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連立交渉暗礁へ
青白等ガンツ氏が、連立政権立ち上げの指名を受けてから、今日で10日目になる。要は、ガンツ氏(青白党)は、ネタニヤフ首相(リクード)と組むしか道はないのだが、その条件で交渉が行なわれている。
新型コロナの危機でもあり、交渉は、ネタニヤフ首相が先に首相になるという交代制で、いったんは統一政権に向かっていると思われたが、ここへ来てまた、暗礁に乗り上げている。
連立交渉において、ネタニヤフ首相は、ガンツ氏に、新型コロナ危機を乗り越えるため、向こう1年は、自身を首相からはずさないでほしいと要請した。これはリブリン大統領の考えでもあった。すると、青白党は、その場合、経財相、防衛省、教育省など主要ポジションは全部取ると返答した。
交渉が続く中、ガンツ氏は、一時、国の危機を乗り越えるためとして、ネタニヤフ首相の要請に応じる姿勢も見せていた。しかし、青白党内部はあくまでもこれに反対し、ネタニヤフ首相の力を極力弱める方策をすすめようとした。
エデルステイン国会議長が国会閉鎖
その一つが、国会議長を青白党員にすることと、国会準備委員会を立ち上げ、ネタニヤフ首相の国政に大きくブレーキをかけるという作戦である。
今回就任したばかりの新しい第23国会は、統一アラブ政党を入れると、ガンツ氏側に立つ議員は過半数61議席になっている。このため、アラブ政党が協力する限り、国会での採択は、すべてガンツ氏に有利な結果になる。
青白党と、アラブ政党は、他のことでは一致できないが、ネタニヤフ首相を退陣させるという点では一致する。
このため、青白党は、今のリクード党エデルステイン国会議長を更迭し、青白党から議長を立てるため、国会で議長選挙を行うことと、国会準備委員会を作って、国会を監視する委員会をすべて、青白党が制覇するという作戦である。
これに対し、エデルステイン国会議長は、国会準備委員会については、中道左派、右派と平等にポジションを振り分けるとの提案をしたが、青白党はこれに応じず、エデルステイン国会議長の更迭も申し出た。
このため、エデルステイン国会議長は、国会を少なくとも月曜まで開催しないと宣言した。
すると、「コロナ危機で、人権侵害になるような政策も出てくる中で、国会が不在であれば、ネタニヤフ首相を監視制止することができず、独裁状態になる。民主主義の崩壊にあたる。」と、世論からも激しい反発が出た。
60万人が反ネタニヤフ・リクードのバーチャル・デモに参加
通常ならデモが行われるところ、22日、国会を閉じようとしたネタニヤフ首相とリクードに反対するバーチャルデモが行われた。デモはフェイスブックを介して行われたが、60万人が見ていたという。出席とクリックした人は6万5000人。もしコロナ危機がなかったら、6万5000人が国会閉会に異議を申し立てたということである。
このデモでは、元シンベド長官、ユバル・ディスキン氏や、元モサド長官といった人々が、メッセージを述べていた。
www.timesofisrael.com/nearly-600000-watch-virtual-protest-against-pm-likuds-shuttering-of-knesset/
エデルステイン国会議長は、約束通り、23日(月)、国会を招集した。
23日、国会で国会準備委員会設立:リクードはボイコット
国会を招集したとはいえ、イスラエルでは10人以上の集会は禁止されている。そのため、6人づつが入場して、国会準備委員会に関する採択を行った。この準備委員会は、政府が運営するべき様々な働きを担っていく委員会を立ち上げる働きを担う。
6つの委員会とは、予算を担う経済委員会、外交委員会、防衛委員会(新型コロナ対策を監督する)などで、このほか、”コロナ委員会”が立ち上げられ、ネタニヤフ首相が出す政策を監視する。
リクードはじめ、右派議員は、青白党が、エデルステイン国会議長の件で、協力する姿勢がみられないとして、この採択をボイコットした。エデルステイン国会議長も欠席した。このため、委員会の責任者はみな、青白党になった。
リクード右派陣営は、当然、これを拒否すると表明した。
すると、24日、エステル・ハユート裁判長が、エデルステイン国会議長に対し、「国会を閉じることは、民主主義に反する。国会議長を決める選挙を25日水曜までに行うように。」と指示する声明を出した。
これに対し、エデルステイン国会議長は、「最高裁は国会に口出しするものではない。」として、最高裁の指示に従うことはないと表明し、国会をいつ招集するかの時期表明をしなかった。リクードの議員たちは、この姿勢をつらぬくエデルステイン議長を指示すると表明した。
www.timesofisrael.com/high-court-edelstein-undermining-democracy-must-hold-vote-on-speaker-by-wed/
リクードのスポークスマンは、「このような危機にあって、青白党は協力することをせず、このような恥知らずなことをした。すべての委員会が、全部一つの党で締めるなど、ありえない。」として、今後、国会設立のプロセスをボイコットすると発表した。
しかし、最高裁の指示に従わないということの方が、民主主義を危うくするのではないかとの疑問の声が、右派からも出ている。国会前では、エデルステイン議長の決断に抗議するデモも行われた。
www.ynetnews.com/article/SyQYDvDUL
新型コロナ危機という大きな危機と、政府の混乱という二つの災難がイスラエルを襲っていると、エルサレムポストは伝えている。
www.jpost.com/Israel-News/Fighting-the-coronavirus-plague-after-the-10-plagues-Analysis-622211