22日午後からファタハ(アッバス議長の党)の代表がガザのハマスを訪問していたが、23日、ファタハとハマスが、パレスチナ人の統一政府を立ち上げることで合意したと発表した。
合意内容は、①ハマス、イスラム聖戦とファタハは5週間以内に統一政府を立ち上げる。②ハマスとイスラム聖戦は*PLOの傘下に入る ③6ヶ月以内に議長選挙と総選挙を行う などとなっている。
*PLOは、アラファト議長が立ち上げたパレスチナ解放機構で、パレスチナ自治政府に母体。ファタハはPLOを運営する組織。
ハマスとファタハがこうした合意に至るのは今回が初めてではない。今回の合意内容には、これまでに合意したことを履行することも明記されている。
これを受けて、ネタニヤフ首相は、「アッバス議長は、イスラエルとの和平ではなく、ハマスとの和解を選んだ。」とコメント。イスラエルは23日夕刻に予定されていたパレスチナ側の代表団との交渉をキャンセルした。
イスラエル政府は24日、緊急の閣議を開いて、今後の対処を検討することになっている。
<最悪のタイミング!?>
イスラエルとパレスチナ自治政府の和平交渉は、期限直前になった現在、風前の灯となっている。交渉を継続するかどうかでもめている最中である。その時節に、アッバス議長は、イスラエルの存在を認めないハマスと手を組んだということである。
アッバス議長は、ハマスとの合意は、パレスチナ人が一致したというだけで、イスラエルとの交渉には何の影響もないといっている。
しかし、もしこの合意が本当に実施された場合、パレスチナ統一自治政府の議長や政府閣僚の中にハマスやイスラム聖戦が入る可能性を意味する。このような組織とイスラエルが交渉をするはずがない。
アメリカは、ハマスとファタハの合意について「和平交渉継続に大きな影響があることは避けられない。」として遺憾を表明した。
<イスラエルのガザ空爆>
アッバス議長がハマスとの合意に至る2日前に、ガザからイスラエル南部にロケット弾が7発撃ち込まれ、イスラエルが空爆をしたことはお伝えした通り。
その後、ちょうどハマスとファタハの合意が発表された直後、イスラエル空軍が、ロケット攻撃をしようとしていたとされるパレスチナ人をピンポイントで空から暗殺しようとして失敗。
ガザの病院によると、周囲にいた市民少なくとも12人が負傷した。イスラエルには厳しい視点を持つと言われるBBCは、ハマスとファタハの合意のニュースとともに、ガザの子供たちが負傷している写真を報道していた。
<今後どうなるのか:Yネットの分析>
ハマスとファタハの合意は今後、イスラエルにどのような影響があるのだろうか。
まだハマスとファタハが実際に合意事項を履行するかどうかもわからない現時点では、これがどうころがっていくのかはまだまだわからないというべきだろう。
しかし、今回のハマスとファタハの合意により、アメリカの仲介で進められてきた和平交渉が、さらに危機の深みに陥ったことは間違いない。しかし、まだ完全に頓挫したというわけでもない。
和平交渉は、「暴力を行使しない。イスラエルの存在を認める。」という原則の元で進められている。アメリカは、アッバス議長がハマスと一致するにしてもこの約束は守ってもらうと強調している。
つまり、もし仮にイスラエルとの和平交渉を継続するとアッバス議長が同意した場合、ハマス(ガザ地区)は、イスラエルへの攻撃を停止しなければならないということである。
では逆にもし仮に和平交渉が頓挫し、パレスチナ自治政府が、国連加盟へのアピールをしていく方向になったとしよう。国際的な地位を獲得するためには、いずれにしてもハマス(ガザ地区)はイスラエル攻撃を自粛しなければならなくなる。
また、和平交渉とは別に、今回の合意により、今後、ガザから飛んでくるロケット弾とアッバス議長は無関係ではないということになる。イスラエルは「パレスチナは平和を望んでいない。」と世界に訴えることが可能になる、とも言われる。イスラエルにとって好都合な点もあるということである。
しかし、まだこの合意が何を意味するのか、実際にガザ地区と西岸地区は一致するのか、まだまだ未知数である。今行われているイスラエルの緊急閣議でどんな結果が出てくるのか、注目される。