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ナブルスでパレスチナ人11人死亡:102人負傷
西岸地区にイスラエル軍がほぼ毎晩入って、テロリストや密輸武器摘発を行っていることはお伝えしている通りである。22日水曜朝、ナブルスに入ったイスラエル軍と、パレスチナ人の間で激しい戦闘となり、現時点でパレスチナ人11人(市民3人)が死亡。102人が負傷した。このうち7人は重傷ので、死者数は増える可能性がある。
西岸地区では、1月末に、ジェニンでのイスラエル軍との戦闘でパレスチナ人10人が死亡。2月8日には、エリコでの戦闘でパレスチナ人5人が死亡。そして今回ナブルスで11人と続き、今年に入ってからだけで死亡したパレスチナ人は、すでに60人にのぼっている。(昨年中171人)
一方、パレスチナ人によるイスラエル人へのテロも増加しており、今年に入ってからだけで11人が死亡(昨年32人)している。ナブルスは、特に敵対的な組織が拠点を置く地域なので、警察は、今後、イスラエル国内、特にエルサレムなどでテロが発生する可能性が高いと警告を出した。
23日、ハマスは、忍耐にも限りがあると表明。ガザからミサイル6発がイスラエル南部に向けて発射された。迎撃ミサイルが撃墜し、被害はなかったが、イスラエル軍がガザへ反撃の空爆を行っている。(次記事参照)
ナブルスでの戦闘とその経緯
この夜、イスラエル軍(100人以上からなるエリート戦闘部隊)は、新世代過激派グループ“ライオンの巣穴”の指導者の一人、ハッサム・バサム・イスレム(24)を追って、ナブルスに入っていた。イスレムは、昨年10月に、イスラエル軍のイド・バルーフ軍曹(21)を殺した3人グループの1人だった。軍は、3人のうち2人を先週逮捕し、残り一人を追っていたということである。
イスラエル軍は、ビルの中にいたイスレムが外に出くるよう誘い出すためのミサイルを撃ち込んだ。すると2人が中で死亡。ビルから出てきた1人は射殺された。3人は、イスレムと、モハンマド・アブデル・ファタハ(23)、ワリード・リヤド・ダクハリ(23)だった。
ナブルス全域では、パレスチナ人たちが、車やバイクから銃撃してきたことから、あちこちで本格的な戦闘になった。イスラエル軍兵士たちは、「後ろに子供がいるから撃たない」叫ぶなど、市民を巻き添えにしないよう、必死になっている様子も記録されている。
イスラエル軍兵士は、数人軽傷を負っただけで、全員無事だったが、さらにパレスチナ人8人が死亡した。以下の人々である。
市民3人:アドナン・サアベ・バアラ(72)、アナン・シャウカット・アナブ(66)、アブドゥル・ハディ・アブドゥル・アジズ・アシャー・メナヘム・カル(61)
戦闘員:モハンマド・ファリド・シャアバン(16)、タメル・ニムル・ミナウィ(33)、モハンマド・カリード・アンドウシ(25)、ムサブ・ムニール・アワイス(26)、ジャセル・ジャミル・カニール(23)
死亡した11人のうち、6人は、ライオンの巣穴とイスラム聖戦が、そのメンバーであったと発表した。
تغطية صحفية: "الفلسطينيون العشرة الذين ارتقوا برصاص الاحتلال خلال مـــجزرة نابلس اليوم". pic.twitter.com/bpJT3pyRvu
— شبكة قدس الإخبارية (@qudsn) February 22, 2023
ナブルスでは、死者の葬儀が行われたが、町はぎっしりの様相であった。
ユダヤ・サマリア評議会が西岸地区に7000戸建築計画を表明
イスラエルに強硬右派政権が立ち上がってから、西岸地区へのユダヤ人の入植活動が前面に押し出されていることもまた国際社会で物議になっていることはお伝えしている通りである。
イスラエル政府は、入植地拡大を一時停止することで合意したのではあったが、22日、西岸地区ユダヤ・サマリヤ評議会は、その一時停止の数ヶ月が終わると同時に、4600戸の建設を始めると発表した。(後の記事では7000戸)
エルサレムポストによると、前トランプ政権時代に約束された西岸地区での建築が、バイデン政権になってから著しくストップさせられて、工事が遅れた分の一部だと主張しているが、これは非常に大規模な計画である。
アメリカが深い懸念表明:アラブ諸国からも厳しい批判
先週、パレスチナ自治政府のアッバス議長は、イスラエルの西岸地区での行動がエスカレートしているとして、国連安保理に訴え、非難決議を要請しようとしていた。アメリカは、拒否権を発動するとみられたが、ブリンケン国務長官が、アッバス議長を説得し、先週、訴えを取り下げさせた。そして、両者の間に、なんらかの対話が可能になるかもとの希望も表明していたのであった。
その直後、イスラエル軍が、日中堂々とナブルスに突入したということである。バイデン政権は、対話への道筋は後退すると、深い懸念を表明した。アメリカに続いて、ヨルダン、エジプト、サウジアラビア、UAE、カタール、トルコが、非常に厳しいイスラエルへの非難を表明した。
国連安保理は、アッバス議長が要請を撤回したため、非難決議こそしなかったものの、非難声明を、アメリカも含めての全会一致で出したところであった。国連のグテーレス事務総長も深い懸念を表明している。
www.jpost.com/breaking-news/article-732352
イスラエル国内からも、先週、ネタニヤフ首相が、国際社会に対して西岸地区での活動を保留にすると約束した、その口も乾かぬうちに、こうした動きが、なぜ起こったのか。
しかも3月23日からは、イスラム教のラマダンが始まって、イスラム教徒たちが過激になる直前に、これほど大胆な衝突を誘発するがごとくに、ナブルスに入ったことに、批判の声も出ている。
石のひとりごと
ネタニヤフ首相は、いったいなにを考えているのだろうか。ほんとうにイスラエルのためになると信じて、こうした強硬的な動きを認めているのだろうか。
これまでほどに、ネタニヤフ首相がリーダーとして最前面に出ていないことも気になるところである。