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イスラエルの外交で様々な動きがあるが、着いていけないほどに早い。最近の動きをまとめる。
ヨルダン国王:ベネット首相とガンツ国防相のヨルダン訪問
ヨルダンのアブダラ国王は、CNNのインタビューで、6月、就任したばかりのベネット首相とガンツ国防相が、ヨルダンを訪問したことを認めた。これはお忍び訪問で、イスラエル国内でも、詳細は明らかにされていなかったことである。
アブダラ国王は、2人と会談する前、パレスチナ自治政府のアッバス議長とも会談。その後、先週、7月20日、アブダラ国王はホワイトハウスでバイデン大統領と会談した。
アブダラ国王は、ベネット首相とガンツ防衛相との会談に励まされたと述べ、アメリカとともに、イスラエルとパレスチナ自治政府とを会談のテーブルに戻す必要があると進言した。(イスラエルとパレスチナ自治政府との間の会談は、現在は頓挫した状態にある。)
以下は、CNNのインタビューに答えるアブダラ国王の様子である。完璧な英語で、非常にわかりやすく、国王のパレスチナ問題に関する意見を述べている。(おすすめ)
その中でまず、アブダラ国王は、5月から発生したイスラエル国内のアラブ系市民の暴動について、このまま放っておくと内戦に発展するとの危機感を語り、それを予防するためには、イスラエルとパレスチナの和平交渉を再び再開させなければならないと語った。
メディアは、ベネット首相が1国家1民族支持者であったことから、交渉は無理ではないかと指摘されると、アブダラ国王は、イスラエルの中でアラブ系市民との対立が始まったことはこれまでになかったことであり、イスラエルにとっても危機感を呼びさますことになったと指摘。ベネット首相とガンツ国防相との直接会談を経て、この話(パレスチナ人との対話)を進められるのではないかと励まされたと述べた。
アブダラ国王は明確に2国家2民族案支持者である。すると、インタビューアーは、「ヨルダン市民の68%はパレスチナ人であるのだから、西岸地区、ガザ地区のパレスチナ人を全部ひきとって、西岸地区、ガザを含むエリアをイスラエルとし、ヨルダンをパレスチナ人の国とするという形での2国家2民族案についてどう思うか。」と質問した。
国王は、ヨルダンはヨルダンであり、パレスチナ人は、ヨルダンではなく、自分たちの独自の国を求めていると説明した。その上で、1国家1民族案は、1国家2民族案より難しいとの見方を述べた。ヨルダンでは、今年4月にアブダラ国王の異母弟ハムザ前皇太子が反乱をおこしたが、鎮圧したところである。
アブダラ国王が、ベネット首相たちとどんな話をしたのかは不明ではあるが、来月には、ベネット首相もバイデン大統領と会談することになっている。頓挫中のパレスチナ問題になんらかの動きが出てくるかもしれない。
UAE大使館がテルアビブに開設:両国の技術・ビジネス交流活発化
6月にUAE(アラブ首長国連邦)のアブダビにイスラエル大使館が開所したが、7月14日、テルアビブにUAEの大使館が開所した。テルアビブにアラブ首長国連邦の旗が、堂々と翻っている。開所指揮で、UAEのアル・カジャ初代大使とテープカットをしたのは、ヘルツォグ大統領であった。
世界は今、地球温暖化対策で、脱炭素に向けた動きが加速している。イスラエルとUAEが技術開発や、ビジネスで交流することは、エネルギーや物流にも変化になるとみられる。日本の大手企業も今、イスラエルや中東に熱い目を向けるようになっている。
www.timesofisrael.com/just-the-beginning-uae-opens-tel-aviv-embassy-as-sides-hail-ties/
モロッコから直行便開始:8月ラピード外相がモロッコ訪問予定
モロッコにはユダヤ人(スファラディ)の深い歴史が刻まれている。今もモロッコにあるユダヤ人コミュニティは、3000人でアフリカ最大である。イスラエルには、70万人のモロッコ系ユダヤ人が住んでいる。これまで、イスラエルとの間に正式な国交はなかったが、実際には、多くのイスラエル人たちが、様々な方法で、モロッコの家族を訪問したり、旅行で訪れていたのであった。その数は年間5万から6万人に及んでいた。
しかし、昨年12月、トランプ前大統領とネタニヤフ前首相により、イスラエルとモロッコの国交正常化が実現した。UAE、バーレーン、スーダンがイスラエルとの国交正常化を発表した後である。いわば、アブラハム合意の一部といえる。
www.jetro.go.jp/biznews/2020/12/ed7d007a7e820353.html
それ以降、大きな動きにはなっていなかったが、25日日曜、テルアビブから初の直行便が、モロッコのマラケシュ空港に到着した。乗客たちは第一号として、ケーキとお茶の式典で迎えられた。
その後、2本目となるイスラエルのエルアル航空による直行便も、同日マラケシュに到着。今後週に、2-3本の直行便が両国を行き来するようになるとのこと。
www.timesofisrael.com/direct-israel-morocco-flights-launched-months-after-ties-normalized/
イスラエルのラピード外相は来月にもモロッコを訪問し、モロッコの外相と会談し、その後モロッコのボウリタ外相をイスラエルに招くとの計画を発表した。実現すれば、ラピード外相は、イスラエル外相で最初にモロッコの土を踏む外相ということになる。
www.timesofisrael.com/lapid-confirms-hell-visit-morocco-in-first-for-an-israeli-fm/
アフリカ同盟にイスラエルがオブザーバーに
ラピード外相は、22日、イスラエルが、オブザーバーとしてアフリカ連合に加わる見通しを発表した。アフリカ連合は、アフリカ55カ国が加盟する世界最大級の地域機関である。(外務省HP)
アフリカ連盟は、2002年まではアフリカ統一機構で、そのときまでは、イスラエルはオブザーバーであったという。しかし、その後、アフリカ連盟になってからは、その立場にはなっていなかった。
ネタニヤフ政権時代、イスラエルはアフリカの国々への支援を行うなどして、アフリカの46カ国と関係を結んできた。最近では2019年のチャド、そして昨年のスーダンである。これまで激しくイスラエルに反発してきた国々も含む。
これに加えて今アフリカ連盟のオブザーバーに受け入れられたとしたら、今後の活動にも有利になる。活動の主なものは、湾岸アラブ諸国と同様、市場と治安維持、技術開発である。アフリカ諸国を味方につけることで、国連でのイスラエルの立場が向上する可能性もある。
これは、ネタニヤフ前首相の努力の結果である。今ネタニヤフ首相がこの場にいないのはなんとも残念であろう。