ハマスとの停戦交渉・危機?:アメリカとイスラエルの代表団退去 2025.7.25

US special envoy to the Middle East Steve Witkoff attends a meeting between US President Donald Trump and NATO Secretary General Mark Rutte in the Oval Office at the White House on July 14, 2025 in Washington, DC. (Kevin Dietsch / Getty Images via AFP)

イスラエルとハマス交渉:アメリカは諦めムード?

カタールのドーハでは、6月7に力、イスラエルとハマスの間接交渉が行われているが、今もまだなんの結果も出せていない。

現時点は、60日の停戦と、人質28人(生存者は10人)の解放という案を元に、ハマスとイスラエルの間接交渉が行われており、今週から、アメリカのウィトコフ特使がドーハに合流しており、結果が出ることが期待されていた。

しかし、ハマスは、非武装には応じず、人質解放には困難があると言うなど、まったく妥協する様子はないという。ウィトコフ特使は、「ハマスはわがままな要求を出してきた。協力する意思はないようだ」と諦めムードで、7月24日(木)、アメリカの代表団は、一旦帰国した。

イスラエルの代表団も帰国したが、アメリカと違って、これがもう最後になるのではなく、イスラエルはこれに対応した案を出す可能性はあるとして、政府と審議を行うと言っている。

*ハマスとの争点

Times of Israelによると、ハマスは、イスラエルにいるパレスチナ囚人200人と、2023年10月7日以来逮捕されたパレスチナ人2000人の解放を求めている。

もう一点は、停戦中のイスラエル軍の位置。イスラエルはガザ周囲全域に、幅2キロ範囲の領域に駐留すると言っている。ハマスは1キロと主張。イスラエルは、1.2キロでどうかと提示したが、ハマスはこれにノーと言った。

アメリカは諦めムードだが、カタールとエジプトは、この争点は解決可能だとみている。イスラエルも、交渉できないものでもないと言っていると報じられている。

人質家族・従軍兵士家族たちの反応:停戦と人質50人全員解放を要求

こうした中でも、家族たちは悲観的になって落ち込むことなく、戦いを続けている。

アメリカが交渉団を引き上げさせた翌25日、アメリカにいる人質家族たちは、ホワイトハウスを訪問。人質50人全員を一度に解放することを求め、トランプ大統領に、関心を持ってくれていることに感謝するとともに、人質家族共に立ち続けてほしいとの声明を出した。

in Tel Aviv, Israel, Thursday, July 24, 2025. (AP/Ariel Schalit)

テルアビブでは、数千人が参加して、ガザでの戦争集結と人質解放を訴えるデモを行った。デモには、人質の両親たち、従軍兵の両親たちや予備役兵たちも含まれていた。

デモに参加した、イスラエル軍関係者は、この戦いは当初は意味があったが、22ヶ月経った今、もはやイスラエルの治安改善というゴールは見えなくなっていると語った。

www.timesofisrael.com/israel-us-recall-negotiators-from-doha-after-selfish-hamas-response-to-truce-offer/

人質問題は外交だけでは限界あり:在日イスラエル・コーヘン大使

一方で、もはや外交だけでは、解決は無理だという人もいる。

在日イスラエル大使のギラッド・コーヘン氏は、23日、大阪での福音派牧師たちとの懇親会において、日本は北朝鮮に、17人を人質に取られ、まだ12人が帰国できていないことをあげた。

このことからわかるように、残念ながら、人質問題は、外交だけで解決しないということがわかってもらえるのではないかと語った。

その上で、イスラエルは、日本のように何十年も待つことはできない。人質を取り戻すために、戦うしかない。これからもイスラエルと共に立ってほしいと表明した。

石のひとりごと

どんなに絶望的に見えても、人質家族、また家族たちと心を一つにするイスラエル人の群衆が人質解放にむけた訴えを決してやめない様子に感動する。イスラエル人のことだから、義理でとか、仕方なく参加している人など一人もいないだろう。

イスラエルの第5代首相だった、ゴルダ・メイヤー氏は「私たちには悲観的という贅沢は許されていない」ということばを残している。この人々とは、少し立場は違うかもしれない、コーヘン大使の中にあるものも、人質を一人も諦めず、取り戻すための戦いである。

イスラエル人たちの同胞に対する熱い心は、おそらく、イスラエル以外の国にはないと思う。これこそが、イスラエル人の幸福度が、戦争中でも世界8位(日本は55位)という結果になっているのである。

イスラエル政府は今後、どういう答えを出してくるのだろうか。その間に、なんとかガザで、軍が人質を発見できないだろうかと思う。

人質、特に生きている人たちの心身が守られるように、ガザで戦いながら、人質を探しているイスラエル軍、その司令官、兵士一人一人、この宝のような国民がすべて守られて、1日も早く、この戦争からされるようにと祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。