シリア空爆:アメリカと有志国 2014.9.24

オバマ大統領は、「イスラム国(IS)を撃退するためには、シリアの本拠地を攻撃せざるを得ない。」との認識をあらためて表明していたが、23日深夜、最初となるシリア領内での攻撃を開始した。

アメリカと有志国は、シリア東部、ラッカなどイスラム国(IS)本部、武器庫、訓練場など20カ所への空爆。海軍も、トマホーク(巡航ミサイル)で攻撃している。

BBCによると、確認できないが、ISメンバーが少なくとも70人死亡しているもよう。アメリカ国防省は「作戦は成功した」と伝えている。

アメリカ国防省によると、この攻撃に、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、バハレーン、ヨルダンが参加している。

シリアのアサド政権は、この連合には加わっていないが、アメリカからは、「攻撃を開始する」という連絡があったとシリア政府は伝えている。

これは、アメリカの戦闘機がシリア領空に入るにあたり、シリア軍機が防衛に出て来ないようにするためとみられる。また、他国の領内を攻撃する場合、予告していないと国際法上、違反になる可能性があるからである。

オバマ大統領は、昨年、化学兵器問題で、シリアのアサド政権を打倒するためのシリア攻撃を計画し、思いとどまったという経過がある。

1年たった今、そのオバマ大統領が、今度はアサド大統領の協力を得て、アサド大統領の敵であるイスラム国を倒すために、シリアを攻撃している。中東とは、想定外が普通におこる地域である。

<どう出る!?イスラム国>

アメリカのシリアへの攻撃に対するイスラム国の反応に関する情報はまだ伝わっていない。しかし、この攻撃に先立ち、イスラム国は、世界に散らばっている分子に対し、テロを起こすよう呼びかけを行っている。

オーストラリアでは、先週、シドニー市内で、市民を拉致して斬首、公開するというテロが計画されていたとして、15人を逮捕。ブリュッセルでも、欧州関係の本部を襲撃しようとしたISISグループが逮捕された。

ブリュッセルといえば、同市内のユダヤ博物館でイスラエルのユダヤ人2人を含む4人がテロリストに射殺される事件があったが、その犯人がISIS関係者であったことがわかっている。

また、シリア東部コバーンでは、先週、イスラム国がせめて来て町を破壊し、残酷な虐殺を始めた。そのため、ほとんど動けないような高齢者から生まれたての赤ちゃんにいたるまでのクルド人が、いっせいにトルコ領内へ避難してきた。その数13万人以上に上っている。

イスラム国は、クルド人が、欧米と協力してイスラム国を攻撃しているからだと言っている。避難民はまだまだおしよせてくるとみられ、国連はトルコが対処できる状態ではないと警告している。

イスラム国は、「これは国家間戦争ではない。宗教戦争だ。”十字軍”に協力する国は攻撃する。」と言っている。実際、バチカンでは法王が危ないとして警戒体制をとっているという情報もある。

<複雑な連合状況>

イスラム国は、アメリカと共にイラクのイスラム国への空爆を行ったフランスに対して、アルジェリアでフランス人市民を拘束。「アメリカへの協力をやめないと殺す。」との脅迫を送りつけている。フランスは、「テロ組織とは交渉しない。」と突き放す返事をしている。

イギリスも、次に殺されると予告された市民が人質となっており、その妻が、解放するよう懇願するメッセージを発したばかり。BBCによると、今回のシリアへの空爆にイギリスの戦闘機は含まれていない。

先日ISから人質49人を解放することに成功したトルコだが、今日になり、シリア反政府勢力がシリア国内で拘束しているIS戦闘員約50人を解放するという取引でトルコ人を解放させたいたとのニュースが伝わっている。

ISとの交渉を拒んで、アメリカとイギリスは人質を殺害されている。イギリスのキャメロン首相は、こうした水面下での取引をする国が増えれば増えるほど、ISの誘拐を助長すると訴えている。

複雑な立場のイランだが、一昨日、核開発問題で続けられている国際社会との協議において、「イランの核問題の制限を緩和するなら、イスラム国壊滅に協力する。」と申し出た。

国際社会は、「それとこれとは話は別。」として、これを拒否。イランは、今回のシリア空爆には加わっていない。

<明日から国連総会と、国連安保理>

今回のシリア空爆は、ニューヨークでの国連総会、国連安保理の年次総会の直前に行われた。オバマ大統領は、すでにニューヨーク入りして、さらにアメリカの方針に賛同、協力する国を要請するものとみられる。

日本は、軍事協力はできないが、人道支援や復興支援のための資金は協力するとアメリカに伝えている。(前回オリーブ山便り参照)

また国連総会でニューヨークにいる岸田外相は、アメリカのシリアでの攻撃を支持すると表明した。なお、日本は、8月、湯川遥菜さんとみられる日本人をISの人質にとられたままとなっている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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