ガザから500初近いロケット弾が撃ち込まれるという軍事衝突から1週間になる。この衝突で、イスラエルでは死者1人(パレスチナ人)、負傷者27人。ガザでは、アラブ系メディアによると6人が死亡。双方の建物に甚大な被害を残した。
今回こそは、イスラエルが、大規模にガザを一掃するのではないかと緊張が高まったが、結局エジプトと国連の仲介で、今回も停戦ということになった。もし、イスラエル側の死者がパレスチナ人でなく、ユダヤ人であれば、話は違っていたかもしれない。
ともかくも、イスラエル南部は、家を失った人々は別として、平穏な1週間であった。しかし、イスラエル政府は、一時、解散総選挙になるとの騒ぎで、激震が走った1週間であった。
<リーバーマン国防相辞任で政府崩壊の危機>
ガザとの停戦直後、リーバーマン国防相が、今回もガザを一掃せず、ハマスとの停戦を決めた政府は、「短期的な平穏を得るために長期的な平穏を犠牲にした。テロ組織に屈服した。」と非難。もはや、この政権とともには歩めないとして、国防相を辞任し、連立政権からも離脱すると表明した。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5401885,00.html
リーバーマン氏が導くイスラエル我が家党が離脱すると、与党と野党の議席の差はわずか2席となり、政権はあまりにも不安定になる。与野党双方から、総選挙するべきとの声が高まった。
ネタニヤフ首相は、「今は、左派政権が台頭するかもしれない機会を与える時ではない。今の右派政権を維持すべきだ。」と訴え、総選挙は避けるべきだと訴えた。
すると、ナフタリ・ベネット教育相が、欠員となった国防相のポストを要求すると表明。もしそれが叶わない場合、ユダヤの家党(ベネット氏が党首)も政権から離脱すると表明した。ユダヤの家党が離脱すれば、必然的に総選挙になる。
しかし、ネタニヤフ首相とベネット氏は不仲で知られる上、世論は、ベネット氏が防衛相にふさわしいとは思っていない。ネタニヤフ首相は連立政権内の各政党党首と、政権を離れないよう交渉を始めた。ユダヤの家党は最後に交渉が予定されていた。
この間、これに追い打ちをかけるように、ユダヤの家党に所属するシャキード法務相が、ベネット氏が防衛相にならない場合は、自分も辞任すると発表した。これはいわば、ネタニヤフ首相への最後通告である。この時点で、ネタニヤフ首相には、ベネット氏を国防相にするか、自ら国防相を兼任するか、選択肢は2つしかなかった。
結果、ネタニヤフ首相は、自らが国防相を兼任すると発表。「今は戦争の最中である。政府を潰すべき時ではない。」と閣僚らに協力を求めた。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/254906
この時、元イスラエル軍参謀総長で、近い将来政治に参入するとみられているベニー・ガンツ氏が、ネタニヤフ首相を応援し、「防衛問題に政治が入り込むべきではない。」とのコメントを発表した。
www.timesofisrael.com/ex-idf-chief-backs-netanyahu-refusal-to-dissolve-government-over-security/
イスラエルのメディアは、すでに総選挙がいつになるかと予測する報道がはじまったが、予想外にも、ベネット教育相とシャキード法務相が、「ネタニヤフ首相がその覚悟なら、そうしてもらいたい。」と、政権に残留すると発表した。
結局のところ、ベネット氏は、ネタニヤフ首相に頭が上がらないのだと皮肉に報じるメディアもあったが、国のために、ベネット氏が、自らの力不足を認めたのかもしれない。ベネット氏が、降参したことで、ネタニヤフ首相は、総選挙の危機を一応乗り越えたのであった。
しかし、これで、ネタニヤフ首相が、国防相をも兼任することになった。ネタニヤフ首相は、すでに外務相、保健相も兼任しているので、首相とともに3閣僚を兼任することには無理がある。やはり国防相は、だれかを指名するべきだとの声は続いている。
チャンネル2の調べによると、イスラエルをとりまく治安状況は、これまでになく困難なものになりつつあることから、次期国防相には、元イスラエル軍参謀総長であるベニー・ガンツ氏を望む声が最も大きいとの結果になっている。
<デリ内務相汚職疑惑再び>
なかなかあやうい現ネタニヤフ政権だが、汚職問題も後を絶たない。ネタニヤフ首相自身とサラ夫人も、汚職問題で尋問を受けている身である。
さらに、正統派ユダヤ教政党シャスの党首で、内務相でもあるアリエ・デリ氏が、脱税で逮捕にすべきとの訴えが、イスラエル警察と税務局から出された。近く逮捕になる可能性がある。そうなると当然内務相の席も空席になる。これはネタニヤフ政権にとってもう一つの打撃になる。
デリ氏の汚職問題は、これが初めてではない。2000年に、内務相を務めている時に15万5000ドル(約2000万円)もの賄賂を取ったことが明るみに出て逮捕された前科がある。
この時、デリ氏は、22ヶ月間実質服役し、2002年に出所。2011年に政界へ復帰して、2013年に議員に返り咲いた。その後、2015年からは、シャス党が連立入りしたことで、党首であったデリ氏が、よりにもよって経財相のポジションを獲得。2016年からは、逮捕される直前と同じ内務相に復帰したのであった。
そのデリ氏がまた汚職で逮捕さわぎなのである。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5409992,00.html
今にも倒れそうなネタニヤフ政権だが、今、与野党に、ネタニヤフ首相に代わってイスラエルを導く強い指導者はみあたらない。日本でも安倍首相に変われる人材がないと指摘されているのと同様に、結局、ネタニヤフ首相が政権にとどまるとみられている。
<イスラエル軍参謀総長も交代>
国防相が辞任する騒ぎとなっているイスラエルだが、イスラエル軍でも、現在のガビ・エイセンコット参謀総長が、4年の任期満了を迎えるにあたり、2019年から新しい参謀総長に交代する。
次期参謀総長(第22代目)に内定しているのは、エイセンコット参謀総長の元で服参謀総長であったアビブ・コハビ陸将(54)。
レバノン連絡将校、空挺部隊司令官、第二インティファーダ時代の西岸地区対テロ部隊司令官、ガザ担当司令官など、非常に豊富な経験を持つ。高いモラルも評価されたとのこと。ネタニヤフ首相にもすでに会っているが、来週、正式に内閣での承認になる見通しである。
<イスラエル警察庁長官も交代>
イスラエルでは、警察庁長官も交代になる。モシェ・エドリ氏(51)。交通担当の他、エルサレムを担当した経験もある。今後、テロを含む国内の治安維持担当する。
新しい国防、警察など治安人事を覚えてとりなしを!