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5月25日に、ミネアポリスでアフリカ系市民のジョージ・フロイドさんが殺害されてから、アメリカ全土で、人種差別デモが始まり、一部は暴徒化して、逮捕者9000人、死者13人という事態になっている。(ABCNews)
またこのデモの波は、アメリカにとどまらず、東京を含む世界にまで拡大しており、これまでは極右への懸念が優勢であったところ、いよいよ懸念されてきた極左勢力の台頭とみられている。
アメリカ全土で拡大する混乱
被害者のジョージ・フロイドさんの弟が、デモで暴力に及んでいる人に対し、「あなたがたは私の苦しみの半分もわかっていない。その私が暴力に訴えていないというのに、あなたがたはいったい何をしているのか。そんなことをしても兄は戻らない。」と暴力をやめるよう訴えた。
しかし、暴徒化している人々の炎上は収まらず、ワシントンDCでは、ホワイトハウスが、群衆に囲まれ、ロサンゼルスや、ニューヨークでは、略奪にまで発展している。
ワシントンDCと23州の40の都市で夜間外出禁止令が発動されているが、午後23時以降から午後20時以降にまで繰り下げられたところもある。
ニューヨークでは、新型コロナで大きな困難に見舞われたデパートのメーシーズが略奪の被害にあった。ワシントンDCでは、ホワイトハウスの周囲で、警察が催涙弾を使ったので、デモ隊が周辺家屋へ駆け込んだ。ある男性は、自宅を開放し、デモ隊80人を一晩保護したとのこと。
こうした暴動は主に夜間でのことで、昼間は、ニューヨークも含め、平和的なデモも行われている。そうした地域では、デモ隊と治安部隊もデモに同調し、ともに跪く様子もみられている。しかし、これほどまでに人々を動かしているのは何かと思うほどに大群衆になっている。
edition.cnn.com/us/live-news/george-floyd-protests-06-01-20/h_7f5ad4803d2f42ed5140ef8dd300a094
世界に拡大するデモ
こうしたデモは、アメリカにとどまらず、イギリス(ロンドン)、ニュージーランド、ベルリン、オーストラリア(シドニー、ブリスベーン)、パリ、また、東京でも発生した。
*東京のケース
フロイドさんとの直接の関係はないが、東京渋谷では、5月22日、トルコ系クルド人の男性が、警官2人に押さえ込まれた際、首に全治1ヶ月の負傷を負った。その様子の動画がネットに拡散された。
この男性は、違法性がなかったとして間もなく釈放されていたことから、30日、渋谷で、日本人市民ら約200人が、クルド人たちとともに警察に、「恥を知れ」などと叫びながら警察の外国人差別を訴えるデモを行った。
mainichi.jp/articles/20200530/k00/00m/040/179000c
いよいよ極左台頭か:極左集団アンテファの存在
暴動が大規模に拡大していることについて、トランプ大統領は、背後に極左集団アンテファ(反ファシスト・反極右)の扇動があると指摘。この集団をテロ組織にすると発表した。
これにより、トランプ大統領は、テロを取り締まるという視点で、各州に州兵を出すとともに、それでも沈静化できないときは、米軍の派遣に及ぶも発表。しかし、相手が極左なので、こうした強圧的な態度は、結局、さらなる反発を招く結果になっている。
さらに月曜、デモ隊がとりまくホワイトハウスを出て、近くのセント・ジョージ教会(エピスコパル英国国境教会)へ徒歩で向かい、そこで聖書を掲げてポーズするという行動に出た。この教会も、暴動の被害で教会の一部が破壊されていた。
しかし、大統領が歩く前には、警察が催涙弾を使って、デモ隊を一掃したことや、教会にはなんの連絡もしていなかったことや、聖書を持ち出したことにキリスト教会からも反発が出ている。
www.bbc.com/news/world-us-canada-52890650
トランプ大統領としては、アメリカは聖書を基盤とする偉大な国だと言いたかったようだが、これもまた相手が極左となると、油に火を注いだ結果になっている。
*極左とは
極左とは、国粋主義にまで発展する右派の反対で、社会的弱者を支援する”いい人”集団のイメージから出発し、極端になると、政府や富裕層への攻撃を正当化するようになる。反ユダヤ主義、特に近年の反イスラエル主義においては、極右より、むしろ極左の方が危険だと懸念されている。
www.newsweekjapan.jp/mutsuji/2018/08/post-39_1.php
ディアスポラとイスラエルのユダヤ人の反応
いよいよ極左が動き出したとみえるジョージ・フロイドさん関連デモだが、ユダヤ人はどう反応しているだろうか。
アメリカでは、130のユダヤ人組織、フロイドさん殺害に怒りを表明し、このデモに賛同すると発表した。
www.timesofisrael.com/130-jewish-groups-outraged-by-floyd-killing-pledge-to-fight-systemic-racism/
ディアスポラ(イスラエル以外の国在住)のユダヤ人の多くは、世俗派で知的である。このため、左派思想で、反イスラエルに傾く人も少なくない。そのため、近年、右派に傾くイスラエルとディアスポラ(海外)のユダヤ人との関係は悪化する傾向にある。
イスラエルでは、2日、テルアビブのビーチで、前アメリカ大使館前でも、ジョージ・フロイドさんの件に関して、「黒人の命は大事」とするデモが行われた。参加者は最初5−6人であったのが、200人ぐらいになっていったという。
参加した多くはやはり黒人のエチオピア系とアフリカ系アメリカ人たちであった。イスラエルでも、中心は白人社会なので、同じユダヤ人でも有色系は差別されることが少なくない。エチオピア系の人たちが警察に不当な扱いを受け、デモにまで発生したことは過去にも数回あった。
またイスラエルでは、数日前に、東エルサレムで、自閉症のパレスチナ人が、治安部隊に殺害されたばかりで、この件についての警察への抗議までもが含まれていた。
www.timesofisrael.com/protesting-floyd-killing-israelis-fume-over-police-violence-at-home-and-in-us/
主催者は、「人種差別を受けている人々の苦しみを放置するわけいはいかない」と語っている。
このように、確かに社会的弱者への差別は悪であるので、左派の人々は、自分の考えは正しい、正義であると考えがちである。しかし、これが極端になっていくと、暴力が正義の暴力になったり、正当化する可能性があるので、極左は、極右以上に危険になる可能性があるということである。