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ヨルダン国王が米ホワイトハウス訪問:イスラム諸国首脳として10月7日以来初
ガザ総人口85%を超える人々が難民となり、危機的状況にあることは、エジプトだけでなく、イスラエルとの戦闘が沸騰しつつあるヨルダン川西岸地区と接するヨルダンにとっても全く他人事ではない。
特にヨルダンは、王室がパレスチナ人でないのに、国民の7割がパレスチナ人であり、国内では、激しい反イスラエルデモも行われている。とはいえ、ヨルダンは国としてはイスラエルと和平を結んでいるのであり、アブドラ国王一家は、欧米とも深いつながりがある。
ヨルダン市民は、おおむね王室に敬意を払っているのだが、いつどうひっくりかえるかもわからない。ヨルダン王室は、存続の綱わたり状態ともいえる。このため、ヨルダン政府は、ガザに野戦病院を設立し、支援物資を上空から落下させて、ガザ市民を支援する働きを続けている。先日はその支援物資を落とす飛行機にアブドラ国王が同乗して、宣伝するなど、繊細な状況を表している。
www.timesofisrael.com/jordans-king-abdullah-joins-aid-airdrop-to-gaza-as-humanitarian-crisis-grows/
こうした中、アブドラ2世国王が、12日、アラブ諸国首脳としては初めて、ホワイトハウスを訪問。バイデン大統領と会談した。バイデン大統領は、10月7日の数日後に、イスラエルを電撃訪問した際、ヨルダンにも行く計画であったが、ガザの病院爆破問題で、行くことができなかった。
ヨルダンのアブドラ2世国王の声明
1)10月7日のハマスの行為含む市民への残虐行為をイスラムは受け入れない
会談後の記者会見で、アブドラ2世国王は、10月7日のハマスのイスラエル人に対して行なった残虐な行為を含め、罪のない市民、女性や子供たちに残虐な暴力を振るうことを、イスラムは受け入れることはできない。
10月7日以降に行われている恐ろしい残虐な行為を止めなければならない」と語った。イスラエルでは、イスラエルへのハマスの残虐行為を明確に非難したことは評価する報道もみられた。しかし、アブドラ2世国王は、イスラエルのラファへの攻撃への危機感をも強調したということである。
2)UNRWAに代わる国際機関はない:UNRWAは温存すべき
またガザだけでなく、ヨルダンや西岸地区、東エルサレムでも活動しているUNRWAに代われる国際機関は存在しないとして、UNRWA追放を訴えるイスラエルに反対すると表明した。
3)西岸地区のパレスチナ人とイスラエルの対立で400人以上死亡は懸念すべき
また、アブドラ2世国王は、ガザでの停戦について、「包括的」にすすめなければならないとも述べ、西岸地区における、パレスチナ人とイスラエルの対立で、10月7日以降だけで、400人近いパレスチナ人が死亡しており、憎しみの連鎖がエスカレートしていることへの危機感を表明した。
4)過激右派ユダヤ人入植者たちの暴力懸念
加えて、ヨルダン川西岸地区の過激ユダヤ人入植者たちの違法な入植活動、パレスチナ人への暴力を指摘。エルサレムの神殿の丘での対立にも危機感を表明した。
バイデン大統領:パレスチナ国家への努力を行なっている
バイデン大統領は、アブドラ2世国王に、イスラエルには、民間人の安全確保の計画なしに、ラファに突入しないよう伝えていること、西岸地区のパレスチナ人の強制移住には反対していること、ガザへの人道支援物資搬入の確保などを伝えていると強調した。
バイデン大統領は、「包括的な解決のためには、パレスチナ人の国家が必要であると考えている。パレスチナ人たちは、パレスチナ自治政府が、西岸地区とガザの両方を効果的に治め、ハマスのようなテロ組織を生み出さないようにできるよう、努力しなければならない。」と語った。
両首脳とも、非常にバランスをとりながら、紳士的な表明であったように思う・・