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エルサレムのアルジャジーラ・オフィス一時閉鎖
カタールの首都ドーハに本社があるアラブ系メディア、アルジャジーラは、世界的メディアで、アラビア語と英語で発信しており、日本のNHKなども情報源として利用している。イスラエルでは、西エルサレムと東エルサレムの2カ所にオフィスがあり、そこから情報を発信している。
しかし、アラブ系メディアなので、イスラエルについては、反イスラエル的な傾向が強い。ここからの情報からだけだと、イスラエルに対してネガティブな印象しか残らないというのが現状である。
このため、4月1日、ネタニヤフ首相が、イスラエル国内のアルジャジーラオフィスを閉鎖することを提言。この5月2日、エルサレムに2カ所あるオフィスを一時的(45日間)閉鎖するかどうかの決議を国会で行い、賛成多数で、可決した。
45日というのは、その後また再審議が必要になる一時的な時限的法案ということである。
この決議により、4日、通信省の監察官と警察が、エルサレムのアルジャジーラのオフィスに来て、報道機材などすべてを没収し、オフィスを閉鎖した。以降、イスラエルでは、テレビやオンラインでアルジャジーラの情報を見ることができなくなった。
以下はアルジャジーラが発信している当日の様子
イスラエル右派左派意見相違
ネタニヤフ首相と、通信省のシュロモー・カルヒ氏は、「アルジャジーラの記者たちは、イスラエルの治安に問題となる行動をしたり、イスラエル兵を非難している。イスラエル国内では、アルジャジーラに報道の自由はない」との共同声明を発表した。
カタールを本社とするアルジャジーラからの発信は、アメリカでの反イスラエルデモにも影響しているとみられており、元エルサレム市長で、今は議員のニール・バルカット氏は、「世界の反ユダヤ主義の主要な原動力だ」と主張し、この決議を称賛すると表明した。
しかし、カタールでの交渉を続けてきたモサドとシンベトの長官たちは、今は、人質返還交渉の最中であり、結果に支障が出るとして、この決議を取ること自体に反対を表明していた。このため、決議は、5日延期されて、5月2日に行われたということである。
この問題にも右派左派の意見の相違が現れている。カルヒ氏は、明確な右派議員である。中道から左派系にあたる国民統一党のベニー・ガンツ氏らは、法案には賛成するが、モサドとシンベト長官と同様、人質交渉が行われているタイミングで決議することにには賛同できないとして、投票を棄権していた。しかし、与党が過半数なので、可決は問題なかったということである。
アルジャジーラの反応:犯罪行為だ
これに対し、アルジャジーラは、「情報にアクセスする人権を侵害するものだ。政治的な目的で実施された犯罪である」と非難した。自社のホームページではトップでこの件を報道。猛烈に非難している。この他、イスラエルや西岸地区で記者活動をする外国記者協会などからも非難声明が出された。
イスラエル国内で、発信を停止しても、アルジャジーラは世界中に情報発信を続けている。世界中が、イスラエルのこの措置を見ることになる。逆に、国際社会からの新たな非難の対象にもなるかもしれないと懸念も感じられなくもない・・・。
なお、この法案については、45日後に期限切れとなり再審議が必要になるほか、本格的な法律になるには、まだ最高裁の判断も関わってくるとのこと。期限は7月31日である。