ホロコースト殉教者と英雄を覚える日:ベネット首相一致を呼びかけ 2022.4.29

イスラエルのホロコースト記念日

今年もイスラエルのホロコースト記念日がやってきた。今年は、27日午後8時からの式典が、ヤド・ヴァシェムで行われた。サバイバー家族などで会場はぎっしりであった(マスクなし)。全国でのサイレンでの黙祷は翌28日午前10時。ヤド・ヴァシェムでの犠牲者の名前の読み上げや、献花式などは28日日没まで続いた。

トレブリンカへ移送されるユダヤ人 Wkipedia

毎年、テーマが出されるが、今年は、死の収容所へ移送されていったユダヤ人たちの中でも、特に終戦間際の1944-1945年に移送されて行った人々を覚えることがテーマであった。

ナチスは、ファイナル・ソルーション(最終解決)として、ユダヤ人絶滅を実に細かく、具体的に計画していた。その対象は、当時全世界にいたユダヤ人人口は、約1660万人で、ヨーロッパには950万人であった。ナチスは、旧ソ連やその周辺諸国のユダヤ人も含め、1100万人を殺戮する計画を立てていた。

最終的には、600万人でその計画は潰えたわけだが、ナチス崩壊直近の1944年から1945年の間の移送と殺戮は、特に最後の追い込み的な、激しいものであった。

ヤド・ヴァシェムでの展示では、ハンガリー、ギリシャ、フランス、ポーランド、イタリア、チェコスロバキア、ドイツからの移送が、その渦中にあった家族たちの目線で、展示されている。

www.yadvashem.org/exhibitions/last-deportees.html

式典での中央の点火は今年も、自身もサバイバーであるラビ・イスラエル・メイール・ラウ(84)。ベネット首相、ヘルツォグ大統領もメッセージを語った。6人のサバイバーがその子供たちと共に、犠牲となった600万人を代表して6つの点火を行った。(それぞれの証言は40:30ぐらいから)

また今年は、ドイツからブンデスタグ大統領が、ヤド・ヴァシェムを訪問して献花を行い、式典に出席した。クネセット(国会)でも演説を行った。

www.timesofisrael.com/bundestag-president-in-israel-to-mark-holocaust-remembrance-day/

ベネット首相:今は分裂しているときではない

ベネット首相 GPO

ベネット首相は、母親がヤド・ヴァシェムに、苗字Reich(第三帝国)、生まれ、死亡アウシュビッツ、年齢30分と届け出た女の子のことから話を始めた。

そうして、時々ホロコーストと別の悲惨なできごとを比べる動きがあるが、ホロコーストは人類史上起こったことがないような出来事なのであり、決して比べるべきではないと述べた。

名指しはしなかったが、プーチン大統領が、ナチを引き合いに出している他、ウクライナのゼレンスキー大統領もホロコーストを引き合いに出している動きを示唆しているとみられる。

また、イスラエルで今右派左派と分裂が発生していることについて、イスラエルが滅びた時の共通点は、内部で分裂した時だと述べ、いまの一つになるべきだと述べた。確かに、バビロン捕囚の時、またローマ帝国にエルサレムが滅ぼされた時も、イスラエル人自身の間に大きな分裂があった。

これについて、ベネット政権は、離反者が出て過半数を割り込んでいること、またこの日の直前に、ベネット首相の息子宛で、実弾入りで、ベネット首相と家族の死を宣告する脅迫状も受け取っていた。今、右派勢力が、右派左派アラブも共になっている政権を、なんとしても右派政権に戻そうとして、暴力にまで訴えようとしている姿は、かつてイスラエルが滅んだ時の様子にも似ているわけである。

www.ynetnews.com/article/rkhnrburc

また、ホロコーストから、ベネット首相自身が学んだことは、私たちには、関係が深い友好国や、少し遠い友好国もあるが、最終的には、ユダヤ人もイスラエルも、自分の運命は自分で責任をもたなければならないということだと述べた。いいかえれば、自国の防衛はだれにも頼らず、自分で責任を持つということ。他国をあてにしない、たとえ守ってくれなくても文句は言わないということである。

これはたとえば、日本では、日米同盟で、アメリカが日本を守ってくれることが当たり前になっているが、そうではなく、最終的な国の防衛の責任は日本自身にあると考えるということである。

ベネット首相は、その上で、今ユダヤ人には、イスラエルという一つの政府、一つの軍隊、一つの国会、一つの国がある。一つになっていれば、私たちを滅ぼせる敵はいないと語った。

ベネット首相と同様、ヘルツォグ大統領は、1941年10月13日、死の穴で行われた虐殺の写真、2人の子供の手を握っている母親の頭部が、ナチス兵士らとその協力者たちによって撃ち抜かれた瞬間の写真を使った。非常に恐ろしい写真である。

ヘルツォグ大統領は多くの聖書箇所から、こうした殺戮がいかに神の意に反したものであるかを語り、最終的には、エゼキエル37:12-14から墓から引き上げて神がイスラエルへ連れてきたと語ってスピーチを終えた。

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。