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ヒズボラのロケット弾でドルーズ子供たち12人死亡
27日(土曜)夕刻、ヒズボラのロケット弾約40発が発射され、ゴラン高原北部、ドルーズの町、マジダル・シャムスに学校にあるサッカーグランドに着弾。10-20歳のドルーズ族の子供や若者12人が死亡した。10人は、現場で即死。2人は搬送先病院で死亡した。
負傷者は30人以上で、これまでにわかっているのは、4人が重傷で、中等から重傷が13人。軽傷10人。(数字は変動中)
目撃者によると、学校のグランドで、子供たちがサッカーを楽しんでいたところ、サイレンが鳴った。子供たちはシェルターへ走ったが、そのわずか15秒後にロケット弾が着弾したため、間に合わず、大勢が死傷することとなった。学校校庭は血まみれの大惨事となった。
ヒズボラ学校攻撃を否定:イスラエルは断定
ヒズボラは、この時、現場近くのイスラエル軍基地に向かってロケット弾とファラクと呼ばれる重ロケット弾1発を発射したと言っていたが、学校グランドへの攻撃については、関与を否定した。
しかし、今回の犠牲者は、全員ドルーズという、イスラム教から出てきた独特の宗教を信じる人々であり、ユダヤ人ではない。
このため、ヒズボラにとっては、“功績”にはならず、にもかかわらず、それが原因でイスラエルとの全面戦争になることを避けようとしたと考えらえる。
しかし、この攻撃の直前、同日27日午後、イスラエル軍は、その前のヒズボラの攻撃に対し、レバノン南部のヒズボラの武器庫を攻撃。ヒズボラによると、この攻撃で、ヒズボラ工作員4人が死亡。今回の攻撃はその直後のことである。
イスラエル軍は、ロケット弾は、レバノンのシェバ村北部から、ヒズボラが発射したものであり、マジダルシャムスの学校に着弾したのは、50キロ以上の爆弾を搭載したファラク1(イラン製)であったと発表。これを指揮したのが、アリ・モハンマド・ヤヒヤだったとまで発表した。
イスラエル軍は、その直後の土曜夜、今回のロケット弾発射地を含む、レバノン南部の複数の地域への攻撃を実施。イスラエル軍のハガリ報道官は、ヒズボラが、この攻撃への関与を否定していることについて、嘘をついていると断言。
ドルーズの人々が、イスラエル市民であることを強調。イスラエルは市民を守らなければならないとして、十分な検証と準備の後、反撃に出ると明言する声明を出した。
数日以内に全面戦争の可能性
毎回ニュースにはなっていないが、10月7日事件以来、ヒズボラは、ハマスを援護するとして、ほぼ毎日、ロケット弾を発射し続けている。イスラエル軍も反撃する応酬を繰り返していた。最近では、イスラエル軍は、ヒズボラの高官の暗殺が続いていた。
しかし、今回は、これまでで最大となる犠牲者を出している。犠牲者は、全員ドルーズ族でユダヤ人ではないが、イスラエル市民である。
ネタニヤフ首相は、訪米中だったが、数時間早く出立して土曜夜のうちに帰国。イスラエル国内のドルーズ族の宗教指導者シェイク・ムアファク・タリフ氏に連絡をとり、イスラエルがこれを黙って無過ごすことはないと伝えた。
イスラエル軍のハレヴィ参謀総長は、マジダルシャムスを訪問。町の指導者と会談し、必ずヒズボラを叩くと述べ、非常に強い反応を準備していると伝えた。
元参謀総長で今は野党有力者のベニー・ガンツ氏もマジダル・シャムスを訪問。指導者たちに、「イスラエルは、南部住民の人質を取り戻すことと、北部の平穏を取り戻すという道徳的な義務を負っている。しかし、時間がかかりすぎた」と述べた。
北部情勢はここしばらく、非常に緊迫しており、全面戦争は避けられないとみられていた。しかし、イスラエルもヒズボラも、その背後にいるイランも大戦争を望んでいないことから、小ぶりの攻撃の応酬がずっと続いている状態だった。
しかし、いつかはどちらかが、意図しない失敗で、市民に死者が出て、本格的な戦争に発展するのではないかと予測されていた。
元イスラエル軍諜報部ジャッキー・ネリア准将は、12人ものイスラエル人の若者が死亡した今、ヒズボラがその失敗を犯した形になったとして、イスラエルが大規模な攻撃に出ない選択肢はないとの見方を語っている。