7年続いたシリアの内戦は、ロシアの介入でアサド政権が、反政府勢力をほぼ制圧した形になった。シリア南部、イスラエルとヨルダンに接する地域からは、反政府勢力とISも掃討され、今はアサド政権の支配域になっている。(添付した地図参照)
こうした中、現在、反政府勢力の最後の砦として残されているのが、シリア北部、トルコとの国境近くにあるイドリブ地方である。この地域はいまや、トルコ、シリア、ロシアに睨まれる形で包囲されている。この地域にいるのは、全国の反政府勢力関係の市民たち300万人である。
シリアのアサド政権は、今、ロシア、イランとともにこの地域に攻め込み、反政府勢力を一掃する準備を始めている。これに対抗するのが、トルコという図式である。このままでいけば、シリアとロシア、イランが攻め込み、イドリブ地方は血の海になると懸念されている。
<7日:テヘラン・サミット決裂:ロシア、イラン、トルコ>
イドリブ地方に攻めこもうとするシリアに協力するロシア、イランに対するのは、反政府勢力の背後に立つトルコである。トルコは、「イドリブ地方で戦争になれば、犠牲になるのは、そこにいる市民たちであり、トルコに難民が押し寄せる。」として、大戦争を回避するべく、ロシアとイランに停戦を申し出た。しかし、ロシアはこれを拒絶した。
ロシアは、イドリブ地方に逃げ込んだ反政府勢力(少なくとも3万人)は、今一掃すべきだと考えている。しかし、同時に、「これら”テロリスト(シリア側主張)”が、市民を盾にするので、戦闘になれば、市民に大きな犠牲が出る。」ということも理解している。
反政府勢力の最後の砦であるイドリブ地方をどうするかは、今後のシリアの再建にだれがどのように関わってくるのかにも関係してくるため、9月7日、ロシア、イラン、トルコの3首脳は、テヘランでこの件に関するサミットを開催した。
しかし、3国それぞれが、それぞれの国益があるため、一致した合意には至らなかった。このままでは、イドリブ地方の大戦争は避けられない状態となった。
この間、イドリブ地方では、アサド政権とロシアに反発する反政府勢力の群衆が、集まってシリアの旗やトルコの旗をふる様子が伝えられた。
www.timesofisrael.com/rouhani-israel-us-will-not-achieve-their-objectives-through-rebels-in-syria/
大きな戦闘になり、難民が押し寄せることに備え、イドリブ地方の国境に、戦車部隊などを配備している。
<17日:ソチ首脳会談:ロシア、トルコ>
大戦争を避けるため、ロシアとトルコは再度、国会に面するソチで首脳会談を行った。これはいわば、シリア政府側支援者と、反政府勢力側支援者の会談である。両者は、イドリブ地方周囲15-30キロを非武装地帯とすることで合意した。これが実施されるのは、10月15日と定められた。
これに伴い、武装勢力は、重火器とともに、イドリブ地方から撤退することとされている。イランはロシアとトルコが、イドリブ地方の大戦争を回避したとして、この合意を賞賛している。
www.timesofisrael.com/iran-hails-russia-turkey-agreement-to-avoid-idlib-onslaught/
<これからどうなるのか>
シリアの内戦が終焉に向かっているが、シリア国民の大半は、国を破壊したアサド大統領を指導者とは認めていない。かりにアサド政権がシリアを再び氏はうするようになっても、平和になるとは考え難い。
イスラエルが注目するのは、シリアの内戦によって、あきらかにイランがその存在感を定着させたことである。イドリブでもイランは、大きな役割を担おうと狙っているようである。イスラエルは、ロシアに、シリア領内からイランを完全撤退させることを要請しているが、ロシアはそれは難しいと言っている通りである。
そのイランは、シリアに駐留する2000人のアメリカ軍を撤退させるべきだと主張している。シリアの内戦はまだまだ火種をのこしたままということである。