いつもと違う戦争中の第76独立記念日:テルアビブで人質覚える集会に市民10万人参加 2024.5.15

スクリーンショット

13日日没、戦没者記念日が終わると、そのまま独立記念日が始まる。今年は76回目である。今年は、ハマス、ヒズボラとの激しい戦闘が続き、南北国境地帯では、ロケット弾のサイレンが直前にも鳴るという中での独立記念日となった。

www.timesofisrael.com/israel-marks-subdued-76th-independence-day-with-hearts-full-of-sorrow-and-pain/

ヘルツェルの丘での国家式典は録画を放送:敵の前で死を受け入れないスピリットがユダヤ人の武器とネタニヤフ首相

今年は、エルサレムのヘルツェルの丘で行われる恒例の国家式典は、前もって撮影された録画が流される形となった。理由は、祝う時ではないと訴える市民たちからの反発や、戦没者記念式典において、ネタニヤフ首相が野次られ、式典を中断させられる懸念があったとTimes of Israelは伝えている。なお、録画による独立記念式典は、コロナ禍の時に続いて2回目である。

式典の冒頭に、大勢が暗闇でダンスをするシーンがあるが、まさにハマスに364人が殺された、キブツ・レイムの野外音楽フェスの現場で録画されたとのこと。その中には、ハマス襲撃当時、この場にいて、生き残った人も含まれていたという。

そこで、私たちは一つの体だが、その一部がいなくなったと、全員で痛みを共有する歌が歌われていた。ホロコーストの後のユダヤ人専門の難民キャンプで、ナチスも登場する演劇をしており、意図しなかったかもしれないが、それが前に向かう力になったと学んだ。

痛みから目を離さず直視する。この強さがユダヤ人だと感じさせられる。だからこそ強制的にでも、癒しへと踏み出せるのかもしれない。

*死ぬことを拒否するスピリット(詩篇118:17):ネタニヤフ首相

GPO

ネタニヤフ首相は、イスラエルが独立したとき、アラブ5カ国軍に攻め込まれたが、勝利したことを挙げ、「武器は不足し、勝てるみこみはなかったが、私たちには、隠された一つの武器があった。国を滅ぼしに来る敵たちを前に、死ぬことを拒否するというスピリットである。」と語った。

また、その背景として、詩篇118:17の「私は死ぬことなく、かえって生き、そして主のみわざを語り告げよう。」をあげて、このスピリットが敵を退かせ、イスラエルの存続を守ったと語った。

式典では、その年に、国に貢献したと評される人々によって、12本聖火に火がともされるが、今年は10月7日に関連する人々(治安部隊や救急隊員など)が点火した。12のうち一つはだれも点火する人がいない状態で点火され、殺された人や人質の人を表すとされた。

10月7日に大きな犠牲を払うことになった地域、クファルアザ、スデロット、ナハルオズなどでも、聖火が灯されとのこと。今年は各地での花火は中止。通常ならエルサレムでも市内は大騒ぎになるが、その様子はなかったようである。

www.timesofisrael.com/with-subdued-state-ceremony-israel-begins-marking-a-somber-76th-independence-day/

テルアビブで人質覚える集会に市民10万人参加:苦しみの後には希望があるとの確信

同じ頃、テルアビブでは、毎週安息日明けに夜に政府に対するデモを継続してきた人質家族フォーラムが、政府に対し、ハマスとの交渉を継続してすぐにでも人質を奪回するよう訴える集会を行った。参加者は10万人ともみられている。この日は暴動ではなく、静かに将来への希望を確信するときになった。

10月7日に弟二人(一人はイスラエル軍の誤射で死亡)を失ったシャロン・シャラビーさんは、「今日、私たちは独立を感じない。しかし、隣に座っている人を見て、お互い敬意を払っている」と語り、今もなお人質になっている人々が殴られたり空腹でないようにと毎日思っていると語った。

遺体処理を担っているZAKA代表のラビ・ツヴィ・ハシドさんは、ホロコーストの後でイスラエルが建国したことを挙げ、「今は泣き悲しむ時だが、それでも希望はある。ユダヤ人は、成長して栄光を完成することになる」と語った。

ラビ・タミール・グラノットは、「すべてが順調な時は希望が必要だとは思わない。しかし、痛みがあり、怒りがあり、心が張り裂けそうなとき、子供たちが残虐な敵の手にあるとき、私たちには希望というものが必要になる。」と語った。

野党議員ウラジミール・ベリアック氏は、この集会に様子について、イスラエルの人々が、シオニズムとその代価を共有していたとXにアップしている。」

大統領官邸イベント・ネタニヤフ首相負傷兵訪問・イスラエル軍のパフォーマンス

14日は、大統領官邸では、今年も特に貢献したイスラエル軍兵士120人が招かれた。ヘルツォグ大統領は、「今年はいつもと違う独立杵火となった。私たちは、祖国の独立とその奇跡を誇りに思っている。しかし、同時に心は悲しみと痛みでいっぱいだ。」と語った。

その上で120人の兵士たちに向かい、あなた方は私たちの慰めだ。あなた方の勇気、決断、同志たち、祖国への愛が、私たちの力である。国全体があなたがたに敬礼する」と語った。

www.timesofisrael.com/in-tel-avivs-hostages-square-tens-of-thousands-mark-independence-day-with-hope-for-freedom/

ネタニヤフ首相は、この大統領官邸でのイベントでは、毎年出席するネタニヤフ首相は欠席。その代わりに、戦闘で負傷した兵士が入院しているシェバ医療センターを訪問して、兵士たちを励ました。

テルアビブのビーチでは、厳しい中でも、恒例のバーベキューをする人々の様子が伝えられている。また、エルサレム、続いてテルアビブのビーチ上空では、今年もイスラエル空軍機(戦闘機と戦闘ヘリコプター)によるパフォーマンス飛行が行われた。

www.israelnationalnews.com/news/389867

国際聖書クイズ大会:13カ国からユダヤ人の若者が参加

独立記念日には、毎年エルサレムシアターで、国際聖書クイズ大会が開催され、世界中のユダヤ人が毎年、聖書の知識を競う。ユダヤ人の一致が目的である。

世界中のユダヤ人の主にユース世代が、大変な予選を通り越して、この日の決勝戦に挑む。優勝は、エルサレム在住の高校生、アヴィやタル・バル・ギルさん(17)と、ペタフ・ティクバ在住で、アミット・クファル・ガニム・イシバに通う、ダビッド・シャシャさん(17)の2人だった。

毎年、首相が、優勝者を表彰するのだが、今年、ネタニヤフ首相は、大統領官邸イベントと同様、欠席していた。

www.ynetnews.com/article/hjhts6eq0

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。