2023年10月6日ヨム・キプール戦争・勃発から50年:イスラエルとサウジ国交樹立で中東が変わる時になる? 2023.10.5

IDF ヨム。キプール戦争中のモシェ・ダヤン将軍とアリエル・シャロン氏

サウジアラビアをイスラエルの国交樹立という、歴史的な変化への予感がしはじめている昨今だが、今年は、中東でのイスラエルとイスラム諸国との断絶の関係の時代が始まってからちょうど50年という年にあたる。

今年は、1973年のヨム・キプール戦争(第四次中東戦争)から50年になるのである。開戦したのは、10月6日。つまり、明日である。

この戦争は、1967年の六日戦争(第三次中東戦争)で、イスラエルが予想外の勝利を収め、イスラム諸国に大恥をかかせたに我慢ならなかった、エジプト、シリアなど周辺のイスラム諸国が、いっせいにイスラエルの存在を無くそうとした戦争であった。

アラブ諸国は六日戦争の後、スーダンのハルツームにおいて、イスラエルへの「3つのノー」とする決議を行っていたのである。その3つとは、①イスラエルとは交渉しない、②イスラエルと講和しない、③イスラエルを承認しない、である。

ヨム・キプール戦争は、この合意をもとに、アラブ諸国が、イスラエルを滅亡に追い込もうとした戦争であった。この戦争はイスラエル1国に対し、サウジアラビアを含むアラブ・イスラムの10カ国以上が共に戦った戦争である。まさにダビデに対するゴリアテ状態であった。

こうして始まったこの戦争は、イスラエルにとっては全くの奇襲状態で始まった戦争だった。六日戦争で、アラブ連合軍に大勝利を収めたイスラエルは、油断していた。また、ヨム・キプール(大贖罪日)で皆が断食していたこともあって、当初はかなりの苦戦を強いられている。最強神話にもなっていたイスラエル軍の強さ、プライドが崩れた戦争であった。

しかし、イスラエルはその後徐々に盛り返して、戦争は、17日後の23日に、イスラエルが逆転勝利した形で終わったのだった。

双方に大打撃が出たのではあるが、アラブ諸国はこの戦争以降、イスラエルの存在を実質的には認めざるを得なくなり、その後、大きな中東戦争は起こらなくなっている。さらには、アブラハム合意で、3ノーの原則も崩れ始めた。これで、サウジアラビアが、イスラエルと国交を樹立した場合、本当に、中東に、新しい時代が来るかもしれない。

なお、イスラエルの宿敵であり、サウジアラビア(スンニ派)とは敵対するイラン(シーア派)は、当然ながら、サウジアラビアとイスラエルの国交樹立には、批判と反発を表明している。

イスラエルとサウジアラビアとの国交樹立。ヨム・キプール戦争から50年目という今年、それがなるのかどうか。注目されるところである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。