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予算案:大きな衝突なく2回通過
9月2日、国会では、ベネット政権が提出していた2020-2021年の予算案の審議が行われた。1回目は、賛成59―反対54、2回目賛成59―反対53で、2回とも賛成多数となり、可決された。2回通過するのは3年ぶりである。
もし11月4日までにもう一回通過し、3回通過しなかった場合は、ベネット政権は終わり、また再選挙ということになるが、2回通過したことで、大きな王手をかけたことになる。
ベネット首相は、「意見の相違を乗り越え、真のパートナーシップで、イスラエル市民のために、よりよい予算案になった」と述べた。ラピード外相(2年後首相)は、「“普通”の責任ある予算案の審議ができた。政治家のためではなく、教育、治安、健康、経済、イノベーションなど国の最善のために、話し合えた結果だ。」と述べた。
その内容だが、2021年の支出は4320億シェケル(約13兆円)で、2020年は4520億シェケル(13兆5000億円)。*日本の2021年予算は106兆6097億円
主な増加は、やはりコロナ禍であり、医療分野で、20億シェケル(600億シェケル)の増加となっている。イスラエルでは、全国7病院が、医療崩壊が近づいていると警告し、ストを行っていた。1週間の交渉で政府と合意した内容によると、今年度末までに、医療施設は、9億6000万シェケル(約300億円)を受け取るとともに、来年度予算にも加算が盛り込まれるとのことであった。病院は今はストは行っていない。
また、高齢者保証にも15億シェケルが追加され、ホロコースト生存者への毎月の年金が、該当する人には、2500シェケル増やされ、6500シェケル(19万5000円)となる。
物議となったのは、超正統派への締め付けとなりうる項目が含まれていたことである。政府は、現時点で、超正統派に独占的になっているコシェル(食物規定)の認定を行う機関を設立するための予算を含んでいる。
また、農産物の輸入税について、ヤミナなど右派は下げることを主張したが、メレツなど左派は、国内農業を守るためにこれに反対した。
こうした衝突はまだ未解決ではあるが、国会での審議では、右派左派、アラブ政党までいたにもかかわらず、予想以上にスムースに決議にすすんだという。リーバーマン経済相は、予想外に静かで、驚いたとも言っていた。
与党ネタニヤフ首相・遠隔からの反論
今は最大与党となったリクードのネタニヤフ前首相。休暇でハワイに行って帰ってきたばかりで、まだ規定の隔離期間中であったことから、国会のガラス張りで隔離された階上にある見学者様の席から審議に出席した。
遠くで一人寂しい感じで立ち、「ひどい予算案だ」と反論した。国会席からはかなり離れたところなので、なんとも寂しい感じが際立っていた。
ネタニヤフ前首相は、そこから「この予算案には削減が多く、増税もある。農家や弱者を苦しめ、中流層だけが益をえる案だ。」と訴えた。
イスラエル人の知人は、ネタニヤフ前首相の優れたリーダーシップについては、今も評価していたが、ベネット政権が定着する方向に見えている中、なんとも寂しい光景であった。