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イスラエルでは、4月中旬から国内の経済活動を再開をすすめており、店舗や企業がほぼ再開している他、今週から、イベント会場の収容は250人までが許可され、列車も500人を上限に運行を開始した。
しかし、これと同時進行で、新たな感染者も急激に増え始め、先週末からは1日の感染者が300人を超えるようになっている。イスラエルの感染者総数は、2万1000人を超えた。
ここから回復者を差し引いて、今現在、コロナ患者とされる人は、4940人。6月7日からの2週間で倍になった。もしこのまますすんだ場合、単純計算で、2週間後に倍になったとして、9880人となり、前回の波のピーク9808人を超えることになる。
また、今の所、無症状の人が多いと聞いていたが、入院を必要とする人、重症化する人がじわじわ増えており、23日の時点で、病院に入院している人は、1週間で、約70人増えて205人(30%増)。このうち45人が重症で、呼吸器依存は29人となっている。死者も、じわじわと増えて、23日朝で307人となった。
www.timesofisrael.com/its-rather-scary-for-all-of-us-israel-halfway-to-previous-covid-record/
22日コロナ閣議:コロナ病棟2000床準備指示
感染者数が、急速に増加していることを受けて、ネタニヤフ首相は、22日、コロナ閣議を開催。対策を協議した。防衛省は、予測ではなく、あくまでも準備という視点のための”最悪の事態”について、次の様に発表した。
今後、12万5000人が感染し、このうち、7500人が入院。このうち、2000人が人工呼吸器を要する重症になる。数百人が死亡する。これを受けて出された対策は以下の通り。
1)コロナ病棟2000床・人工呼吸器4000基準備
第二波に備え、コロナ専門病棟を全国に計2000床準備するよう指示した。また、人工呼吸器については、コロナ患者用に2000基、コロナ以外の患者用に2000基の計4000基を、準備するよう指示した。
2)国家コロナ下社会生活強化委員会設置
もはやロックダウンはできないため、市民それぞれの感染予防対策が重要である。このため、市民が日常生活で感染予防強化を強い新できるよう、市町村の担当者の訓練を統括する国家(コロナ社会生活)強化委員会を設置する。
日本のような自粛要請は、イスラエルで効果なしである。マスクの着用に違反した場合の罰金は、これまでの200シェケル(6000円)から500シェケル(1万5000円)に増額された。警察によると、一昨日、手渡された違反チケットは1500枚とのこと。
この他、店舗や企業が、感染予防を守っている場合に、「パープル・リボン」を発行し、安全性を見分ける対策も継続する。
3)患者追跡に、シンベト(国内スパイ組織)の、テロリストや容疑者を追跡するためのプログラムの適応再開を検討
第一波の際、イスラエルは、このシステムを用いて、感染者の行動や濃厚接触者を割り出していた。しかし、プライバシーを侵害して国が個人情報にアクセスできるようになるため、感染が落ち着いたことを受けて、先月、これを中止した。
しかし、再び感染者が増加していることを受けて、ネタニヤフ首相は再利用を検討している。しかし、シンベトがこれに難色を示しているとのニュースが漏洩したりした。保健省内部からも、このシステムの利用については疑問視する声がある。まだ明確な指示は出ていない。
www.jpost.com/health-science/coronavirus-cabinet-to-convene-as-cases-climb-632341
基本方針は、ロックダウンではなく、クラスター対策
先月、新政府発足と同時に、バル・シモン・ドーブ前保健省長官と交代して、保健省長官に就任したチェジー・レビ氏(医師)によると、イスラエルでは、先週だけで、イスラエル国内50の町で1700人の感染が確認されており、市中感染も疑われるという。検査は1日に1万から1万5000件行なわれる中、1.3%から2%の割で、感染者が発見されている。
今の所、最も陽性者が多いのは、エルサレム(29人)、ブネイ・ブラック(23人)、テルアビブ(23人)などとなっているが、感染の増加率をみると、北部アラブの町や、ネゲブ地方のベドウイン地域などで感染が拡大している。このため、そうした地域の短期的なロックダウンを行っている。
このように、イスラエルは、今の所はまだ状況をコントロールできているとして、レビ氏は、広範囲のロックダウンは実施しないとの政府の方針を説明した。
今後もできるだけ多くの検査とクラスター追跡により、どの地域に陽性者が多いかを見極め、限局的、一時的にロックダウンを行って、感染拡大を予防し、感染が広がっていない地域では、経済活動はできるだけ継続する方針である。
このため、エデルステイン保健相は、19日、クラスターを追跡するスペシャリスト300人の訓練を開始すると発表している。レビ氏は、また、冬には、コロナとともに、インフルエンザや風邪も加わってくるため、できればワクチン接種をすすめると述べた。
www.jpost.com/israel-news/health-ministry-d-g-israel-does-not-need-to-lockdown-632290
教育現場への影響
イスラエルでの第二波は、エルサレムの高校でクラスターが発生することからはじまったが、最終のデータでは、学生の感染者は749人。全国の学校(5200校)幼稚園(2万施設)の中で、休校、救園になっている施設は217校。全国の学生・教師の総数約250万人のうち、2万3636人が自宅隔離となっている。
軍隊への影響
エルサレムポストによると、イスラエル軍兵士で感染している人は、69人。自宅隔離担っている兵士は、3170人となっている。軍隊でも、できるだけ、ソーシャル・ディスタンスを維持しなければならないため、各部隊隊長にその対策が求められている。
第一波の時は、感染予防のため、兵士は休暇をとらなかったが、今は通常のように休暇をとり自宅のもどるようになっている。休暇から戻った兵士は、所属部隊に戻る前に、5日間待機させる。これをカプセル部隊システムという。ただし、休暇から戻った後は、1ヶ月は軍に滞在するとのこと。
このカプセルとよばれる小部隊は10人まで。屋内で集合する場合は、ソーシャルディスタンスを維持して50人までで、屋外の場合、100人までとなっている。しかし、いざ実戦となると、ここまでの維持は難しいと思われる。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/282282
失業保険に限界か
厚生労働省の社会保障を担当するイツィク・シュムリ氏と、国民保険長官のメイール・スピーグラー氏は、経済省に対し、7月末には、イスラエル人50万人に支給してきた失業保険(50−175日まで)が終了するとして、延長するよう警告する声明を出した。
両氏によると、政府のこれまでの方針によると、コロナ関連で職を失い、失業保険を受けている46万9314人が8月以降、受給できなくなるという。70%は27歳以下で、このままであれば、あらたな貧困層を生み出す可能性がある。
www.timesofisrael.com/welfare-minister-half-a-million-israelis-about-to-lose-unemployment-benefits/