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プリム2025
世界のユダヤ人は、ユダヤ教歴のアダルの月の14日、今年は3月13日日没からプリムの祭りに入る。
プリムは、聖書のエステル記のストーリーを読み(メギラー・リーディング)、神が、ペルシャで絶体絶命の危機にあったユダヤ人を、どんでん返しで救出しただけでなく、絶対的な大逆転勝利に導いたことを覚える日である。
世界中では3月13日日没からプリムを祝うが、エルサレムでは、さらにシュシャン・プリムを1日後の14日(金)日没から祝うことになる。今年は15日が土曜日安息日にあたるため、祝いは16日まで続き、市中の仮装パレードは16日(日)に予定されている。(エステル記9章3章)
プリムを前に、エルサレムでは、さまざまな準備や行事が始まっている。学校では、子供たちが、ハマスの犠牲となったビバスさん一家を覚えて、バットマンに仮装する様子が伝えられている。
ビバスさん一家は、ハマスの人質になり、父親のヤルダンさん以外、妻のシリさんと、まだ幼い子供だったアリエル君、クフィルちゃんは殺され、遺体となって帰国した。
そのビバスさんファミリーが、バットマンのTシャツを着ていたことからの企画である。
コスチューム会社社長が、ビバスさんたちを覚えようと、バットマンの衣装を一人分10ドルという超格安値で販売して実現することとなった。
子供たちが、この衣装を着、オレンジの風船を持って、ビバス家の2人の少年たちを覚える時となった。
Children in #Jerusalem are honouring Ariel Bibas this Purim by dressing up as orange Batman 🧡t.co/EdJChF31em pic.twitter.com/WvhqBHTsJS
— Israel in Toronto (@IsraelinToronto) March 10, 2025
#Purim in 🇮🇱 today.
Across the country, many are dressed as Batman in honor of Ariel #Bibas.🧡
We will never forget.#BibasFamily pic.twitter.com/adfQ3Zbnrc
— 🎗️Iris Malka 🇮🇱 (@malka_iris) March 12, 2025
ヤルダン・ビバスさんへテロで妻娘殺されたラビ・レオ・ディーからの手紙
ハマスから解放されたものの、妻シリさんと、かわいい盛りの2人の息子アリエルちゃんとクフィルちゃん、家族全てを殺されたビバスさんが、このプリムをどう過ごしているだろうか。
2023年4月に、テロリストに妻と2人の娘を、路上で銃殺されたラビ・レオ・ディーが、ヤルダンさんに手紙を書いていた。
ラビ・レオ・ディーは、ヤルダンさんに「あなたはハマスの恐怖のトンネルで500日を生き延びたが、今、あなたの家族すべてが殺されたことを知って、別の地獄にいることでしょう。」と書いている。
ラビ・レオ・ディーは、トラウマは比べることはできないといいながらも、自分自身がこの2年で学んだことを分かち合うことで、少しは助けになるかもしれない、また周囲の人の学びにもなるかもしれないと思い、この手紙を書いたという。
ラビ・レオ・ディーは、最初の数週間、鎮静剤、睡眠剤を使ったという。しかし、6週間後、それらが逆に害になっていると気づき、鍼灸師に切り替え、1、2回の施術に後、薬をやめ、寝られるようになった。結局のところ、痛みは通らなければならない(薬でごまかすのではなく)と書いている。
次に心理学者に定期的に会うことについて。自分は、まずセッションの前にパニックになり、セッション中はただ泣き崩れ、セッション後数日間、次のセッションまでの間落ち込んだ。これも10回でやめたという。
「心理学が助けになるのは、昔からの傷を発見し、それが癒やされることで助けになるのかもしれない。しかし、私たちの痛みのルーツはそのようなものではない。
学者とはいえ、私やあなたが経験したほどのトラウマはわかっていない。心理学は助けにはならないとわかった。だから毎回、そういう人と話をする意味はないと思う。」と書いている。
では何がいったい助けになったのか。友達と家族である。あなたは何週間も何ヶ月も自分の生活を整理できず、妙な社会的な有名人であることにも対処できないだろう。だからできるだけ、あなたの生活を管理してくれる友人を探すようにすすめると書いている。
ラビ・レオ・ディーのエフラットの友人たちは、シバ(喪中)の間、私に秘書を置いてくれ、時間のすべてを管理してくれた。インタビューなど、人々とのミーティングが続いた。
また、友人たちは、「必要ならいつでも電話してね」ではなく、定期的にいつ会いに来るというふうにスケジュールを組んでくれた。これが救いになったという。
またラビは、今はすべてのことが、悲しみの引き金、トリガーになるとも語る。たとえば、空っぽの家に入った時、午後にアリエルちゃんを迎えに行った時間、乳母車を押している女性を見るときなど、あらゆることがトリガーになる。
だから、以前のルーチンを変えること。しかし、変えられないものもある。それは難しいと覚悟する。2回目、3回目になると徐々に慣れてくる。
最後に、シリさん、アリエルくん、クフィルちゃんは今、最高の場所、神のところにいるということを覚えてほしいと書いている。
100年後に、彼らと再会し、神になぜこんなことになったのか説明をもらえるだろう。その日まで、この地上で使命があるから、まだ残されているということを知らなければならないと書いている。
世界1500万のユダヤ人たちが、あなたを想っている。エルサレムでは、町中がオレンジの風船でシリさんたちを想っている。あなたは人生を通して、あなたの家族を覚えることになる。
ラビ・レオ・ディーは次のように締めくくっている。「ユダヤ人のシンボルはオリーブの枝だと言われています。潰されたら、前よりはるかに価値あるオリーブ油になるからです。
シリさん、アリエル君、クフィルちゃんの記憶がずっと世界中の人に受け継がれていきますように。」
www.ynetnews.com/article/r1yw2hiokx
石のひとりごと
この中に、敵を憎め、復讐せよというのがまったくないのに気がつかれただろうか。憎しみは、本当の回復にはつながらないことを、ユダヤ人たちは知っていると思う。
憎しみに満ちて自滅すること。それこそが最大の敗北であるということをよく知っていると思う。
それにしても家族全部が、不条理の骨頂ともいえるテロで殺された。なぜ神はそれを止めなかったのかもわからない。しかし、ラビの手紙の中にそのことへの怒りも書かれていない。
プリムで家族連れが楽しむ今日明日。ヤルダンさんが、今どんなところに立っているのか、想像を絶する。ただ主の支えがあるように。ヤルダンさんと、ラビ・レオ・ディーの救いのためにも祈る。