トランプ大統領のイスラエルに好意的な和平案の開示、つづいて、ロシアで、収監されていたイスラエル人女性ナアマ・イッサカルさんを取り戻すなど、ネタニヤフ首相は、汚職などで起訴されたのちも、勲章をふやすねらいもあるのか、熱心に外交を進めている。
<ウガンダの大使館エルサレム移動はなし?>
ネタニヤフ首相は3日、ウガンダを訪問。エンテベで、ムセベニ大統領と会談した。イスラエルにとって、アフリカとのつながりは、経済効果だけでなく、支持者を増やすという意味でも重要課題である。
ネタニヤフ首相は、ムセベニ大統領に、もし、ウガンダがエルサレムに大使館を置いたら、イスラエルもカンパラ(ウガンダ首都)にイスラエル大使館を開設すると述べた。ムセベニ大統領は、それについては、”調査・検討中”と返答したとのこと。具体的な見通しはないということである。
www.timesofisrael.com/uganda-president-says-he-is-studying-opening-embassy-in-jerusalem/
ウガンダでは、福音派クリスチャンが活発である。先月、福音派クリスチャン数千人による親イスラエルマーチも行われたところで、その大使館がエルサレムに移動する可能性も示唆されていた。
www.jpost.com/International/Ugandans-comes-out-en-masse-to-pray-and-sing-for-Israel-615478
<敵対国スーダンとの国交正常化???>
ウガンダ訪問中、ネタニヤフ首相は、隣国スーダンの最高評議会議長ブルハン氏とも会談した。スーダンは、イスラエルに対して敵対する行動を取り続けている国であるため、両首脳の会談は驚きをもって世界に報じられた。
ネタニヤフ首相は、ブルハン氏との会談後、両国は、関係正常化をすすめることで合意したと発表した。しかし、ブルハン氏は5日、「敵対行為の停止については話し合ったが、国交正常化については、話し合っていない。」と述べた。
また6日、スーダンの国会は、ブルハン氏は最高評議会議長(首相は別にいる)であり、イスラエルとの国交正常化を進める権限はないとして、その可能性を否定した。
www.timesofisrael.com/sudan-says-its-transition-government-lacks-mandate-to-normalize-israel-ties/
*イスラエルを憎む国スーダン
スーダンは、エジプトのすぐ南にあるアフリカでは大きさ3位の国である。国内にはナイル川があり、豊かな農業の他、石油の産油国としても知られる。また長引く内戦や、世界最大の人道問題とされるダルフール紛争もスーダンの内戦である。
スーダンの前バシール大統領は、2005年から15年近く続いたその独裁政権の中で、ジェノサイドの罪で国際刑事裁判所から2回も逮捕状が出された人物である。
この時代に、スーダンはアルカイダを支援。中国とロシアとの関係も深いことから、伝統的に反欧米姿勢とつらぬいていた。イランとの関係も報じられたこともあり、反欧米、反イスラエル主義で知られる。
しかし、2019年、バシール大統領は、クーデターで排斥され、現在の暫定政権が立ち上がったばかりであった。ネタニヤフ首相のブルハン氏との会談は、かなり時期的にも早く、世界が驚いたのも無理はないということである。
なお、スーダンは、聖書の預言によると、エチオピアとともにクシュとよばれる地域に入るとみられる。クシュは、イザヤ書18章、エゼキエル29,30章など多数登場して、裁きを受けると書かれている他、将来、ロシアやイランとともに、イスラエルに攻め入る国の一つ(エゼキエル38章)と考えられている。
<石のひとりごと>
イスラエルではいよいよ来月に総選挙を控える。イスラエル人に聞くと、ネタニヤフ首相しかいないという人も多いが、ネタニヤフ首相は、恥ずかしいほど必死に得点稼ぎをしているという人も少なくない。
確かに、今回のアフリカ訪問は、重要ではあるが、特に大きな変化をもたらすことはなさそうで、いかにも得点稼ぎであったかもしれない。
しかし、スーダンの独裁政権が倒れたのがほんの昨年であったことから、今後、スーダンがイスラエルとの国交を回復するのか、このまま、イスラエルに敵対するままであるのか、注目される。今回のネタニヤフ首相訪問は、スーダンにとっては、主の側につくのかどうかという、主からの招きの手であったかもしれない。まあ、石のひとりごと。