ヨルダン川西岸地区過激ユダヤ人入植者暴力に手を焼くアメリカ 2027.7.18

Masked Israeli settlers hurl rocks at Palestinians from a hilltop in the village of Sinjil, in the West Bank on July 4, 2025. (JOHN WESSELS / AFP)

西岸地区極右ユダヤ人入植者たちの暴力・アメリカでも問題に

ヨルダン川西岸地区に住む過激ユダヤ人入植者の問題は、イスラエルだけでなく、イスラエル唯一の同盟国、アメリカにも問題となるスキャンダルになっている。

先週、入植者たちとパレスチナ人の衝突の中で、入植者たちにリンチされ、救急車の到着が、イスラエルの治安部隊に妨害されたことで、死亡したパレスチナ人サイフォラ・ムスレットさん(20)は、フロリダ州タンパで生まれたアメリカ国籍の人だった。

サイフォラさんは、父親のカメルさんの出身地であるラマラ近くのこの村を訪問中に、紛争に巻き込まれた。

ムスレットさん一家は、アメリカで成功した家族で、サイフォラさん自身も、アメリカでアイスクリームの会社を営業する人だった。最後の電話では、父親に「結婚したい」と、普通に語っていたという。

サイフォラさんがアメリカ国籍であったため、ハッカビー米大使は、イスラエルに積極的な調査を要求した。

ハッカビー大使は、福音派で、イスラエル支持を明確に表明している人である。イスラエルのスキャンダルになりうることを、公にするのは初めてのことであったと注目されている。

www.timesofisrael.com/his-son-slain-by-settlers-a-palestinian-american-looks-to-washington-to-end-violence/

また、アメリカでは右翼と目され、イスラエルよりと目される、ワン・アメリカ・ニュースも、西岸地区の入植者にアメリカ国籍パレスチナ人が殺されるのは、これが初めてではないと問題視するニュースを放送した。

アメリカで、イスラエル支持とみられるMAGA(Make America Great Again)勢力のイスラエル離れの始まりではないかと指摘されている。

*西岸地区におけるイスラエルの動き

ガザでの紛争以来、西岸地区からのテロ活動が活発になっていたことから、今年1月、これを未然に取り締まるための「鉄の壁作戦」と開始した。

これまでに、パレスチナ人950人が死亡。6000人(ハマス関連2350人)が逮捕されている。一方、この間に死亡したイスラエル人(治安要員含む)も53人に上っている。

イスラエル軍は、イスラエル人を傷つけたテロリストの家を破壊している。また、違法に建てられているとして、パレスチナ人の家屋の破壊も行っており、今年1月からだけで、1400軒が破壊されたとのこと。住民はどこかへ移動したということである。

the village of Burqa, east of Ramallah in the West Bank on July 15, 2025. (Zain JAAFAR / AFP)

これと並行して、西岸地区に住む過激右派ユダヤ人入植者たちによる、パレスチナ人の居住地を襲撃して、放火するなどの暴力はエスカレートしており、これが原因で、住居を追われるパレスチナ人も出ている。

国連によると、今年1月からだけで、パレスチナ人約3万人が、住居を追われた。これは、1967年の六日戦争以来の数字だという。

www.timesofisrael.com/un-says-mass-displacement-of-west-bank-palestinians-at-highest-levels-since-1967/

石のひとりごと

最近、特に選んでイスラエルのネガティブなニュースを出しているわけではない。しかし、イスラエルメディア自体が、こういうニュースに溢れているのである。

イスラエルが強硬に自衛に出る中、問題も発生していることは知らなければならない。

イスラエルを支持してきた世界のクリスチャンたちは、今、ふるいにかけられているよ時代に入ったかもしれない。

イスラエルに関するネガティブなニュースにつまずいて、離れる人もいるだろう。しかし、主はイスラエルの良い行いや、信仰深さによってでは彼らを主の証国として用いられたことはほとんどない。

イスラエルがどんなに悪に陥ったとしても、主がその名を付けられたイスラエルと見捨てるとか見放すことはない。

逆に主の名がつけられているがゆえに、イスラエルを取り扱われるのみである。それは良いことばかりではなく、厳しいことも含まれている。

人間的理解に基づけば、理解に苦しむことも多くなってくるかもしれないが、逆に、彼らを覚えて、とりなしを続ける中で、主が彼らを取り扱われ、そこに主の栄光が表されることになる。栄光は主にのみ。これが原則である。

わたしが、あなたがたの悪い行いや、腐敗したわざによってでなく、ただわたしの名のために、あなたがたをあしらうとき、イスラエルの家よ。あなたがたは、わたしが主であることを知ろう。—神である主の御告げ—
(エゼキエル20:44)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。