イスラエルとアメリカは、今のイラン政権が倒れ、近代的な民主国家に生まれ変わることを望んでいる。イスラエルのネタニヤフ首相は、水技術を提供するとして、イラン人自身が現政権を打倒するよう呼びかけたりしている。
しかし、実際には、今のイラン政権の後には、同じく冷酷なイスラム主義軍で知られるイラン革命軍(カリスマ性を持つと言われるカッサム・スレイマニ将軍)が政権を取るのではないかとの予測が出てきている。
エジプトでは、エジプト軍の長であったシシ将軍が、クーデターの後、大統領になり、イスラエルとの関係が改善したという例もあるが、イラン革命軍は残酷で知られるため、イランが今後どうなっていくかは、まったく不透明である。
<窮地の現イスラム政権>
イランの現政権は、シリア内戦に介入しため、非常に多くの軍事費を費やすことになり、イラン経済に大きな打撃となった。これにより、国内外の投資家がイランからいっせいに手を引いたため、2017年だけで、300億ドル(石油輸出の75%)を失うこととなった。
これを受けて昨年12月から、労働階級の市民200万人が、全国各地で、シリア内戦への介入へ反対を訴える反体制デモを展開。
市民は、いつもの「イスラエルに死を」ではなく、「ハメネイに死を」「バシル(イラン革命軍の部隊の一つ)に死を」と叫んだ。現政権は、これを、イラン革命軍を使って、暴力的に10日間で鎮圧した。
しかし、この次に女性がヒジャブの着用強制に反対する平和的なデモを展開。同時に様々な職業の労働者がストをおこした。この時も革命軍が対処している。
こうした中、5月、トランプ大統領が、イランとの核合意からの離脱と経済制裁の再会を宣言。イランの経済はさらに悪化した。これに追い打ちをかけるように、アメリカが、日本はじめ各国にイランからの石油輸入を、11月までに全面停止するように求めている。
イラン通貨が大きく下落した(1ドル=42000リアルが90000リアル)24日の翌25日、イランでは再び市民によるデモが、首都テヘランで行われた。
edition.cnn.com/2018/06/27/middleeast/iran-protests-analysis-intl/index.html
では、デモを行っている市民たちが、現政権の後に、何を望んでいるのだろうか。
エルサレムポストが、イランの野党系メディア(視聴者150万人)が、行った調査として伝えたところによると、次期政権にだれを望むかについて、59%は、イスラム革命で追放されたシャー・パーレビ国王の息子をあげ、イスラム政権になってからのハタミ大統領と答えた人は2%に過ぎなかった。
イラン国民は、イスラム革命以後も、国王の時代(アメリカより)の方がよかったと思っていると言えそうである。
<台頭する革命軍>
現政権は、革命軍がデモを鎮圧するたびに、様々な特権を与えた。このため、革命軍、特にその指導者のスレイマニ将軍が、政治的にも力を持つようになっているという。
イラン革命軍は、1979年のイスラム革命の時に設立された、イスラム主義軍で、通常のイラン軍の3倍の予算を使う、いわば政権を擁護するエリート軍である。
これに対抗するのが、イスラム社会主義をかかげるMEK(イスラム人民戦線機構)だが、MEKは、国王が治める王政には反対しているため、今のデモに参加する人々に受け入れられることはない。
また、デモ隊が主張するのは、現政権が、ヒズボラの他、ハマスなどパレスチナ勢力に予算を回していることなのだが、MEKは基本的にパレスチナ組織を支持する方針をとっている。
したがって、デモを行っている市民には、現政権に対する対抗馬がいないということである。
今の危機に対し、たとえ政権交代が避けられなかったとしても、現政権は、無難に、革命軍のスレイマニ将軍に政権を譲りわたして生き延びる道を選ぶ可能性が高い。
イスラエルとアメリカは、イランの現政権が交代することを望んでいるのだが、それが良い結果をもたらすかどうかは、どちらかといえば、悲観的という見方もあるということである。
www.jpost.com/Middle-East/ANALYSIS-How-Irans-Revolutionary-Guard-justifies-the-crackdown-560938