ヨム・キプール前の最後の夜の12日、嘆きの壁には、夕刻から夜中まで相当な人々が続々と集まってきた。
不思議なことに正統派の姿は目立たず、保守派、または世俗派と見られる若者がたくさん来ている。群衆の中に立っていると、流ちょうなアメリカン・イングリッシュがさかんに聞こえる。アメリカからユダヤ教を学びにきている若者たち、将来の有望な移住者たちだ。
深夜0:00を過ぎると嘆きの壁広場、またその周辺で、人間が立てる場所にはすべて人間が立つというぎっしり状態となった。0:15分、ラビがメロディにあわせて「わたしたちは罪を犯しました」とろうろうと歌うはじめる。民も一斉に歌ったりアーメンと言ったり。(CGNTVで次週放送予定)
<悔い改めの心は意外にうすい・・かも・・>
「私たちは罪をおかしました」と歌ってはいても、意外に本気でそう思っている人はそう多くはないのかもしれない。嘆きの壁に来ている若者たち数人に聞いてみたが、だれも罪の赦しとか、悔い改めとかは考えていないようだった。
むしろ、これから始まる新年が良い年になるように、この決まった祈りをささげている・・というのがおおかたの人々の動機のようである。つまり、日本の大晦日と同じ動機である。
<預言的には重要な意味をもつスリホット>
しかし、この翌日がヨム・キプールであることを考えると、この前日にユダヤ人の大群衆が、いっせいに赦しをもとめるという「スリホット」が非常に預言的であることがわかる。
聖書には、メシアが来る直前に、ユダヤ人がエルサレムで、神の前でいっせいに泣いて悔い改めると書かれているからである。ゼカリヤ14:6-14 ローマ書11:25-27
今はかっこだけの悔い改めでも、最終的に絶体絶命の中で、エルサレムに集まったユダヤ人たちが、最後の本気のスリホットの祈りを捧げるのだろう。その本気の声を聞いてメシアが到来するのである。このスリホット、よく考えると、鳥肌がたちそうな気がした。
<鶏の苦難・・正統派のスリホット儀式”カパロット”>
嘆きの壁でスリホットが行われている時、正統派たちは、鶏を頭の上で振りかざして、来年の”不運”を鶏に写す「カパロット」という儀式をやっていた。
業者が鶏をもってきて、正統派たちに販売する。その場でカパロットを行い、1-2分で終わった後、”悪運を持つ”鶏はまた業者が持って帰ることになっている。鶏は裁いた後、貧しい人々に贈られる。
赤ちゃんでも1人に一羽必要なので、相当な数の鶏がこの日、虐殺されることになる。鶏は1羽20シェケルくらい(600円)だったが、終盤近くになると10シェケル(300円)にまで下がっていた。
これは罪の身代わりだと思っていたが、実は、「来る新年」におこるかも知れない不運を鶏に与えて、鶏はその身代わりとなって殺されるのだという。悔い改めの要素はほとんどなく、新年の家内安全、祝福のための儀式だった。
鶏は頭の上で振りかざした後、地面において、しあげに蹴り上げるというから、鶏にとっては年に一度の大艱難というところだ。振り回される鶏がきゃーきゃーないて実にかわいそうだった。最近はこの習慣を非難する声がイスラエルでも大きくなっている。
ところで正統派は、スリホットが行われている肝心なときに、城壁の外でカパロットをやっている。メシアの到来を見過ごすことがなければよいが・・・。
*ヨム・キプール今夜から
なお、今夜からヨム・キプールが始まる。イスラエル人の75%が今夜から25時間の完全断食に入る。今年のヨム・キプールは10年で最高といわれるほど暑いという異常気象になっている。