ガザからロケット弾スデロット民家直撃:ハマスかイスラム聖戦か 2019.11.8

早くも1週間前になるが、1日金曜、安息日入りの夜9時、ガザからロケット弾が7発、イスラエル南部スデロットへ撃ち込まれた。これについては、全部、迎撃ミサイルが撃墜した。

しかしその45分後、再度、ガザからロケット弾が3発撃ち込まれ、1発が、民家を直撃。住民は、先のサイレンでシェルターに入っていたため無事だった。しかし、パニックになって逃げ惑う住民のなかで、1人(65)が転倒して軽傷。複数の人が軽いショックに陥った。

直撃を受けた家は、部屋が破損した他、壁が穴だらけ。近くに駐車中の車も破片で穴だらけになっていた。付近に住民が歩いていたら大惨事になるところであった。

イスラエル軍は、国境の戦車隊がただちに反撃の砲撃を行った他、空軍が、ガザ全域のハマス関連地点への空爆を行った。今回は、ハマスの地下施設への攻撃も実施した。ハマスによると、この攻撃で、パレスチナ人、アフマド・アル・シェリ(27)が死亡。2人が負傷した。

www.timesofisrael.com/idf-strikes-gaza-terror-targets-in-response-to-rocket-barrages-on-south/

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5617613,00.html

<前日金曜ガザでパレスチナ人60人以上負傷>

上記攻撃の前、毎週金曜に行われているガザ国境でのデモに、約5000人が参加。国境全域にわたって、イスラエル軍に対し、手榴弾や自家製武器などの実質的な武器で攻撃を行った。

イスラエル軍は、戦車隊が砲撃を開始。空軍も出動して、ハマス拠点2カ所への空爆を行った。一連の戦闘で、パレスチナ人60人(メディアによっては80人)が負傷した。ガザ国境は毎週金曜、実質、戦場のようになってきているようである。

www.timesofisrael.com/thousands-of-gazans-take-part-in-weekly-border-protests-rioters-attack-troops/

<”永遠”に緊張するガザ情勢>

ガザでは、このところ、特に緊張が高まりつつある。先週火曜、木曜と、南部地域に、間違いのサイレンが発せられた。そのたびに南部住民たちは、シェルターへ駆け込んでいる。今後も続く可能性がある攻撃に備え、イスラエル軍は、迎撃ミサイルシステム・アイアンドームの配置を変える措置をとった。

また先週土曜、ガザから風船で飛ばされて来たとみられる本に爆発物が装着されたものも発見された。いつのものかは不明だが、本となると目がないユダヤ人を知っての悪質な行為である。

イスラエルは、週末のロケット弾攻撃を受けて、一応の空爆を行ったが、事態をエスカレートさせたくない今回もそれ以上の動きにはでていない。これについて、実際に被害を受けているスデロット市長などは、ガザへの総攻撃を行うべきだと訴えている。

ネタニヤフ首相は日曜午後、治安閣議を行ったが、その後大きな動きには出ていない。正式な政府がないので大きな決断ができないということもあるが、ガザとの大きな衝突が今のイスラエルにとって益にはならないという状況は今も変わりないからである。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/270969

<イスラエルのジレンマ:ガザで頭角?バハ・アブ・アル・アタ(イスラム聖戦)>

ガザへの対処が難しいことについて、Yネットの軍事評論家ロン・ベン・イシャイ氏は、ガザにハマスとともに、ハマスとは異なる意見を持つイスラム聖戦の存在を上げる。

ハマスは、イスラエルとの衝突を望んでいないようではあるが、イスラム聖戦はそうではない。昨今のイスラエルへの攻撃はイスラム聖戦によるものが多い。今回のイスラエル南部への攻撃も、イスラム聖戦とみられている。

イスラム聖戦は、ハマスのように市民のことを考える必要がない。またイランの支援で、これまでによりも格段に優れた長距離ミサイルを所有しており、非常に危険な存在になっている。そのイスラム聖戦の指導者として注目されているのが、バハ・アブル・アル・アタである。

www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Who-is-Abu-al-Ata-The-man-suspectedly-responsible-for-Gaza-escalation-606639

イスラエルは、今後、ハマスを基準に対応を考えるべきか、イスラム聖戦を基準に考えるべきか、非常に難しい決断に迫られていることになる。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5618195,00.html

<反ハマスデモ?>

こうした中、小さいデモであったと思われるが、ガザで反ハマスデモがあった。ハマスの治安部隊が、カンユニス難民キャンプのアナン・アブ・ジャマルさん(28)の家にやってきて、アナンさんを家の2階から放り投げたという。アナンさんはのちに病院で死亡した。

これを受けて、市民たちが、「ハマスは人殺しだ」と叫ぶデモを行ったのであるが、その中で、「シーア派、シーア派」との叫びもあがっていた。ハマスがスンニ派であるのに対し、イスラム聖戦は、シーア派イランの支援を受けている。

今、ガザとパレスチナ自治政府は今、長年行われていなかった選挙を行おうとしているとの記事が出回り始めている。選挙になれば、今のアッバス議長が消えて、ハマスか、イスラム聖戦か、何者が出てくるかもわからない。

イスラエルは、パレスチナ人たちの動きに注目している。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5620388,00.html

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。