トルコがシリア領内へ本格軍事介入 2016.9.4

数々の爆弾テロ、クーデターと不安定な状況が続くトルコ。8月20日も、クルド人の町ガジアンテップの結婚式で爆弾テロが発生し、子供34人を含む54人が死亡した。

結婚式での犯行は、ISISと見られたが、エルドアン大統領は、犯行はどのグループか明らかでないとの立場を表明。クルド人勢力に対する攻撃も示唆する発言であった。

その数日後、トルコの戦車部隊が、国境を越えてシリアのジャブリスに侵攻し、ISISに占領されていた町を次々に解放した。

トルコの戦車隊(20台とも報告)は、昨日3日にもジャブリス南西部に侵攻し、これまでに8つの町を解放したという。トルコが、これほど本格的にシリアへ介入するのは初めて。(BBC)

この戦闘で、トルコ軍兵士少なくとも11人が死亡したとのこと。シリア人市民らが逃げる様子も伝えられている。

www.bbc.com/news/world-middle-east-37267111

<トルコのシリア介入の理由>

トルコのシリアへの介入の本当の目的はISIS撃滅ではなく、トルコと対立するクルド人勢力への攻撃であるとみられる。

トルコの本格的な介入は、アメリカとシリアのクルド人勢力(YPG)がシリア北部でトルコとの国境近くにある町マンビジを奪回した直後だった。

YPGは、トルコに対立する組織である。トルコは、アメリカとYPGが、トルコ国境で勢力を拡大することに歯止めをかけようとしたと考えられている。

<アメリカと中東>

トルコはアメリカのISIS攻撃チームの一員なのだが、今回トルコが攻撃したYPGは、アメリカが支援している反政府勢力の一つだった。

しかし、もっとややこしいのは、今回のトルコの軍事介入について、アメリカは黙認であったと伝えられている点だ。オバマ政権になって以来、アメリカは、中東での活動に及び腰となり、今では影響力を失いはじめているのである。YPGはじめクルド人勢力はアメリカに対し、不満をもちはじめている。

バル・イラン大学のトルコとの防衛関係専門家エラン・ラーマン氏によると、中東諸国はもはやアメリカは頼りにならないとみて、アメリカの顔色をうかがうことがなくなってきているという。

一方、地域での同盟関係を模索するなどして、アメリカに頼りすぎない形を築き上げようとしている。トルコも、イスラエルをはじめ、ロシアとの関係改善に乗り出している。

イスラエルは、やはりまだまだアメリカの顔色をうかがわなければならない立場だが、それでも、トルコとの和解はじめ、サウジアラビアやエジプトなどとの関係改善、またロシアともシリア領内で両国の軍が鉢合わせしないよう申し合わせるなど、忙しく外交を展開している。

イスラエルとトルコが関係改善へと歩みだしたことで、トルコのハマスへのテコ入れにも歯止めがかかっていると分析する。

このような状況の中で、イスラエルが守られ、外交を有利にすすめられるのは、イスラエルは強いと思われていることだとラーマン氏は分析している。

www.jpost.com/Middle-East/Diplomacy-How-Turkeys-advance-into-Syria-impacts-Israel-466672

<石のひとりごと>

今の中東はまさに戦国時代である。生き残るために、汚い手も使い、だれにつくのかも注意深く考えなければならない。

そのような世界情勢にあって、赤字大国であるにも関わらず、安倍首相が今、忙しく世界各地をまわって、支援の手を差し伸べている。アメリカだけでなく、ロシアや、アフリカ、サウジアラビアまで日本との関係が見えるようになってきた。

こうした外交は、”昔とは違う”今の世界情勢に即しているのであり、諸国の日本への敬意につながり、それが将来、日本を守ることにもつながって行くのではないかと思う。安倍首相の政策を主が祝福してくださるように祈りたい。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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