ハマスが支配するガザ地区(人口200万人)は、常に「人間が住みえない地になりつつある」と言われながらも、いまだにそのまま続いているという悲惨が続く。
特に問題は電力。ガザ地区への電力の最大供給国はイスラエルで、その支払いは、ハマスのライバルであるパレスチナ自治政府が担っていた。これで1日8時間の電力供給をなんとか保っていたところである。
ところが、2日、パレスチナ自治政府のアッバス議長が、ガザ地区への電気代を差し止めると言ってきた。もしガザ地区の電気代が支払われず、イスラエルが電気を止めた場合、ガザ地区には1日1時間程度の電気しかなくなるという。
これに限らず、アッバス議長は最近、ガザ地区に対して、ハマスつぶしとも思えるような経済的圧力を行っている。
このままガザのハマスが崩壊することはイスラエルにとっても益になる部分はある。しかし、同時にガザ住民の人間生活を崩壊させることを意味しており、イスラエルにとっては人道上からも放置することは難しい。
また、もはや今以上に落ちるところのなくなったハマスが、逆ギレしてイスラエルに大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性も大いにありうる。アッバス議長から決断のボールを投げられたイスラエルは困った事態になった。
今のところ、以後のニュースがないところをみると、イスラエルはとりあえずはまだガザ地区に電力を供給していると思われる。エルサレムポストによると、カタールが、1200万ドルを緊急支援したとの情報もあるが、今後が注目されるところである。
<ハマス新憲章>
こんな情けない事態に陥っているハマスだが、2日、団体の新憲章、つまりはハマスの存在理由の基本姿勢なるものを、世界にむけて発表した。発表は、カタールのドーハで、海外流浪中のハマス政治部門指導者カリッド・マシャアルによって行われた。
それによると、広くアラブ世界を視野に入れているムスリム同胞団の一部としてのこれまでの立場を削除し、イスラム国家主義運動 (Islamic National Movement) としての立場を重視する形になっている。
その中で、団体の存在目的を「イスラエルを滅亡させること」ではなく、「歴史的パレスチナ人の土地を解放する」という言葉遣いに変えている。多少言葉遣いは緩和したかのようではあるが、イスラエルを滅亡させるという最終目標に変わりはない。
ハマスが今、この時点でこうした憲章文の変更を打ち出してきた背景には、アッバス議長のハマス潰しともいえる最近の厳しい対ハマス政策の中で、国際社会のハマスへの印象を変えようという点が考えられる。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4956334,00.html
<3日:アッバス・トランプ会談予定>
トランプ大統領は、就任当時から、パレスチナ問題への解決に意欲を語っている。その一環で、明日3日、アッバス議長が、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談することになっている。
これに先立ち、アッバス議長は、自分こそパレスチナ市民の代表であることを強調付けるためか、ハマスに対する経済的困窮を誘発させるなどハマスに非常に厳しい政策をとり続けていたのである。
またアッバス議長は、ヨルダンのアブドラ国王、エジプトのシシ大統領とも会談を済ませており、イスラエルが1967年のラインまで撤退するしか解決はないとの合意をもってトランプ大統領に会うものとみられる。
対するトランプ大統領は、「両者(イスラエルとパレスチナ)が合意するなら、アメリカとしては二国家分割案でも1国家案でもどちらでもよい。」との立場を表明している。これは二国家案に固執したオバマ前政権とは違う立場である。
トランプ大統領は、エルサレム統一50周年記念日の5月24日の直前、22、23日とエルサレムを訪問する予定との情報がある。
その際に、トランプ大統領が、独自の中東和平案を明らかにするか、公約のアメリカ大使館のエルサレムへの移行を発表するのではないかとの憶測も飛び交っている。
www.timesofisrael.com/israel-us-eyeing-trump-visit-on-may-22-23/