地上軍投入は不可欠:元南方総司令官ツビカ・フォーゲル氏 2014.7.16

4ヶ月前まで、イスラエル軍南方総司令官で、政府にも軍事アドバイザーを勤めるフォーゲル氏は、イスラエルに平穏を取り戻すには、地上軍投入が必要不可欠だと語った。その理由は以下の通り。

1)ガザ地区には堅固な地下都市がある

ガザの地下は、広大な地下都市になっている。トラックがそのまま通過する大きな地下トンネルは、少なくとも5本ある。それらを空爆だけで処分することは不可能だ。

これまでの空軍の攻撃で、かなりの部分を破壊した。これ以上続けると、物理的な町の破壊と、市民の巻き添えが増えるだけで、地下に隠されたハマス勢力を一掃することにはつながらない。兵士が物理的に入って行って、目で見て細かく排除するしかない。

地上戦であれば、地下に隠れて、空爆では、探し出す事のできない指導者を探し出し、その者だけを攻撃できるので、民間人の巻き添えなく、多数のターゲットを攻撃できる。

2)肉弾戦で戦ってはじめて抑止力につながる強さを相手に示すことができる

中東では、上空からの手を汚さない空爆だけでなく、兵士が入って行って、肉弾戦も辞さないとする強さを見せないと、戦後の抑止力にはならない。

2006年の第二次レバノン戦争では、地上軍がレバノン南部に実際に入って行って、ヒズボラを追っていった。それから8年、ヒズボラは確かにミサイルを備蓄しているが、ただの一発も、イスラエルには撃ち込んできていない。

3)エジプトとイスラエルが同じ敵を共有するという歴史的好機を迎えている

現シシエジプト政権は、世俗派政権で、ハマスの母体であるムスリム同胞団を弾圧中である。その一派であるハマスはエジプトにとっても敵である。エジプトとイスラエルが同じ目標を共有するという、いわば歴史的な好機を迎えている。

現在、以上のような理由から、ハマスは、エジプトが仲介をしていることに合意できないのである。ハマスは、カタールかトルコの仲介を求めている。

フォーゲル氏自身は、境界防衛作戦の第一日目から空軍とともに地上軍が入って戦っているべきだったと語る。

<地上軍投入のリスク>

1)イスラエル兵とガザ市民が多数犠牲になる

ガザには、建物のあらゆるところに罠が仕掛けられ、非常に危険である。

フォーゲル氏は、「当然、犠牲者は出るだろう。しかし、私自身、孫たちが戦わなくてもいい時代を迎えるためを思えば、明日にでも出て行って戦う覚悟はできている。」と語った。

なお、ガザ周辺では、地上軍が体制を整えて命令待ち状態。民間人から招集された予備役兵は4万人にのぼるが、その多くは、内勤など背後部署をカバーして、職業軍人が、最前線へ出られるように配置されている。

作戦が始まってから、ガザ市民の多くが難民になり始めている。フォーゲル氏は、地上軍を投入すれば、現地の人々に人道支援物資を搬送する事も可能になるという。外から搬入された物資は、ハマスや武装勢力が着服し、市民には行き当たらないことが多い。

2)イスラエル国内へのミサイル攻撃が増える可能性

ハマスは、ロケット弾やミサイル1万発を保有していると主張する。しかし、これまでのところ、イスラエルに発射されるミサイルの70%が空き地に着弾している。

フォーゲル氏は、グッシュ・ダンという一つの町をあげ、「そんなに空き地があったのか」と思うほど、高倍率に空き地に着弾しているという。実際、ちょうど家と家の間に着弾し、家は無事だったといったことは珍しくない。

次に危険なところに着弾する可能性のあるものは、その90%を迎撃ミサイルが撃墜している。

つまり、ハマスの手にミサイルが1万発あるとはいえ、すでに1000発発射したとして、残りを計算すると、統計上、今後、実際に被害をもたらすミサイルは、1050発と計算される。(統計と推測にすぎないが・・・)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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