-sham-agree-ceasefire-170727045158437.html

一方、レバノン軍は、アメリカとイギリスの支援を受けて、レバノン側からアンサル地方のISIS撃滅に向けた攻撃する。アメリカとイギリスは、ヒズボラとアサドチームがアンサル地方を支配するようになるのを避けたいのである。

もしヒズボラとアサドチームが、アンサル地方に居座ることになれば、そこにイランが入ってくることを意味する。これはイスラエルも避けたいところである。

<シリアへ帰還する難民たち>

シリア・イラクでISIS撃滅作戦が進んでいるが、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、これまでに約50万人近いのシリア人が、アレッポ、ホムス、ダマスカスなどの自宅へ一時帰宅し始めているという。

50万人のうち、44万人はシリア国内で難民となっていた人々で、31000人が、近隣の国で難民となっていた人々である。帰還といっても、これらの町は、すでに修復しようもないがれきの山となっているため、実際には人間が住める状態ではない。

しかし、それでも、今回、レバノンで難民になっていたシリア人たちはシリアへ戻ることを決めた。それほどレバノンでの難民生活は悲惨だということである。

www.bbc.com/news/world-middle-east-40460126

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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