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ベネット首相初の訪米へ出発:バイデン大統領の招聘にて
24日、ベネット首相が、バイデン大統領からの招聘を受けて、アメリカへ出発。ワシントンに25日到着したベネット首相は、まずユダヤ人ロビー団体AIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)のCEO、ハワード・コヘル氏、続いてオースティン米国防相、ブリンケン米国務長官と会談した。
バイデン大統領とは、26日(日本時間との時差は13時間後)に就任後はじめてとなる会談を持つことになっている。
ベネット首相は、後にブリンケン国務長官に、今回は、イスラエルから、新しい協力のスピリットを持っていくとその意欲を語っている。何が新しいのかというと、意見が違うことがあっても、お互いによい思いの中で協力しあい、ともに働くことができる関係。その中で、合意できるものはなにかをみつけだし、前に進むということだと言っている。
その上で、①近年急激に進化したイランの核兵器問題とそれへの対処、②中東でのイスラエルの武力を最高に保つための支援について、③ハイテク、経済、開発、気候変動など、そして、④コロナとの戦いについて話し合う。ベネット首相は、イスラエルで実施している3回目ワクチンの効力についてを伝えたいと語っている。
出発にあたり、ベネット首相は国民に対し、「3回目ワクチン接種の拡大(170万人以上接種済み)により、コロナ感染が沈静化するとの希望と確信を持って出発する。」と述べて、アメリカへ出発して行った。
www.timesofisrael.com/touting-reset-of-ties-bennett-heads-to-us-to-map-out-iran-strategy-with-biden/
オースティン国防相との会談:年間38億ドルの軍事支援の契約に変更なし
オースティン国防相との会談は、ペンタゴン(アメリカ国防省)で行われた。オースティン国防省は、特に7月30日にオマーン沖で発生した輸送船へのイランのドローンによる攻撃で、乗組員2人が死亡したことをあげ、イランへの警戒をイスラエルと共有。
オバマ大統領時代に10年の契約としてかわされた年間83億ドルのイスラエルの軍事支援に変わりはないと約束した。
加えて、オースティン国防相は、イスラエルが、イラン、ガザ情勢悪化などで、10億ドルの緊急支援を要請していることについて、議会からの承認を得られるよう、働いていると述べた。ベネット首相は、アメリカの友好関係、変わらない軍事支援に感謝を表明した。
ベネット首相は、訪米に先立ち、アメリカ共和党、民主党双方の議員たちを前にオンラインでの話し合いを行っていた。その中でベネット首相は、「イスラエルが、アメリカに部隊を派遣するようにと要請を出すことはない。
イスラエルは、アメリカにとっての“ブーツ・オン・ザ・グラウンド(地上の実戦部隊)”だ」と語った。したがって、アメリカは、イスラエルへの軍事支援を大事にするべきだということである。
www.timesofisrael.com/bennett-to-us-congressmen-preventing-a-nuclear-iran-is-americas-interest/
ブリンケン国務長官との会談:イラン問題にプランB提示か?
オースティン国防相にあと、ベネット首相は、ブリンケン国務長官と会談。イスラエルは、アメリカがイランとの核合意(2015年発足・2018年離脱)に戻ることに反対するとの意向を伝えた。
アメリカ訪問に先立ち、ベネット首相は、オンラインで民主・共和両議員たちとオンラインで会談していたが、その時、ベネット首相は、首相就任にあたり、1ヶ月半かけて、イラン情勢を調べたが、核合意への復帰はもはや可能ではなくなっているとの結論に達したと述べていた。だからこそ、アメリカが、少なくともこの時点で、イランとの核合意に復帰することに反対したということである。
イランは、すでにウランを60%にまで濃縮を開始(核兵器の90%まで2月しかかからない)しているだけでなく、強硬派ライシ政権が発足。中国が経済的なバックアップにいること。また、現イラン政権がまだ相当に強大な権力を有していることから、市民たちが政権を転覆させる可能性もほとんどないとみられる。
イランとの核合意に、今のままでアメリカが復帰しても、イランがアメリカの圧力屈することはないだろう。いいかえれば、世界にとってより良い核合意に持ち込む可能性がないということである。世界はイランの核開発抑制に関してプランBが必要だと、ガンツ防衛相も25日の外交官・外相会議(60カ国)で発表していた。
www.timesofisrael.com/gantz-says-world-needs-a-plan-b-to-the-faltering-iran-nuclear-deal/
