イスラエルでは、11日日没(日本時間12日朝)より、12,13日とプリムの祭りとなる。
プリムとは、聖書のエステル記を記念する例祭。イスラエルがまだ捕囚から戻る前のペルシャで、イスラエル民族をの絶滅させようとしたハマンの企みを阻止した、ユダヤ人の王妃エステルを記念する。
聖書のエステル記に「神」は、直接登場しないのだが、例祭では、エステルを用いてイスラエルを絶滅から救われた神を覚え、その神は今もイスラエルを守っておられることを覚える例祭である。
11日夜と12日朝(エルサレムでは12日夜と13日朝)、ユダヤ教シナゴーグでは、「メギラ」とよばれるエステル記の巻物がそのまま読み上げられる。人々は、イスラエルの敵ハマンの名が出るたびに騒音をたててブーイングを飛ばすという楽しい行事である。
イスラエルでは、メギラの読み上げは、シナゴーグだけでなく、世俗派でシナゴーグに行かない人も楽しみながらユダヤ教に立ち返ることができるよう、公の場でも行われる。アルーツ7によると、今年はシナゴーグ外でも、全国400箇所で、メギラの読み上げが行われる。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/226439
プリムにおける習慣は、聖書に指示されている通り、贈り物をしあうこと。甘いクッキーや甘いワインなどが多い。また、後の世にできた習慣だが、仮装して通りに出て楽しむのもプリムの風物詩。
エルサレムやテルアビブ、ベエルシェバなど大きな町では、町をあげてのイベントが行われる。各地域の公民館でもイベントが行われる。エルサレムでは、イスラエル博物館はじめ、様々な博物館も、3月いっぱい、イベントを企画する。
実際のプリムは、3月11日、12日だが、今年は週末と重なるため、プリムのパーティやイベントは、9日からすでに始まっている。主要都市での予定は以下の通り。(一部)
3月9日(木) テルアビブ:ストリート・パーティ
3月10日(金) テルアビブ:ストリート・パーティ、エルサレム市役所前広場仮装イベント 11:00-15:00
3月11日(土) テルアビブ:ゾンビウオーク(ゾンビに化けて町を練り歩く)パーティ 21:30~
3月12日(日) テルアビブ:ファット・ボーイコンサート
3月25日(土) エルサレム・ナハラオット・パレード
以前、テロが頻発した時に、皆が仮装している中では、テロリストが見分けられないとして、一度だけ、政府から仮装禁止の指示がでたことがあったが、今は、そのようなテロに屈するかのようなことはしなくなった。
しかし、テロの危険がなくなったわけではなく、都市でのイベントでは、人々が群衆となって、しかも仮装して出てくるため、治安部隊にはかなり頭の痛い例祭である。
<ユニークな超正統派社会のプリム>
超正統派社会のプリムは、なかなかユニークで、映画にもなっている。
超正統派の男性たちは、プリムの日には、派手に”酔っ払わなければならない”といことになっている。派手に酔うほどすばらしいとされる。そのため、プリムにメア・シャリームに行くと、様々な仮装に身を包んだ老若男女の間で、千鳥足になってふらふらと歩く二人連れの超正統派男性などを多数みかける。
・・・が、大阪で、反昏睡状態、目がすわって本当にわけのわからなくなっている酔っ払いを見ている筆者にしてみれば、まだまだ彼らは、酔っ払ったフリをしているだけのようにもお見受けする。
またプリムといえば貧しい人々への献金である。
ユダヤ教では、貧しい人々への献金は、「ミツバ」と呼ばれるよい行いの一つで、義務であると同時に、健康長寿、家に繁栄と祝福をもたらす鍵であると教えられている。聖書の教えに基づき、互いに贈り物をするプリムでは、特に貧しい人々への献金が強調されることになる。
高名なラビ宅では、この時期になると、貧しい人々が殺到するようにして訪問し、順番まちしてラビに面会し、自分の苦境を切々と訴える。
すると、ラビは、財布を取り出し、その人々に支援金を差し出すのだが、少ないと、貧しい人々は「もうちょっと」という顔と、さらなる苦境の訴えをはじめる。するとラビはしぶしぶ・・・という顔はせず、財布からもう一枚・・・紙幣をだす・・・のである。
プリムの直前になると、派手な制服をまとった7-8人の若者たちのグループを街でみかけるようになる。若者たちは派手な制服と帽子という出で立ちで、ラビたちの家を訪問して回る、いわば、「献金あつめます軍」である。
ユダヤ教では、毎年プリムになると、特に緊急に支援が必要な家族が指定され、皆はその人々のために献金をすることになっている。今年は4000家族だという。この献金集め軍は、特にラビたちの家々を回って献金を集めるよう、選ばれた若者たちである。
当然、若者たちは、日本人のように、「献金していただけますか」といった低姿勢ではない。無愛想にやってきて、「出せ」という感じである。
かなり派手にやってくるため、誰の目にもどのラビの家に入ったかは明らかで、派手に献金を出さざるを得ないようになっている。額が少ないと若者たちは家を去らない。
ドキュメンタリー映画「ハッピー・プリム」によると、若者たちが集める額は、50万シェケル(約1500万円以上)にのぼるようである。
ラビの妻たちもまた、若者たちにふるまうクッキーなどスイーツのバスケットを用意している。弟子たちにもそれぞれ贈り物を出さなければならない。ラビたちにとっては、なかなかの出費の時期と言えるだろう。
ドキュメンタリー「ハッピー・プリム」トレイラー https://www.youtube.com/watch?v=hGxE-tbZlt4
では、そのラビたちはどこからお金を得るかだが、ユダヤ教では、エルサレムに住んでいるだけで特別なので、そのエルサレムの、ましてラビを助けることは、ディアスポラ(海外在住ユダヤ人)の「ミツバ」と考えられている。
エルサレムのラビたちは、献金を受けて、それをまた献金として押し流す、というしくみなのである。従って、ラビから受け取る人も、感謝・・・というよりは、まあもらうことがあたりまえ・・・ということである。
関心したのは、貧しい家族への献金の届け方である。エルサレムでは、献金は、プリム当日に届けられることになっている。
集める時は相当派手に集めるのだが、献金を届ける時は、一人がこっそり、なるべくわからないようにその家に行く。受け取る方は、扉を10センチぐらい開いて、手だけを出して、封筒を受け取る。貧しい人の顔は一切見えない形になっている。渡す方もさっさと渡して、そのまま帰るだけだ。
欧米などキリスト教系のチャリティの場合、受け取った人の写真をとって、献金者に”結果”として送る必要のある場合が少なくないが、ユダヤ教のやり方はまったく逆であることを理解しておく必要があるだろう。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/226423
いずれにしても、ハッピー・プリム。エルサレム、また世界中のユダヤ人の上に主の守りと祝福があるように祈ろう!