感染予防の規制解除、方針定まらず:ネタニヤフ首相とガンツ防衛相紛糾 2021.2.8

ネタニヤフ首相とガンツ防衛相(手前)

イスラエルでは、世界最速でワクチン接種が進められており、これまでに感染した人も鑑みると、集団免疫が20−30%になっているとみられている。しかし、複数の変異種が入っていることもあり、この週末の新規感染者は、4727人、3756人、死者は、51人、42人とまだ高止まりが続いている。

3回目のロックダウンはまずは1月31日に期限を迎えたが、国会で意見が分かれて、方針を定めることができなかった。その後も、夜遅くまで論議した結果、数日だけ延期するという経過が2回。最終的には、2月7日(日曜)朝7時が期限となっていた。

7日朝、国会ではこの件に関する審議が行われた。ネタニヤフ首相(右)は慎重な姿勢を崩しておらず、今、ロックダウンを解除することは危険だと主張。

一方で、経済への影響、メンタルヘルスへの影響が、かなり深刻であることと、感染予防策を守らない超正統派たちへの取り締まりの弱さへの不満も高まっているとして、ガンツ防衛相(左)は、制限を解除するべきだと主張している。

結局、自宅からの外出1キロ以内解除、国立公園解除、美容院規制の解除など、部分的な制限解除が実施された。学校教育機関の再開については、合意にいたらず、この件については、翌8日に持ち越された。

議論は、かなり紛糾したもようで、ネタニヤフ首相が、ガンツ防衛相に対し、「血の責任はあなたに戻ってくるだろう。」とまで言ったという。

www.timesofisrael.com/blood-will-be-on-your-hands-recordings-leak-from-chaotic-cabinet-meeting/

なお、ベングリオン空港での閉鎖処置、国際旅客便の受け入れ停止については、ネタニヤフ首相、ガンツ防衛相の合意の上、2週間延期(2月中旬まで)することが決まっている。

これについては、国外にいるイスラエル市民が帰れなくなったと訴えていた。政府は、政府が空港閉鎖を決めた1月25日以前に出国した市民については、帰国できるようにしたとのこと。様々な混乱が発生しているようである。

www.jpost.com/israel-news/citizens-stuck-abroad-after-airport-closure-permitted-to-return-658113

*7日:ブネイ・ブラックで3回目の葬儀

超正統派たちは、先週1万人級の超蜜状態の葬儀を2回行ったことが注目されたが、ブネイ・ブラックでは、7日にもまた、同様の1万人級の葬儀が行われた。先の葬儀の2人のラビに続いて、今回の葬儀のラビ(82)もコロナで死亡している。一般民よりも超正統派の方が感染率は高いのである。

日本も規制緩和については手探りと論争が続いているが、イスラエルでも、同様ということである。しかし、イスラエルで特に複雑なのは、コロナ対策と、その後の結果が、3月23日に行われる総選挙に大きく関わってくる点。イスラエルでは、3日、それぞれの党から選挙名簿が提出され、文字どおり、選挙戦の火蓋が切られたところである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。