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民主主義サミットで明らかになる世界の分断
テレビでも連日報じられているように、アメリカは北京での冬季オリンピックへの外交ボイコットで政府代表団を派遣しないと発表。これに続く国、続かない国と世界が分断する様子が報じられている。
さらに9日からは、バイデン大統領が、予定されていた、オンラインでの民主主義サミットを開催している。参加国は、アメリカに招かれた110の国や地域である。この中には、欧米諸国の他、韓国、日本とイスラエルなども含まれている。また特に台湾が国扱いされ、招かれて参加していた。
招かれなかったのは、中国やロシアなど、先制主義と見られる国や地域である。中国は、特に本国は招かれていない中で、台湾が招かれていたことに反発。
サミットに先立ち、アメリカの民主主義の問題点を指摘する文書を公表し、中国は、専制主義であるからこそ、国民の生活を守れるとして、中国の民主主義こそが本来の民主主義だと主張した。
www3.nhk.or.jp/news/html/20211205/k10013375621000.html
この民主主義サミットは、バイデン大統領の意向にそって行われたものだが、実質的には中国に挑戦状をつきつけるものだとみられている。招かれた国々は、中国との貿易、アメリカとの関係維持の双方の間に立って微妙な立場に立たされた国が多い。欠席した国もある。
中国とロシアは、このようなカンファレンスは世界の分断をあおるだけだと非難した。
Gゼロ世界がもたらす先制主義国家の台頭
このように、急速に、民主主義国家と先制主義国家の対立が目立ってきているのだが、その背景にあるのは、Gゼロと言われる、リーダー不在の世界情勢である。GゼロのGとは、G7やG20のG(Group)で、世界的リーダー不在のために、先進国がチームワークを発揮できない状況を指す。
20世紀終盤、米ソの冷戦が集結すると、アメリカがリーダーシップを発揮し、また世界の警察としても恐れられたことから、世界の平和と発展を主導してきたといえる。
しかし、近年、国連での多数決が必ずしも民衆の思いを反映しなくなり、大国が拒否権を発動するので、何も決まらないなど、民主主義の限界ということが認識されるようになってきた。
こうした中、アメリカは、トランプ前大統領の時に、「アメリカ・ファースト」と、自国の利益を優先すると宣言。
TPP(環太平洋経済連携協定)や、世界が一丸となって地球温暖化と戦おうとしていた京都議定書などの様々な世界協定から離脱し、自らリーダーの役割を放棄していった。
また、2020年にコロナ・パンデミックがはじまると、先制主義国家ほど強力な統制がとりにくいアメリカでの被害が最も多くなり、この点からも、民主主義国家の限界を思わせる結果になっている。
さらに、アメリカが、平和維持のためとして世界に派遣してきた米軍を次々に撤退させる中、11月には、ぶざまともいえる様相で、アフガニスタンに駐留していた米軍を撤退させたことは記憶に新しい。これで、アメリカの権威は、いよいよ地に落ちたといえる。
バイデン大統領が、民主主義サミットで、アメリカのリーダーシップを回復しようとしたのかもしれないが、その目標を達成したかどうかは疑問である。
この情勢の中、先制国家である中国とロシアの存在感が大きくなっている。世界では、民主主義から先制主義となった国が増えつつあり、2019年の時点で、民主主義国家87カ国、先制主義国家92カ国と、戦後初めて、その数が逆転(スウェーデンの調査機関VーDem)している。
これまでは、最も優位で、世界はこうあるべきと思われていた自由主義、民主主義が、今や、失われていく時代に入っているということである。