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ホワイトハウスでのトランプ大統領・ゼレンスキー大統領会談
8月18日(月)午後(日本時間19日早朝)、ホワイトハウスで、まずトランプ大統領とゼレンスキー大統領と会談、その後、ヨーロッパ首脳たちとも3時間の会談を行った。
トランプ大統領は、アラスカでのプーチン大統領との会談の結果をゼレンスキー大統領に伝えた。それによると、プーチン大統領は、戦争を終わらせる条件として、以下の点を上げていた。

①ウクライナがドネツク州とルハンスク州から軍を撤退させること。
②クリミア半島のロシアの主権を正式に認めること。
その見返りとして、ロシアは以下のことを提供している。
①ヘルソン州と、ザポリージャ州での戦闘を凍結。
②北部スムイと北東部ハルキウでロシアが支配している地域をウクライナに返還する。
ウクライナに撤退を要求している2州のうち、ルハンスク州は、すでに100%ロシアの支配下にあるが、ドネツク州は、30%がまだウクライナ支配下にある。
その地域には、ロシア軍の侵攻を11年間抑えてきた「要塞ベルト」がある。ウクライナはこの地域に4町を立ち上げ、インフラを整備し、防衛力を強化してきた。
この地域をロシアに明け渡すということは、ウクライナのキーフにまでロシアが到達する可能性を明け渡すことになるとも言われている。クリミア半島を正式に引き渡すことも、ウクライナには認め難いことと思われる。
jp.reuters.com/world/ukraine/CDGWSFIF6ZLTZM2LA666LYR2KM-2025-08-17/
しかし、もし、これでロシアがウクライナへの攻撃をしないと約束し、それを確実にする何かがあれば、とりあえずは、戦争が終るというのが、理論ということになる。
しかし、このように先に侵攻したロシアに少しでも領土を割譲することは、加害者に報いることになる。
また、この動きは、第二次世界大戦が始まる直前の1938年9月、ナチスドイツが、チェコスロバキアのスデーテン地方へ侵攻した時と酷似していると言われている。
同年3月にオーストリアを併合した後、スデーテン地方へ侵攻したナチスドイツに対し、国際社会(イギリス、フランス、イタリア)は、ナチスドイツがその地域を併合することを認めることで、ナチスにこれ以上の侵攻はしないという約束をさせるという宥和政策をとった。*地図黄色エリア
しかし、この翌年1939年9月1日、ナチスは、ポーランドへ侵攻し、世界は第二次世界大戦に突入してい

った。
今プーチン大統領に、ウクライナの領土の一部を引き渡す動きが、この時と同じことになるという懸念が、ウクライナだけでなく、ヨーロッパ諸国の中にもある。
このため、トランプ大統領との会談においては、ロシアにウクライナ領土の一部でも割譲する場合は、その後の安全保障をどうするかということが最大の焦点になった。
これについて、トランプ大統領は、もし今のロシア案を受け入れて和平が成立した後に、ロシアがウクライナへの攻撃に踏み切った場合は、ヨーロッパ諸国とともにアメリカが反撃に加わることを“調整(Adjust)”すると言ったのである。ゼレンスキー大統領は、これに歓迎を表明した。
www.bbc.com/japanese/articles/cly608y6w8zo
その後に行われた欧州首脳たちとの話し合いにおいても、この安全保障が最大の焦点となっていた。ゼレンスキー大統領によると、この中では、安全保障の一環として、ヨーロッパの資金援助で、900億ドル分のアメリカの兵器を購入する話も出ていたとのこと。
www.nikkei.com/article/DGXZQOGN191O60Z10C25A8000000/
両会議が終わった後、トランプ大統領は、プーチン大統領に電話をかけ、40分話して、内容を報告した。現在、プーチン大統領と、ゼレンスキー大統領との二者会談、その後にトランプ大統領交えた3者会談の調整が進められている。
www.nikkei.com/article/DGXZQOGN191O60Z10C25A8000000/
しかし、こうした会談が開催されている間も、ロシアからウクライナへの攻撃は続き、死者も出ている。
また、アメリカが安全保障に関与するのは、ロシアとの“和平合意”達成された後であり、その合意が達成するまでは、今のまま、戦闘が継続されるということである。
結局のところ、プーチン大統領は、ウクライナ全土を目的としており、和平に至る気はなく、単に時間を与えただけの話ではないかとの分析もある。
石のひとりごと
もしロシアが和平に至ったとして、その後にナチスのように、またウクライナを攻撃した場合、アメリカはどう出るのだろうか。トランプ大統領はその安全保障については、“調整(adjust)”という微妙な言葉を使っている。
下手をすれば、ロシアとアメリカの対立、つまり第三次世界大戦にもなりうる。しかし、トランプ大統領は、ビジネスマインドで戦争は超無駄と知っているので、そうはならないかもしれない。
ゼレンスキー大統領はトランプ大統領をどこまで信じていいのかと疑心暗鬼を表する記事もあった。
世界では、国連の権限がどんどん落ちる傾向にある。今回、トランプ大統領がプーチン大統領に異様に敬意を表していたことから、これからは、大国二人で世界を牛耳ろうとしているのではとの分析もあった。
