左派の反ネタニヤフ首相デモ1.5万人:右派にも反ネタニヤフ首相 2020.8.10

首相官邸前 8月8日 出展:RUPTRY スクリーンショットhttps://www.youtube.com/watch?v=h2bKjKts8eI

1)左派によるデモ2万人:エルサレム

イスラエルでは、ここしばらく毎週土曜夜にエルサレムの首相官邸前を中心に全国で、大きな反ネタニヤフ首相デモが続いている。5回目にあたるこの土曜日のデモでは、参加者が、これまでの最大、1万5000人から2万人が、首相官邸前で、ネタニヤフ首相に辞任を求めるデモを行った。

こカイザリヤの首相の私邸前、高速道路ぞい、遠くは南端の都市、エイラットでもデモが行われた。参加者の多くは子供連れの若い家族や、若い世代である。

今週、人々は、政府は、現状(コロナ危機以降の市民の困窮)理解していない、かけ離れているとして、いわば国を支配している首相に「我が民を去らせよ。」というスローガンを掲げた。これは聖書で、イスラエルの民を奴隷にしていたエジプトのパロに、モーセが訴えた言葉である。

また、いつものように、「クライム・ミニスター(犯罪首相)」と訴えるグループ、さらには、アラブ政党がパレスチナの旗を掲げて、「占領に反対」と叫ぶ様子もみられた。

ネタニヤフ首相の辞任という点では共通しているものの、多数のグループの間に、協調はなく、具体的、建設的な統一目標はみられない。SNSが生み出す新しい時代のデモの形といえる。

この土曜日、エルサレムの警察数百人は、午前0:30までデモを見守り、その後、解散させようとしてデモ隊と衝突。3人が逮捕された。

www.timesofisrael.com/thousands-expected-to-take-part-in-anti-netanyahu-demonstrations/

2)統一政権は誤りだった:右派も反ネタニヤフ首相に向かう?

こうしたデモは、左派、もしくは中道左派によるもので、特にアラブ政党が参加していることからも、右派参加はまだ多くない。しかし、参加している右派は、「ネタニヤフ首相は、政治的に生き延びるために、左派と右派の対立を避けた。それにより、国民を分裂させた。」と訴えている。

イスラエルの民主主義研究所の調べによると、ネタニヤフ首相のリクード内部でも、49%が、政府の経済政策に反発するデモ隊の主張に賛同すると答えていた。右派の中にもデモに一部的にでも同調する意見もあるということである。

実際、今のデモが左派すぎて、参加しにくい右派たちのために、別の反ネタニヤフ首相デモも計画されているという。また、世論調査をすると、ネタニヤフ首相が左派ガンツ氏と組んだことで、政権から離脱した右派政党ナフタリ・ベネット氏の支持率が上がっているとのこと。

こうした流れについて、ネタニヤフ首相は、事実ではないのに、メデイア(チャンネル13)が煽っていると批判している。

www.timesofisrael.com/joining-anti-netanyahu-protests-right-wingers-vent-frustrations-at-premier/

一方で、ガンツ氏も、右派のリクードと組んで統一政権に同意したことで、青白党との間に大きな亀裂を生み出し、結果的に党の中心であったヤイル・ラピード氏は党を離脱。ネタにタフ政権を辛辣に批判してきた。しかし、今、ガンツ氏の支持率は大きく下がり、ヤイル・ラピード氏の支持率は上がる傾向にある。

こうしたことから、もはや4回目の総選挙の足音が具体的になり始めているようである。コロナ危機に加え、北部南部治安情勢もかなり緊張しているときなのだが。。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。