エジプトで、ISISとみられる大きなテロが発生したが、シリアでは、ISISの勢力が小さくなってきた後へ、予想通り、イランが定着し始めている。これにともない、中東では、サウジアラビア率いるスンニ派と、イラン率いるシーア派の対立が徐々に明確になってきている。
<スンニ派勢力:カイロで緊急アラブ同盟会議:反イラン声明>
11月初頭、中東では、内戦中のイエメンから発射された、イランのものと思われるミサイルがサウジアラビアで迎撃され、続いて、レバノンのハリリ首相が、突然、サウジアラビアに来て、レバノンがヒズボラとイランに支配されていると証言し、辞任表明するなど、国際的な事件が相次いだ。
こうした状況を受け、19日日曜、サウジアラビアの呼びかけで、緊急アラブ同盟(21カ国)が、エジプトのカイロで開かれた。会議には、レバノン代表も含まれたが、シリアは加盟資格停止中、イランは初めから加入していない。アラブ同盟は、スンニ派の集まりである。
加盟国中、バハレーンは、少数派のスンニ派が多数派のシーア派を治めているため、シーア派イランの進出はとりわけ深刻な問題である。会議では、サウジアラビア以上にイランを非難する発言をしたもようである。
一方、開催国エジプトは、急進的な対策には同調しない傾向にある。
最終的に、アラブ同盟は、「イランは、ヒズボラやフーシ派(イエメン)などテロ組織を支援して、地域を不安定にしている。」と厳しく非難する声明を出した。しかし、同時にイランと戦争をするつもりはないとし、まずは国連に報告するところから始めるとして、実質的な対策はなにも発表されなかった。
www.timesofisrael.com/arab-league-delivers-harsh-criticism-of-iran-and-hezbollah-but-little-action/
<シーア派勢力:イラン・レバノンの反応>
アラブ連盟の声明に対し、イランは、サウジアラビアの虚偽、プロパガンダだとして、拒絶すると表明した。レバノンのアウン大統領は、レバノンの政党であり、最大の防衛になっているヒズボラをテロ組織と非難されたことに反発を表明した。
アウン大統領は、レバノンは長年、イスラエルの”挑発”に直面しているが、そのイスラエルを2000年に南レバノンから撤退させたのはヒズボラだとして、レバノンにとってヒズボラは国の防衛力だと語った。アウン大統領は、シーア派ではなく、クリスチャンだが、ヒズボラ・イランよりの立場をとっている。
ところで、サウジアラビアで、辞任表明をしたハリリ首相(スンニ派)だが、22日、レバノンに帰国し、辞職は延期と発表した。しかし、レバノンがヒズボラとイランに支配されていることに変わりはなく、ハリリ首相の立場は非常に難しい。
もしハリリ首相の身に何かあった場合は、サウジアラビアとの衝突になりかねないと思われる。*ハリリ首相の父ラフィーク・ハリリ首相は、2005年、親シリア派(ヒズボラの可能性大)に暗殺されている。