ネタニヤフ首相のもう一つの大きな問題が、ユダヤ教超正統派にも兵役を課すかどうかとどうかという問題である。イスラエルでは、一般市民には、徴兵義務があるところ、超正統派は、祈りで国を支えるという考えから、徴兵義務は免除されてきた。
しかし、超正統派の人口の増加が著しく、一般市民の間からは、彼らからも徴兵するべきだとの世論が高まっていた。ハマスとの戦争では、30万人近くが徴兵されたが、超正統派の神学校学生6万6000人は、同じ年齢層なのに、召集を免除されていた。国民の間には不公平感が高まっており、もう限界になりつつあった。
こうした中、(おおざっぱにいえば)超正統派の兵役を免除する法律が、3月26日に期限切れを迎えた。このため、この日に先立ち、超正統派たちは、兵役には絶対に応じないとする大規模なデモをエルサレムで行って警察とぶつかっていたのであった。
一方、中道左派系世俗派に人気の国民統一党ガンツ氏は、もし政府が、超正統派の徴兵免除を今のまま延長するなら、連立から離脱すると発表。つまり政権が崩壊する可能性を示唆したのであった。
加えて、ミアラ司法長官は、この法律が期限切れとなった以上、政府には、4月1日(月)から、超正統派の徴兵を開始する具体策を高等裁判所に提出する義務があると発表した。(しない場合は違法になるという判断)
しかし、そんなことをすれば、逆に、ユダヤ教政党が連立を離脱すると言っており、政府は崩壊する。ネタニヤフ首相は、妥協案を出して、ユダヤ教政党と議論した。しかし、合意には至らなかった。
このため、ネタニヤフ首相は、超正統派徴兵施行に関する書類の提出を12時間延期することを要請した。その期限が切れるのは、本日午後2時(日本時間午後9時)ということになる。
イスラエルは、明日にもラファ攻撃を開始するかもしれないといった、たいへんな危機的状況にある中で、政権崩壊の危険性にも直面しているということである。
これがゆえに、市民たちは、「私たちはイスラエル軍は信じるが、ビービー(ネタニヤフ首相)は信じない」と言っているのである。
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