リブリン大統領から組閣の指名を受けた未来がある党(中道左派・世俗派)のヤイル・ラピード氏と、ヤミナ党(右派)のナフタリ・ベネット氏は、ベネット氏を先に首相にする形で、組閣を急いでいる。
しかし、この2人が組んでもまだ過半数に足りないので、焦点は、アラブ・イスラム政党ラアム党が、閣僚には入らない形で、国会では、政府に賛成票を入れると約束するかどうかであった。
ラピード氏は、ラアム党のマンソール・アッバス氏と会談。協力を得るための交渉を行った。条件としてアッバス氏が挙げていたのは、①アラブ人居住区で横行する凶悪犯罪取締への予算、②南部で違法とみなされている3つのベドウィン地区を合法化することなど、アラブ系市民の生活を改善する項目を挙げたという。
この交渉が行われている間に、エルサレムでの衝突やアラブ系市民との衝突がナザレやハイファでも発生し、アッバス氏の動向が注目されていたが、最終的に、アッバス氏は、これらの条件で、ラピード氏とベネット氏に協力することで合意したもようである。
あとは、この多様な党の党首たちに、どう大臣の椅子を分配するかだが、これについては、すでに交渉がだいぶ進んでいるようである。
もしこのまま、ネタニヤフ首相を首相からおろすことを目標に結束したラピード、ベネット組が政権をとることになれば、まず最初にすることは、首相は2期以上継続できないとする立案である。こうなると、ネタニヤフ首相が復帰する道はなくなることになる。
<ユダヤ教政党がネタニヤフ首相に降板を要請>
こうした事態を避けるため、ユダヤ教政党の統一トーラー党は、ネタニヤフ首相に、一旦、首相から降りて、リクードの別の人物を立てて、まずはその人物に、前半は首相を任せる形で、後半は返り咲く形で、右派政権の維持を図ってはどうかとの提案が出された。
また、ネタニヤフ首相とリクードは、ヤミナの党員たちに、左派ラピード氏と組もうとするベネット氏から離脱するよう働きかけている。これまでに1人が、ヤミナから離脱している。新しい政権が発足するかどうかは、いよいよ時間との勝負になっているようである。
ただし、今、国家的な危機がイスラエルに迫っているので、こうなると、ネタニヤフ首相がどうしても強くなる傾向にある。イスラエルの政治。まだまだ見通せないようである。