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UAEとサウジアラビアがシリアと外交回復へ
今月10日、中国の仲介で、サウジアラビアがイランとの国交を再開。サウジアラビアを、アブラハム合意に率いれることを目標にしていたネタニヤフ首相にとって、大きな痛手と伝えられていた。
これに続いて、18日、イスラエルとは外交官を交換するほどに、国交を立ち上げているUAE(アラブ首長国連邦)が、シリアのアサド大統領を迎えて、外交関係を回復させることで合意した。イスラエルは、UAEとは友好国になっているが、シリアとは、背後にイランがいることから、敵対国である。
jp.reuters.com/article/syria-emirates-president-idJPKCN2LG05K
さらに23日には、サウジアラビアが、シリアと国交を再開する方向で、ラマダン明けには、領事サービスを再開すると発表した。中国もこれを歓迎すると発表した。
www3.nhk.or.jp/news/html/20230324/k10014018121000.html
シリアは、2011年の内戦勃発の際に、イランとの関係も深くなったことから、アラブ連盟(スンニ派)から破門とされていた。しかし、この2月に、トルコとの国境で発生した大地震の際に、アラブ同盟諸国が支援に入ったことで、この和解の動きが始まったみられる。
シリアは、イスラエルを攻撃しようと近づいてくるイランを擁する国なので、イスラエルにとっては敵国である。最近もイスラエルが、ダマスカス空港や、アレッポ空港に攻撃したと、シリアは非難声明を出していた。
これまで、イスラエルは、UAEとサウジアラビアとの関係を深めようと必死だったが、今、その両国が、イスラエルの敵であるイラン、またシリアと手を組み始めたということである。
そのシリアだが、ロシアの擁護を受ける国である。UAEを訪問する前、アサド大統領は、ロシアのプーチン大統領を訪問し、会談していた。中東がじわじわとロシア支配に向かっている様相である。
シリアでアメリカ兵がイランのドローン攻撃で死亡
こうした動きがある中、23日、シリア東北部に、ISに対処するためとして駐留している米軍が、イラン(ロシアと友好)製ドローンの攻撃を受け、アメリカ兵1人が死亡。6人が負傷した。
アメリカは、シリア東部のイラン革命軍拠点への報復攻撃を実施した。するとイランからはその反撃か、別の米軍基地への攻撃があった。このときに死傷者は出なかった。アメリカはイランとの衝突は求めていないと言っている。
www3.nhk.or.jp/news/html/20230325/k10014019471000.html
ややこしいイスラエルの立場
イスラエルはアメリカと友好国であり、イランと対立するという点では同じところに立っている。
イスラエルは、実際的にもシリア領内のイラン軍への攻撃も続けている。最近も、シスラエルが、シリアの首都ダマスカスの空港や、アレッポの空港への攻撃を実施したというニュースが入っていたところである。
しかし、これはロシアの黙認があってこそ可能になっているという一面もある。今、UAEとサウジアラビアが、シリアと国交を再開し、イランやロシアとも接近することは、イスラエルにとっては、どういう結果になっていくのだろうか。
イスラエルとしては、誰が敵で、誰が味方なのか、なにやらさっぱりわからないというカオス状態である。
湾岸諸国のシリアとその背後にいるイラン、ロシア接近が、イスラエルのネタニヤフ首相にとって、打撃となるのか。それともアラブ中等諸国のしたたかな計算が背後にあるのか。その上を行くような計算がイスラエルにあるのかないのか・・・。
いずれにしても、イスラエルが内部で分裂している場合ではないことは確かなようである。