マスク、ワクチン、検査とクラスター対策で封鎖措置は不要:コロナ閣議判断 2021.6.28

閣議中のベネット首相Koby Gideon (GPO)

感染拡大?マスク義務再開もパニックになる必要なしと指示

イスラエルでは、先週からデルタ株による新型コロナの感染が再び、拡大。1日感染者が、200人以上に急増したため、25日金曜から屋内のマスク着用義務を再開させた。しかし、今のところ、パニックになる必要はないとも伝えた。

また、感染が拡大していのは、ベニヤミナ、ヘルツエリアと、まだ限局していたことから、25日のテルアビブでのゲイ・プライド・パレードは、予定通り開催された。

屋外イベントだが、昨年はコロナでキャンセルになったせいか、今年は、10万人以上が、超密集状態で参加していた。

マスク着用義務再開はこの直前であったためか、ほとんどの人は、マスクをしていない。

27日コロナ閣議:封鎖はしないが感染予防とワクチンの徹底を指示

翌26日(土)の新規感染者は、97人と減ったが、37地域に広がっていた。現在、感染信号システムで黄色となり、地域から出ることを禁じられているのは、赤に指定されたベニヤミナ(感染者152人)、オレンジとされているモデイーン。黄色は、ヘルツエリア、クファル・サバ、西岸地区入植地のツフィームとなっている。

また、ベングリオン空港で帰国者から感染が発覚した人は、18人だった。

安息日明けて27日(日)、ベネット首相は、コロナ閣議を招集し、対策を協議した。結果、デルタ株に対するワクチンの効果が98%とされることや、新たにコロナで入院した人が、47人から44人(有症者は1186人)に、重傷者も26人から23人に減っていたことから、社会生活に大きな影響を及ぼす国レベルの封鎖措置は、行わないことで合意した。

ベネット首相は、ワクチンが今後も変化を続けるコロナに完全に効果があるとは限らず、状況が激変する可能性もあるとの認識を共有している。その上で、できる限りの対策を講じながら、社会活動を維持させていく、いわゆる共存を目指すとの方針を閣議で共有した。

www.timesofisrael.com/at-end-of-first-meeting-coronavirus-cabinet-decides-against-new-restrictions/

現時点で明らかにされた主な対策は以下の通り。

1)ベングリオン空港での水際対策強化

主なウイルスの侵入口とみられるベングリオン空港では、専門の担当官として、検疫ポリシーを強化する。任命されたのは、過去に超正統派地域の感染対策を担当したロニー・ムーア氏。

これは、コロナ閣議の前に行われた通常の閣議で決まったことだが、コロナ感染が拡大していると指定され、渡航が禁じられている国々に、渡航して帰国した者には、2週間の隔離とともに、罰金5000シェケル(約15万円)が課される。対象国は、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカ、インド、メキシコ、ロシア。

また渡航を控えるよう警告する国は、はあらたに2カ国増えて以下の14カ国:ベラルーシ、キルギスタン、ウガンダ、ウルグアイ、UAE、シーシェル、エチオピア、ボリビア、ナミビア、パラグアイ、チリ、コロンビア、コスタリカ、チュニジア

空港では救急隊による検査場を再開させ、陽性者が出た場合、すべてゲノム解析を行って、変異株に対処する。

帰国したイスラエル人には、全員、隔離期間中の位置情報発信のブレスレット着用と、3回目検査を義務付け、違反者への罰金強化を行うことも検討する。

なお、新政府発足で、保健相が交代したことを受けて、コロナ総責任者も、今のチェジー・レビ氏が退陣し、新たな人物が任命されるとのこと。

2)国内感染拡大対策:マスク着用・検査数拡充

国内では、屋内マスクの着用義務(罰金あり)を再開させた。これについては、市民の多くは、すでに屋内だけでなく屋内でも、自主的にマスク着用を開始している。また、検査体制強化とクラスター対策を行う。

3)ワクチン接種推進強化

イスラエルでワクチン接種を受けている人は、2回完了者は515万人(1回554万人)で、感染者は84万人で、抗体を持つと考えられる人は、60%近くいると考えられる。

しかし、イスラエルにもワクチン拒否者は、少なからずいるので、接種者人数は頭打ちとなっていた。

今感染した人の中には、ワクチン接種を完了したもいるが、やはりワクチンをしていない人が主流だという。ベネット首相は、「ワクチンに効果があることは明らかだ」として、まだ接種を受けていない人々には、Must(しなければならない)という強い言葉を用いて、接種を要請した。

特に、若者たちに対しては、「コロナが終わったわけではない。いつ新たな変異株が現れて、どんでんがえしになるかわからない。」と釘を指し、夏に向けて、再び外出制限や、パーティが禁止になるのを避けたいなら、ワクチンを受けるようにと呼びかけた。

12-15歳の子供たちについては、すでに30%が接種を受けたか、予約を完了している。まもなく50%になる見通しとのこと。

ベネット首相は、ティーンエイジャーたちにも「夏が来て外出が規制されたらつらいだろうから、そうならないように、がんばってほしい」とよびかけた。

ベネット首相によると、1日の接種数は、3000件まで下がっていたが、先週1万件にまで回復。さらに3万件にするよう指示している。

www.timesofisrael.com/cases-rise-but-hospitalizations-remain-low-as-coronavirus-cabinet-set-to-meet/

この他、ワクチン接種を表明するグリーンパス制度の復活も検討されている。

石のひとりごと

東京では、そろそろオリンピック関係者が入国しているが、これほどにワクチン接種が終わっているイスラエルでさえ、入国が禁止となっている国々からも、選手団や関係者が山のように入ってくる。

しかも、入国者の数が多すぎて、空港での水際対策はまさにザル状態にならざるをえないだろう。

日本でも、せめて、成田空港、関西空港に、それぞれ政府が任命する専門の担当官を指名し、責任もった水際対策を講じてもいいのではないかと思う。

蓋をあけてみないとわからないのではあるが、イスラエルの対策を見ていると、どうにも不確かな感じがしてしまうところである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。