8日新規感染者179人:24時間で最大 2020.6.9

マスクなしでリラックスしているテルアビブの人々 i24 news スクリーンキャプチャ

1日で179人陽性確認

イスラエルでは、8日(月)、24時間の新たな感染者が179人と、4月末以降で、最大を記録した。新たな動きとして、テルアビブのヤッフォで、46人の感染者が出て、エルサレムの37人より多かったことや、エイラットのホテル従業員から10人の感染者が出たことなどが報じられている。

イスラエルでは、4月中旬から経済活動を再開。その約2週間後から、感染者が増加しはじめ、1日の新たな感染者が100人以上という事態が続いている。現時点で、陽性とされる人は、計2620人。重傷者は29人で、このうち23人が人工呼吸器に依存している。

イスラエルでパンデミックが始まって以来でみると、感染者は、計1万8049人。死者は、5日から7人死亡して、計298人と300人に近づいている。

www.timesofisrael.com/in-alarming-spike-186-new-virus-cases-recorded-in-24-hours/

ネタニヤフ首相は、これまで段階的に進めていた規制の解除を、いったん停止すると発表。予定していた電車の運行を停止している他、結婚式やコンサートなど、人の集まりは、250人までに止めると発表した。

しかし、すでに規制解除した分野に関しては、再度規制に戻すことはせず、国全体のロックダウンも、今の所はしない方針である。

*政府が提示するロックダウン施行の指標:①1日の新たな感染者100人、②重傷者が少なくとも250人、③感染率が10日以内に倍になる

また休校になっていた135校のうち63校の登校再開は、予定通り実施される。(現在、学校関係者で陽性の判定を受けた人は、385人。自宅隔離をしている人は1万7605人)

政府は、6月14日に、規制解除の次の段階に入ることを計画しているが、状況により、変更もありうる。ネタニヤフ首相は、今の感染拡大は、人々が油断して、予防策を怠り始めていることが原因だと国民に注意を呼びかけた。

www.ynetnews.com/article/Sy4uuusnI

また、これまでコロナ対策を導いてきたバル・シモン・トーブ前保健省長官は、「油断すれば、5000人が、呼吸器に依存するようなことにもなりうる。」と強い警告を発した。

経済政策:付加価値税一部免除へ

ロックダウンによる経済の落ち込みは、イスラエルも世界諸国と同様である。4月末から経済活動が再開されたことで、30万人が職場復帰したが、新たに10万人が失業し、現在の失業者は、21.65%(Kan News) と依然、高いままである。これにまだ無給休暇に置かれている人もいる。

これに伴い、消費の落ち込みも激しい。ネタニヤフ首相とカッツ財務相は、衣類、靴、スマホ、家電、化粧品、おもちゃなどの付加価値税(日本で言えば消費税)を免除することを決めた。

イスラエルの付加価値税は、野菜などの食品など生存に必要最低限のものにはかからないが、衣類、家電や車などの他、レストランでの食事にも適応され、17%とかなり高い。

この一部を免除することによる財政への圧迫は、14億5000シェケルにのぼる。

www.timesofisrael.com/israel-cancels-some-sales-taxes-extends-unemployment-benefits-to-rescue-economy/

イスラエル銀行は、7日、コロナ危機によるイスラエルの財政赤字は、2020年末までに、1500億シェケル(約4兆5000億円)、GDPの11.5%になるとの見通しを発表した。

それによると、昨年1−5月までの赤字は10億シェケル(300億円)であったところ、今年は、462億シェケル(1兆3800億円)だという。イスラエルは、800億シェケル(2兆4000億円)を経済支援につぎ込むことを決めているので、今以上のロックダウンはどうしても避けなければならないわけである。

www.israelhayom.com/2020/06/08/israels-budget-deficit-grows-to-6/

エルアル航空:6月30日まで運行停止延長

コロナ危機で、真っ先に大きな被害を受けた企業の一つが航空会社である。ヨーロッパの航空会社が、6月中旬には、航空機の運営を再開する見通しとなっている中、イスラエルの航空会社はまだ運営再開の見込みはたっていない。

カッツ財務相は、7日、エルアル航空に対し、2億5000万ドル(約300億円)の緊急支援借款を提示した。これを受けるにあたり、エルアルは、1億5000万ドル(約170億円)の株を政府に提供する。これは、国営に近い状態になるということである。

エルアルが要求していた額は4億ドルであった。もし2億5000ドルで行くなら、職員のほぼ3分の1にあたる2000人を解雇することになるが、これについては、エルアルの組合の同意を得なければならない。エルアルは、運行停止を6月20日までとしていたところ、6月30日までに延長すると発表した。

これにより、エルアル職員6500人のうち、6000人が6月30日まで、無給休暇に置かれることになる。

www.jpost.com/israel-news/government-proposes-new-plan-to-bail-out-el-al-630607

この他、i24が伝えたところによると、集会やコンサートができずにいるアーティストたちが、国会前で、テントに泊まり込みで、休業補償を要求する打ったを行っている。この人々は、休業補償や失業保険を受けられない人々である。

キレるカッツ財務相:経済対策委員会

イスラエルの国会には、それぞれ委員会があり、政府が出してくる対策をまず委員会で論議し、十分な賛同を確認してから国会での審議となる。

8日、カッツ財務相は、休業者雇用維持支援金(55億シェケル)に関する経済委員会に出席した。この案は、会社が現在無給休暇にしている労働者の雇用を維持するなら、一月あたり、一人につき7500シェケル(約25万円)を保障するという案である。

ところが、会議の席で、同じリクードで、元エルサレム市長のバルカット氏が、計画への懸念を表明しようとしたところ、カッツ財務相が発言を阻止し、「君は最初から反対していた。同じ党なのだから賛成しろ。」と話を聞こうともせず、立ち上がってしまった。

バルカット前エルサレム市長は、成功したビジネスマンであり、エルサレム経済を立て直した経験から、新政権では財務相になるとみられていた。しかし、最終的にカッツ氏が財務相になったという経過がある。このためカッツ氏にもイラつく状況なのだろう。

バルカット氏以外でも、ユダヤ教シャス党のアゾウレイ氏も意見をさしとめられ、「君はシャス(連立与党)ではないのか。ならば賛成しろ。」と言われた。

経済状況を見ると、もはや手もつけられないほどの事態で、考えることは満載だ。カッツ財務相がイラつくのも理解出来る。イスラエル経済の奇跡的回復とともに、その厖大な責任を担っているカッツ財務相を覚えてとりなしを。

www.timesofisrael.com/finance-minister-browbeats-fellow-coalition-mks-at-committee-meeting-some-leave/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。