ではどうするのか。このままイランを放置するということか。別の記事では、ベネット首相が、オースティン国防相に伝えたように、イスラエルが“ブーツ・オン・ザ・グラウンド”になって、イランの核兵器施設への攻撃準備を進めていると伝えている。
イスラエルがイランの核兵器施設を破壊し、もう開発の余力がないほどにまで破壊してしまえば、ようやくイランがアメリカとの交渉を受け入れるようになるのではないか。もイランが核兵器を保持するのを防ぐ道はこれしかないということなのである。
www.timesofisrael.com/as-bennett-meets-biden-idf-ramps-up-plans-for-strike-on-irans-nuke-program/
最終的に、ベネット首相は、この案をバイデン大統領と議論するのではないかとも言われている。当然ながら、この案にアメリカが同意するかどうかは、当然ながら、全く不透明である。
アメリカとの一致・不一致
このほかの点では、ブリンケン国務長官(ユダヤ人)は、中東ですすんでいるイスラエルと湾岸諸国との関係について、アメリカはその動きを支援したいと述べた。また両者は、イスラエル人のアメリカ入国の際にビザなしにする方向で検討をすすめることでも合意した。
しかし、ブリンケン国務長官は、ベネット首相が持ち出さなかったパレスチナ人との関係を持ち出した。バイデン政権は、基本的に、パレスチナ人も国を持ち、独立すべきと考えている。この点は、イスラエルとアメリカが、まだ完全には一致していない点である。
ベネット首相は、気候変動について、その中で、イスラエルにはハイテク技術で貢献できるので、できる協力をしていきたいと伝えた。
余談として伝えられたことは、ベネット首相が、今、アメリカが急いでいるアフガニスタンからの脱出について、1940年、ダンケルクの戦いを引き合いに、アメリカの脱出を称賛したという。ダンケルクの戦いでは、ナチスドイツがフランスへ侵攻してきた際、英仏軍が急ぎ、40万人を非難させたのであった。
www.timesofisrael.com/austin-tells-bennett-well-make-sure-israel-can-defend-itself-against-iran/
*アフガニスタンからの撤退
タリバンの支配下にあったアフガニスタンからのアメリカ人や関係者の脱出には、予想以上の時間がかかっている。バイデン大統領は、脱出が8月末までに終わらない可能性があるとして、一時軍撤退の延期を示唆した。するとタリバンがこれを認められないと一蹴。その後、バイデン大統領は、「今のところ今月末には撤退を終える見通しだ。」と表明している。
石のひとりごと:イスラエル式の関係づくり
ベネット首相、就任初の訪米。新しさを強調しているが、アメリカのメディアはやはり、12年以上も続いたネタニヤフ前首相と、ベネット首相を前首相と比べて報じる傾向にあるとのこと。
しかし、ベネット首相が、表現した「新しい関係のスピリット」にちょっと注目させられた。どんなスピリットかというと、お互い、全部合意できないのが当たり前であり、それだからといって、関係が切れてしまうことはないという関係である。
違う意見であることを互いに認め合いつつ、それぞれの益を考えながら互いに協力できるところは協力していく。そうして、最も大事な目標は何かを考る中で、一致できる点を探していくのである。
社会のために、個人が我慢するということに美談を言っているのではない。それぞれが考え、自分の意思でもって、社会のために折り合っていくという姿である。
イスラエル人が、誰かが言うことに盲目で従うということは絶対にありえない。社会を自分のことにように見て、自分で決めて動く。
だから社会のためにならないとおもえば、遠慮なく発言する。一方、政治家もそれに耳を傾けるが、支持を失うことへの恐れからそれをそのまま、取り入れることはない。それを参考にしつつ社会にとって何が最善かを判断して決めていく。
そうして、大部分の国民がそれなりに納得できる政策が、詳しい説明とともに発表される。いったん決まれば大部分の国民もそれに協力していこうとする。これこそが、多種多様な社会構造のイスラエルが生き延びてきた生き方なのである。
確かに、ユダヤ人は、個別でばらばらであった長い時代、激しい迫害にさらされた。イスラエルという共同体を絶対に失ってはいけないことをだれもが身を持って知っているということである。
しかし、それだけにとどまらない。イスラエルという共同体になったからこそ、天地創造のイスラエルの神を、この世に表していくと言う、イスラエル本来の使命を果たせるようになっていると言えるのではないか。
イスラエルから学べることは、個別での証とは別に、教会という共同体になってはじめてできる証があると教えているように思う。
最近、共同体ということについて、いろいろ考えさせられている。