ガザの現状をどう見るのか。ヤアコブ・アミドロール元IDF少将で国家安全補償顧問の解説があった。
アミドロール氏は、今、遺体の返還という人道的な問題がメディアで大きく取り扱われているが、今最大の焦点は、ハマスの非武装化が実行できるかどうかであると強調する。
1)中東全体の大きな転換の中でガザ情勢を見る
アミドロール氏は、今のガザ情勢をそれだけで見るのではなく、広く中東全体の中で理解する必要があると強調する。
28人の遺体が全員返還されることは重要ではあるが、生存する人質20人が解放されたことは、イスラエルにとってはすでに非常に大きな勝利であることは忘れてはならないとアミドロール氏。
これが実現したのは、アメリカとイスラム諸国からのハマスへの強い圧力があったからである。なぜそうなったのかといえば、2023年10月7日以来、イスラエルが驚くほどに、中東の状況を変えたからである。
イスラエルは、ハマスの攻撃をきっかけに、ヒズボラを弱体化させた。今ではレバノン政府がこれを取り締まれるまでになっている。
またシリアでは政権が交代し、新政権はイスラエルとの共存もありうる動きにある。
イランは今、ヒズボラ、ハマス、シリアと傀儡組織をほとんど失っている。イエメンのフーシ派は、まだ生き残っているが、この3者に比べれば、重要性はかなり低いとアミドロール氏。
さらにイランは、核兵器への可能性も失った。イランは高濃度ウランを保有してはいるが、それは、ガスの状態であり、メタルに変換されなければ核兵器にはならない。そのための施設は、この6月、イスラエルとアメリカが破壊した。イランが核兵器を持つ可能性はかなり遠のいたといえる。
この2年間で、中東情勢は大転換した。中東諸国は、イスラエルの強さとやり遂げる力の強さを実感している。だからこそ、もはやイスラエルを排除するのではなく、ハマスへの圧力に転換したのである。
トランプ大統領は、こうした流れから、中東諸国に改めて、イスラエルとビジネスを共有するアブラハム合意への参加を呼びかけたのであった。
アミドロール氏は、特に、10月14日(火)に、シャルム・エル・シェイクで行われたガザに関する国際サミット参加した30カ国の中に、インドネシアが含まれており、出席したプラボウォ大統領が、イスラエルを訪問する可能性が出ていたことに注目している。
さすがに、イスラエル訪問は、実現しなかったが、もし将来、世界最大のイスラム人口を持つインドネシアが、イスラエルとのアブラハム合意に参加することになれば、中東のイスラム国、サウジアラビアなども続く可能性も出てくるとアミドロール氏。
こうした明るい変化がある中で、今、イスラエルは、ガザのハマスと向き合っているということである。
しかし、この方向に進むのかどうかは、ハマスの非武装化ができるかどうかに大きく関わっている。それが焦点だというのである。
2)ハマスの非武装化が焦点
ガザでの停戦が発効した今、国際社会は、ガザの復興を目指しており、国際監視団派遣の話も出ている。それがガザ市民の人道状況を改善し、復興の土台になる。
しかし、ハマスは今、反ハマス勢力であるガザの部族たちへの攻撃を行うなど、暴力的な様相を見せている。この状態では、復興に必要な機材を搬入することはできない。結局、ハマスが今にままで、そこにいる限り、国際社会のどの国もガザに入ることすらできないのである。
しかしではだれが、ハマスの武装解除をどのように、誰が行うのかについて、今の停戦合意には明確にされていないという。アメリカがするのか。もししないなら、イスラエルが入ることになり、武力でそれを成し遂げるしかない。
これは、アメリカにとっては交渉の失敗を意味する。イスラエル国内からは、強硬右派が出てきてガザの併合などと言い出すかもしれない。イスラエルにとっても、重荷であり、また世界から非難されることにもなる。
戦争再開は、何よりもガザ市民にとって最悪である。本来ならガザ市民自身が、ハマスを打倒するべきであるが、驚いたことに、この2年間、ガザの市民は、UNRWAや国際支援を受けるばかりで、自分で自分の責任をとってこなかった。今後、それが実現できるかどうかはわからないとアミドロール氏。
遺体の返還という人道的な問題の背後にあるこれから、ハマスを非武装化できるのか。今後のガザに関わらない確証を得られるのか。これが今、最大の焦点だということである。言い換えれば、その祈りが必要ということである。
