ゴラン高原で迎撃ミサイル発動 2016.9.20

シリア情勢が緊張する中、イスラエル北部ゴラン高原では、土曜午後、シリア方面から飛来したミサイルに対して、アイアン・ドーム(迎撃ミサイル)が発動するという経過があった。イスラエル側に被害はなかった。

この地域で迎撃ミサイルが発動するのは、2011円年以来。ゴラン高原には、イスラエルとシリアの間に、国連によって非武装地帯と定められているが、現在は、シリア政府軍と反政府勢力の戦闘地帯になっている。

流れ弾の多くはこの地域から飛来するのだが、今回も、アイアンドームが発動するぎりぎり7−8Km地点からの発射だったとみられている。

イスラエルは、これが果たして本当に流れ弾であったのか、何か意図的な背景があったのか、懐疑的な目で注目している。

*アイアンドーム

敵陣地から発射されたミサイルの軌道をすばやく計算して、着弾する前に空中で迎撃するシステム。このため、発射されてから25秒以内に着弾してしまうものや、5−6Km以内から発射されたものを迎撃することは不可能である。

したがって、ガザ地区直近の地域や、北部でも国境から数キロの地域はアイアンドームによる保護はない。

www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Analysis-Mortar-shells-over-the-Golan-Heights-accident-or-border-threat-46800

<米露関係に暗雲:共同シリア停戦案は失敗へ>

シリアでは、先週、ロシアとアメリカが、シリア内戦・終息にむけての話し合いで合意し、月曜からシリア政府軍と反政府政府勢力(穏健派)が先週月曜から、一応の停戦に入っていた。

それによると、アサド大統領に影響力を持つロシアが、シリア政府軍に軍事行動を停止させ、一方、アメリカは、一部ではあるが穏健派反政府勢力影響力に軍事行動を停止させ、ISISなど過激派との明確な分離を図ることになっていた。

その状態の元、アレッポなど包囲されている地域への人道支援を行い、1週間後、停戦が続いていることを確認後、米露共同で、まずはISISなど過激派勢力を一掃するという計画だった。

この”停戦”に入った先週月曜から数日は、確かに普段より、戦闘の少ない状況が続いた。しかし、その後、シリア政府軍、反政府勢力双方の衝突が散発。

土曜には、アメリカ有志軍が、ISISと謝ってシリア政府軍を攻撃。シリア軍兵士が、少なくとも63人死亡した(BBC)。アメリカはこの誤爆を認め、謝罪したが、ロシアは、緊急に国連安保理会議の開催を要請した。

なお、シリア政府軍を誤爆に関係したのは、イギリス軍、オーストラリア軍、デンマーク軍とみられているが、現在、調査中。

会議では、ロシアとシリア(アサド政権)が、「アメリカ有志軍は、ISISに加担している。停戦の妨害になっている。」と非難した。

これに対し、ケリー米国務長官は、「シリアの混乱の中で、だれがどの組織かを判別するのは、非常に難しいというのが現状だ。

ロシアは、安保理を招集して、こうしたミスを明らかにすることを優先したわけだが、今はまずは、シリア難民に人道支援を行い、とりあえず停戦を実現することが先決だ。問題は、ロシアが、基本的にアサド政権を擁護し続けていることだ。」と非難しかえした。

こうした中、停戦1週間の期限であった19日夜、シリア政府軍が停戦は終了したと宣言。米露が共同で主導した停戦案は頓挫した。

www.bbc.com/news/world-middle-east-37406757

<アレッポ:人道支援スタッフ12人死亡>

停戦期間が過ぎると、激しい戦闘が再開。アレッポでは、7万8000人に緊急支援物資を搬入しようとしていたトラック31台からなる輸送隊が、激しい爆撃にあい、少なくとも18台が破壊された。

これにより、国連とシリアの赤十字スタッフ12人が死亡した。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/218045
www.bbc.com/news/world-middle-east-37413411

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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