ロックダウンさらに解除へ:ベングリオン空港始動で第4波も懸念 2021.3.6

帰国入国するイスラエル人:ベングリオン空港 スクリーンショットILTV

ワクチン接種・副反応と感染状況

1)年齢別接種状況と接種にブレーキの課題

イスラエルでは、これまでに490万人が少なくとも1回の接種を受け、360万人が2回の接種を完了した。

2回の接種を完了した人を年齢別にみると、90歳以上が82.1%、80−89歳が81.4%、70−79歳が84.6%、60−69歳が72%と、高齢者の80%以上が、すでに2回の接種を完了している。このためか、重症患者は減る傾向にあり、690人まで減少した。しかし、重篤な人は268人、人工呼吸器装着者は、225人で、死者は、まだ毎日20人前後が続いている。

60歳以下の接種状況は、50−59歳は58.3%、40−49歳が43.1%、30−39歳が22.6%、20−29歳17.3%、19歳以下1.9%と、若年層ではまだ接種を受けていない人が多い。全体でみると、まだ半数近くは接種を受けていない状態である。

政府としては、ともかくも早くワクチンを受けてもらいたいところ、若年層の中には、接種を拒否する人が少なくない。その一員と考えられるのが、SNSを通じた情報だという。まだ予断を許さない状況である。

しかし、宗教によって考え方や行動様式が違うので、それを加味すると、接種を受けた人は、超正統派72%、アラブ系市民64%と一般住民より低い傾向にある。

この2つのグループを除くと、少なくとも一回はワクチン接種を受けたか、すでに感染して回復したか、言い換えれば何らかの抗体を持っていると考えられる人は87%にのぼっている。

www.jpost.com/health-science/covid-19-vaccination-73-cases-facial-paralysis-7-anaphylactic-shock-661073

2)副反応の現状(保健省3月1日データ)

世界に先駆けてワクチン接種を行っているイスラエルは実験台のようになっている。副反応に関する情報は以下の通り。非常に限定的で、危険なものは今の所、かなり限定的のようである。

①1回目接種後

少なくとも一回ワクチンの接種を受けた人は490万人のうち、なんらかの副反応が出たとされるのは、9595人。

このうち、目のかすみ、胸膜炎、心臓系の炎症、心発作、肝臓損傷など、重篤な副反応が出たのは、153人(0.0032%)で、入院を余儀されたのは62人。その75%は基礎疾患のある人であった。

神経的な障害も特徴的で、474人が、皮膚のビリビリした感じや感覚のマヒを訴えた他、23人がけいれん、28人が、口にメタルの味。14人が意識消失(一時的と思われる)、5人が、一時的脳いっ血。この他,59人が、なんらかの神経症状となっている。

この他、4436人が、発熱や関節痛、200人がアレルギー反応で、4人がアンフィラキシーショック(とはいえ、接種会場で発症して治癒)いずれも軽傷とされる。

②2回目接種後

2回目の接種も終えた360万人のうち、重篤な副反応が出たのは162人で、入院を余儀なくされたのは2人。神経症状が出た人も入れると、8743人が副反応が出たとされた。

2回目接種後の一般的な症状を訴えたのは、6122人で、発熱や関節痛、アレルギー反応が101人で、アナフィラキシーは、3人。

なお、以上の訴えの多くは、20−49歳の若年層から出ていたとのことである。

www.timesofisraelcinated/.com/as-transmission-rate-rises-above-1-virus-czar-says-4th-lockdown-a-possibility/

www.timesofisrael.com/tel-aviv-hosts-its-first-concert-for-the-vac

感染の現状は?:第4波も懸念

ワクチン接種はすすんでいるが、1日の感染者数は、まだ3000人以上(日本人口の割でいくと1日4万人程度)が続いている。先週金曜からは、実効再生産数も1.01と1を超え、感染拡大の要素が見え始めた。

この状況下で、政府は、ロックダウンの解除を始めており、3月7日からは、さらなる緩和を実施する。空港は3月4日から、海外で立ち往生のイスラエル人1000人が帰れるようになり、14日からは3000人にまで上がられる。主には、3月23日の総選挙までの帰国を促すためである。

ベングリオン空港でブレスレット・モニターを見せる帰国者
スクリーンショット

さらには、帰国したイスラエル人は、見張りとなるブレスレット式のモニターをつければ、ホテルではなく、自宅で隔離しても良いとしている。しかし、こうなると、様々な変異種の流入も考えられ、第4波になる懸念も出始めている。

こうした中、政府は、5日、さらなるロックダウン解除の決断を来週に伸ばしたとのニュースが入った。7日から解除ということで、準備していたレストランなどは、大困惑である。日本も同じだが、どの国も未知のパンデミックで、右往左往しているということである。

なお、Times of Israelが伝えたところによると、テルアビブのレストランは、1万4000軒であったが、このうち4000軒は倒産。来週からの開業再開を待つのは6000店舗だという。イスラエル経済への打撃は大きく、第4波でまたロックダウンという余裕はまったくない。

そのために、ワクチン接種して感染の可能性は低い人を識別するグリーンパス制度ができている。5日、テルアビブ市が初めてのグリーンパス者専用の野外コンサートを行った。しかし、3万人入るサッカー場に、観客はわずか500人であった。

www.timesofisrael.com/tel-aviv-hosts-its-first-concert-for-the-vaccinated/

 

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。