ヒズボラと攻撃の応酬激化:イスラエル軍ベイルート本格攻撃 2024.10.21

Israeli airstrike on the Dahiyeh suburb in Lebanon, Sunday, October 20, 2024. (AP/Hussein Malla)

ヒズボラ戦闘員1500人死亡とハレヴィ参謀総長

イスラエル軍が北部国境から、レバノン南部に侵攻を開始してから、3週間を過ぎた。これまでに多数のヒズボラ拠点や武器庫、イスラエルにまで続く地下トンネルを摘発してきた。また、ハレヴィ参謀総長は、これまでの戦闘で、少なくとも1500人のヒズボラ戦闘員が死亡したと語った。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/halevi-says-idf-estimates-at-least-1500-hezbollah-operatives-killed-others-surrendering/

ヒズボラのロケット弾でイスラエル人1人死亡

その後、17日にシンワルの死亡が確認されるとヒズボラは、イスラエルへのロケット弾やドローンによる攻撃を激化させた。19日には、イスラエル北部ハイファやその周辺にむけて、200発近いロケット弾を発射し、キリアット・アタでは、アパートに着弾して破損。

キリアット・ハイムでは、サイレンが鳴って、車を止めようとしていたアレクセイ・ポポフさん(51)の車にロケット弾の破片が降り注いで死亡。

少なくとも10人が負傷した。28歳で負傷した男性は、中等度の負傷とされている。

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ロケット弾はその後も続いており、ハイファ近郊地域に住んでいる友人によると、ほぼ毎朝7時にサイレンが鳴るので、人々は目覚まし時計だと言っているとのこと。

また19日には、カイザリヤにあるネタニヤフ首相の私邸がドローンによる攻撃を受けた。首相とその家族は、この日は自宅にいなかったため無事だったが、ネタニヤフ首相はヒズボラを超えてイランを非難している。(詳細は別記事にて)

イスラエル軍がベイルートでビル崩壊の攻撃

こうした中、イスラエルも攻撃をエスカレートさせたか、レバノンの首都ベイルートへの攻撃を再開させ、ヒズボラの中央司令センターを空爆していた。一部空港への空爆も報告されている。

www.timesofisrael.com/idf-strikes-hezbollah-intelligence-hq-weapons-factory-in-beirut/

さらにその後21日、ベイルートのヒズボラに関連する銀行や、経済関連への空爆を行った。高層ビルが崩壊するほどの攻撃になっている。またベッカー渓谷への関連施設への攻撃も行った。

イスラエルはイランの資金がこれらの経済施設を経由して、ヒズボラに流れていたと主張している。

これらの攻撃の前には、周辺住民に避難をよびかけているが、攻撃が激化するにつれ、家を追われるレバノン市民の数も増えていることも覚えなければならない。

シンワルが死亡したことから、中東情勢の外交的緩和を目指して、ブリンケン米国務長官が、明日、イスラエルに来る予定になっている。

www.timesofisrael.com/israel-vows-iran-will-pay-for-hezbollah-attack-on-netanyahu-home-tehran-distances-itself/

イスラエルによるレバノンでの停戦案:レバノンは受け入れない見通し

ヒズボラはナスララ党首を失い、組織としてもどうなっているのかわからない。イスラエルは、停戦案とみられる文書をホワイトハウスに提出していた。

それによると、イスラエルは、国連決議1701の執行を強化し、レバノン南部におけるヒズボラの武装解除と、レバノン領空への自由なアクセスを求めるとしていた。

イスラエルが、レバノン領空へのアクセスを求めるのは、本来、ヒズボラの拡大を阻止するべく駐留していたUNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)が、20年近くも全くその役割を果たしていなかったため、信頼できないからである。

しかし、レバノン政府は、この条件では、レバノンの主権が脅かされる可能性があるとして、受け入れないとの見通しである。

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石のひとりごと

戦争の様子は明らかにエスカレートしている。幸い、今の所、レバノン市民は避難して、死傷者の報告はないが、内戦で、シリアから逃れていたシリア人を中心にシリア領内に逃れていく人が増えており、レバノンでも人道的な問題が指摘されている。

戦争が終わる気配がなく、ますます暗雲が立ち込めてきた様子である。UNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)との衝突もあり、イスラエルへの非難は今後も高まっていくことが予想される。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。