混乱続くGHF食料配布所:IDFガザ北部への食料搬送拡大決定・閣議では激論 2025.7.7

Palestinians inspect the damage after an airstrike in the Al-Bureij camp in the central Gaza Strip on July 4, 2025. (Eyad BABA / AFP)

混乱続くGHF食料配布所:内部告発映像が世界に

アメリカとイスラエルによる、ガザの食料配布センター周辺では、銃撃で死者が連日続いている。

GHFセンターは、ガザ南部に3ヶ所、中部に1ヶ所だけで、特に北部住民は、遠距離を歩いて食料を取りに来なければならない。荷物は重いし、その間に、さまざまな危険に遭遇する。こうしたことから、国連や支援団体は、GHFの閉鎖を求めている。

ハマスも、彼らを無視したシステムであるGHFの食料配布には、撤退を求めている。ガザ市民たちには、GHF食料配布センターでは多くの人が死んでいるとして、GHFには協力しないように言っているという。

あえて混乱をもたらして、人が死ぬようにしているとも考えられる。イスラエル軍は、大変なカオスの中で、少数を殺害してしまうことはあったとは認めている。しかしハマスが日々出してくる死者数は、明らかに過剰な数字だと言っている

ちょっと考えれば、GHFでの食料配布を推進しているイスラエルが、そこでの混乱をあえて起こすはずがないことがわかる。逆に混乱が、ハマスの主張を後押しするものであることは明らかである。

こうした中、7月5日(土)、GHFスタッフの内部告発だとする映像が世界に流された。

GHFは、アメリカとイスラエルによるものなので、スタッフは、いわばイスラエルにとっては味方と考えられる存在なのだが、そのスタッフからの告発だと言っている。

それによると、GHFスタッフが身の危険を感じたときには、銃撃して良いと言われていたと証言している。日本でもこの映像は大きく報じられていた。

この映像が世界に流れた7月5日(土)、ハマスは、イスラエル軍の銃撃で、32人が死亡したと主張していた。その中で、GHFのアメリカ人スタッフも2人が負傷していた。

GHFは、この負傷した2人については、イスラエル兵の攻撃ではなく、ガザ戦闘員が投げた手榴弾で負傷したと発表している。なお、GHFは、これまでにも、現地スタッフが少なくとも8人、ハマスに殺害されたと訴えている。

www.timesofisrael.com/32-said-killed-in-idf-gaza-strikes-ghf-says-2-us-workers-injured-in-attack-on-aid-site/

イスラエル軍が北部へ食料搬送を再開決定:閣議では右派が反論

GHFは、ガザ北部でも配布センターを開設する予定だが、今も戦闘が続いていて、実現できておらず、北部住民への十分な食料配布ができていないとみられる。

このため、イスラエル軍のザミール参謀総長は、北部への食料搬送を開始することを決めた。配布するのは、GHFではなく、国際支援団体になる。

イスラエル閣議は7月5日(土)、これを審議し、最終的にはこれを許可した。しかし、スモトリッチ氏やベン・グビル氏ら、右派議員たちの激しい反発があり、議論は白熱したという。

スモトリッチ氏たちは、これまで、ガザ北部へ搬送しようとしたトラックはほぼすべて、空腹なガザ市民や、ハマスなど武装組織に略奪されたとして、イスラエル兵をそんな危険な目に合わせるのかと反発したという。

ネタニヤフ首相は、「トラックに走ってきたのは、空腹だったからだ。空腹でなくなれば、そうはならない」と反論した。これまでにかなり食料は配布されたこともあるが、食料が十分になってくれば、そういうこともなくなるということである。

スモトリッチ氏たちは、この案を出してきたザミール参謀長官は、大変な失敗者だと非難した。これに対し、野党左派中道はで前参謀総長でもあった、ベニー・ガンツ氏は、ザミール氏は、ベテランで冷静な優れた司令官だとコメントを出した。

今後、どのように搬送が始まるのかはまだ明らかではないが、注目される点である。

www.timesofisrael.com/cabinet-approves-plan-to-let-more-aid-into-northern-gaza-over-hardliner-protests/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。