エルサレムの過越し・復活祭・ラマダン 2022.4.18

聖墳墓教会

イスラエルは、新型コロナからの出エジプト?

新型コロナによる世界の感染者は5億を超え、死者は622万人を超えたが、ワクチンの普及や治療薬開発などで、世界には、日常が戻り始めている。

イスラエルでは、先月、新たな感染拡大が懸念されたが、深刻にならないまま、感染者数は減少傾向にある。

現時点での新規感染者は24時間で、2500人から3500人。死者は徐々に減る傾向にあり、最新データで222人。コロナ規制は、かなり緩和されてきている。

こうした中、今年は、ユダヤ人の過越(4月15―23日)、キリスト教徒の復活祭(4月15―17日)、イスラム教徒のラマダン(4月1日―5月1日)が、すべて同じ時にやってきた。それぞれ、2年ぶりに集まっての儀式や催しを行うことができている。

それぞれの様子は以下の通り。

ユダヤ人の過越

1)2年ぶりマスクなしセデル

イスラエルでは15日、日没から、各家庭やシナゴーグなどで、過越のセデルが行われた。新型コロナの影響で、普通にセデルが行われるのは2019年ぶりである。フラのキブツでは、300人が一緒に食事するセデル(マスクなし)を行うなど、まさにコロナのトンネルから出てくるような過越となった。

www.timesofisrael.com/israelis-celebrate-passover-seder-free-from-pandemics-bondage/

以下は18日嘆きの壁での祭司の祈り中継・いつもの満員が戻っている。

2)ベングリオン空港120万人通過みこみ:過越にエジプト行きフライトも開始

コロナで一時からっぽになったベングリオン空港は、13日、過越休暇で海外へ出て行くイスラエル人がこの1日だけで、7万3000人を記録。チャンネル12によると、過越前後で120万人が空港を通過するとのこと。かつての混雑が戻ってきている。

www.timesofisrael.com/its-a-madhouse-ben-gurion-airport-reports-heavy-traffic-ahead-of-passover/

また今年からシナイ半島のリゾート地、シャルムエルシェイクを往復する飛行機も始まった。過越にエジプトへ行く(戻る?)のも妙だが、17日、その最初の便となるエルアル機がシナイ半島に向けて飛び立った。シャルムエルシェイクまで50分のフライトだという。

これまで通り、陸路でシナイ半島に向かう人は、タバの検問所から出国する。そうとうに長い列ができていたとのこと。

なお、外国人がイスラエルへ入国するには、まだワクチン証明や医療保険保持、出発72時間前と、空港でのPCRが義務付けられるなどの制約がある。しかし、ガイド仲間によると、少しづつではあるが、旅行グループのガイドの仕事も戻り始めているとのことであった。

キリスト教徒の復活祭

1)ローマ・カトリック、プロテスタント

エルサレムの聖墳墓教会(キリストの十字架と復活を記念する教会)では、10日、キリストのエルサレム入城を記念するパームサンデー、17日がイースター(復活祭)であった。いずれも相当な混雑だが、東方教会系では、通常、旧市街に入れないほどになるので、それをお思えばまだ空いているといえる。

以下はオリーブ山に集まって、ゲッセマネの園まで行進するパームサンデー

以下は聖墳墓教会でにローマカトリックによる17日の復活祭

以下は、プロテスタント福音派、園の墓での礼拝

2)東方正教会

ギリシャ正教、ロシア正教など東方教会では、17日がパームサンデー(以下ビデオ)、24日が復活祭である。

以下はシリア、コプト教のパームサンデー

イスラム教のラマダン

以下は4月8日、ラマダン開始後最初の金曜祈りの日。高い警戒体制の中、ハラム・アッシャリフ(神殿の丘)には、予想より少ない、8万人が祈りにやってきたが、なんとか衝突もなく、この日を終えることができた。

www.timesofisrael.com/forces-on-high-alert-in-jerusalem-for-friday-ramadan-prayers-after-tel-aviv-attack/

ラマダン中は、日中断食し、日没後、家族で食事する。ハラム・アッシャリフ(神殿の丘)で食事している様子。ユダヤ教徒にとっては足を踏み入れるのも憚られる聖地だが、イスラム教徒は自由に食事できている。

なお、上記映像は4月8日、ラマダン開始から最初の金曜である。次に記事にあるように、その後、神殿の丘では、大きな衝突が発生し、イスラエルの警察が神殿の丘へ入ったことから、再び、混乱がエスカレートする傾向にある。

石のひとりごと

なんと多様でダイナミックなエルサレム。やはり人類の代表の都である。海外からの観光客がまだ少ないながらも、いつもの満員状態が戻っているようである。

特に最後の神殿の丘で平和に食事するイスラム教徒の様子にはちょっと驚きもあった。

イスラエルが、イスラム教徒が自由に礼拝するのを阻んでいると非難されるが、イスラエルはこのように、すべての信仰が自由に守られるようにしているということも世界は知るべきだろう。

 

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。