パームサンデー:クリスチャンたちも例祭 2021.3.30

オリーブ山での行進 3月28日 スクリーンショット

パームサンデー:イエス・キリストが十字架に向かってエルサレム入り

ユダヤ教の過越が始まった翌28日は、キリスト教パームサンデーであった。これは、イエス・キリストが、十字架にかかる1週間前に、ベタニヤからろばの子に乗り、オリーブ山を超えてエルサレムに入った時のことを記念する例祭である。

マタイの福音書21:8-9
・・すると群衆のうち大勢の者が、自分たちの上着を道に敷き、またほかの人々は、木の枝を切ってきて、道に敷いた。そして、群衆は、イエスの前を行く者も、後に従う者も、こう言って叫んでいた。「ダビデの子にホサナ。祝福あれ。主の御名によって来られる方に。」

オリーブ山からエルサレムまでは普通なら歩いて20-30分ぐらい。ケデロンの谷に向かって、急な坂を降りた後、旧市街までまた上がるので、結構きつい。

例年なら、世界中からやってくるクリスチャンの群衆が、イエス時代の群衆と同様に、やしの枝を振りながら、同じ道を行進する。昨年はコロナの影響で、行進できなかったが、今年は、感染も落ち着いてきたことから、実施された。しかし、人数はかなり少ないかった。

ところで、この時のことは、キリストがくるずっと前に預言者ゼカリヤが、旧約聖書の中で、預言していた事であった。

ゼカリヤ書9:9
シオンの娘よ。大いに喜べ。エルサレムの娘よ。喜び叫べ。見よ。あなたの王があなたのところに来られる。この方は正しい方で、救いを賜り、柔和でろばに乗られる。それも雌ろばの子の子ろばに。(聖書ゼカリヤ書9:9)

“王”としてエルサレムに入るキリストがこの時に乗っていたのは、立派な馬ではなく、ろばの子であった。群衆を見下せる高さもなく、群衆に押しつぶされるばかりに小さくもある。また、ろばは、ヘブライ語では、のろまでまぬけであることの象徴で、人をなじるときに、「ろばみたいなやつ」という言い方を今もしている。キリストに用いられたのは、優秀な者ではなく、用いるに足りないような者であったという事である。人の目に優秀な者を選ぶ人間社会とは違う、神の選びの不思議さを表している。

ここから1週間の間に、イエス・キリストは、エルサレム市内で裁判にかけられ、罪がなかったにもかかわらず、鞭打たれ、十字架刑となり、よみがえるという道をたどる。キリスト教徒たちは、これを記念するため、パームサンデーに始まり、次の金曜には、十字架の死を記念するグッドフライデー、そうして来週日曜日がイースターと呼ばれる復活祭を行ってこれを覚える。

過越との関係

この十字架刑による死と復活を通して、人々の罪の贖いを成し遂げたイエスは、「過越の子羊」と言われている。それを裏付けるように、十字架にかけられて死亡したのは過越が始まる日の日没前(金曜日)であり、よみがえった3日後の日曜日は、ユダヤ人の初穂の祭りの時であった。このため、毎年マームサンデーや、復活祭は、だいたいユダヤ人の過越の祭りと同じ時期に重なり、エルサレムの町は非常に混み合う季節である。*過越とイースターの時期がずれてくるのは、キリスト教が太陽暦であるのに対し、ユダヤ教が太陰暦であるため

その最も混み合うこの時期、昨年は、新型コロナの影響で、厳しいロックダウンが実施されていたため、聖地はどこも空っぽという全くの予想外の事態になったのであった。今年も外国人巡礼者はまだ来ることはできないが、イスラエル国内に在住する、主にアラブ人クリスチャンたちが、パームサンデーの行進をを祝うことができたのであった。

www.jpost.com/israel-news/holy-sepulchre-church-opens-for-palm-sunday-we-feel-more-hopeful-663427

聖墳墓教会もオープン

エルサレムでキリストの十字架刑が行われたゴルゴダの丘の位置については、複数の説がある。しかし、歴史的に最も早くから巡礼が集まる場所で、伝統的にもゴルゴダの丘とされるところにあるのが、エルサレム旧市街の中のある聖墳墓教会である。十字架刑と、そこからイエスの遺体を取り下ろして、過越が始まる前に慌てて納めた墓があった場所、つまりは、キリストが死から復活した場所を記念して最初に建てられたのがこの教会である。

コロナの影響でずっと閉鎖されていたが、コロナ感染が落ち着いてきたことから、パームサンデーを前に、オープンになった。コロナの前までは、入場者の数が多すぎて、長蛇の列、中は押し合いへし合い状態で入れない状態にまでなっていたのだが、今は、外国人観光客がおらず、人数制限もされているので、かなり少なくなっている。以下は聖墳墓教会でのパームサンデーの様子。

なお、カトリックなど西側系教会は今週から、キリストの十字架と復活までを覚えるが、東方教会(ギリシャ聖教など)は、ひと月後、5月2日がイースター(復活祭)になる。

イスラエルのクリスチャンは、総人口の約2%で、最も多いのは東方カトリックのマラカイ教会で、次が、ギリシャ正教である。プロテスタントは、少ないが、4日早朝、福音派クリスチャンたちも、復活を覚える教会、園の墓で礼拝を捧げる予定。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。