4回目11人解放:ハマス約束違反で長時間遅延の後 2023.11.28

4回目となる人質解放は、一筋縄ではいかなかった。イスラエルは、ハマスが提出したイスラエル人11人のリストに、母子を引き離すことはしないといった基本的なルールが守られていなかったことなどから、受理するかどうかかなり時間をかけて論議していた。

またこの時に続けて休戦と人質交換を継続するかの結論も出さなければならなかったとみられる。最終的に人質がイスラエルに引き渡されたのは、昨日夜になってからであった。今回もエジプトを経由しないケレン・ショムロンの検問所からの移送となった。

これとは別にタイ人6人も予定時間をかなりすぎてから、解放された。

キブツ・ニール・オズの子供9人とその母親2人解放

今回解放された11人は全員キブツ・ニール・オズの住民(400人)であった。今回解放された5家族の母と子供たちの父親5人は解放されていない。このキブツでは、まだ49人がガザに残されている。

シャロン・アロニ・クニオさん(34)とその双子(3)の娘ユリちゃんとエマちゃん
クニオさん親族は大勢が人質になっている。24日、ダニエル・アロニさんとその娘のエミリアちゃん(6)が帰還し、今回は、ダニエルさんの妹のシャロン・アロニさんとその3歳の双子が解放された。しかし、シャロンさんの夫で双子の父親デービッド・クニオさん(34)とその兄弟アリエルさんとそのパートナー、アルベル・ヤフードさんはまだガザにいる。

カリーナ・エンゲル・バートさん(51)とその娘ミカさん(18)、ユバルさん(11)
カリーナさん(アルゼンチン国籍もあり)は、抗癌治療を終えたばかりだったが、52日の拘束を耐え忍んで、2人の娘と帰還を果たした。ユバルさんは、ハマス襲撃の時に足を負傷しており、移動は車椅子だった。カリーナさんのパートナー、ロネン・エンジェルさん(54)はまだガザにいる。

エレズ・カルデロン・サハルさん(16)とその弟エレズさん(12)
2人の母親ハダスさんは、自宅近くの家に隠れていて8時間後に救出されたが、子供たち2人は拉致されて、エレズさんは、ハマスのビデオの中に写っていたのであった。元夫で、2人の父親オフィルさん(53)は、まだガザにいる。
子供たち2人の祖母カルメラ・ダンさん(80)と、自閉症で家にいた孫のノヤさん(13)は、ハマスに殺された。

オール・ヤアコブさん(16)とその弟ヤギルさん(12)
ハマスの襲撃の時、ヤアコブさんとヤギルさんは、父親のヤイルさん(59)と家の中のシェルターにいた。母親に電話しており、ハマスが来た時、「連れて行かないで。僕はまだ小さいから」とヤギルさんが叫んでいる声が残されていた。その後2人もハマスのビデオに写っていたのだった。父親のヤイルさんはまだガザにいる。

エイタン・ヤハロミ君(12)
ヤハロミ君は、一人で解放され、母親バットシェバさんと兄弟たちに迎えられた。

10月7日、朝6時半。サイレンが鳴ったので、ヤハロミ君の父親オハッドさんは、家族をシェルターに入れて自分は、外に出てハマスを戦おうとした。ハマス4人が来て、オハッドさんは撃たれて負傷してしまった。

10時ごろ、ハマスは家族を外へ連れ出した。オハッドさんは、家族に「彼らと共に行け。愛してる。」と言って、バイクに乗せられて連れて行かれた。バットシェバさんは、子供たちは連れて行かないようにとたのんだが、ハマスは全員をバイクに分乗させて国境へ向かった。

ところが、国境に近づくと戦車が2台現れ、パレスチナ人らが興奮して乱射してきた。バットシェバさんたちを乗せていたバイクは転倒した。それでバットシェバさんたちは、急いで走り、頭の上をミサイルが飛ぶ中でも、キブツの方向へ走り続けた。

走った先にいたのは、やっと到着したIDF兵士たちの乗ったバスだったという。バットシェバさんと2人の子供は助かった。しかし、エイタン君はとらえられていた。オハッドさんは、その後どうなったのかわからないままである。

www.timesofisrael.com/nine-children-two-mothers-released-from-hamas-captivity-as-truce-holds-for-4th-day/
www.ynetnews.com/article/r1qqnlzha#autoplay

帰宅した人質たちは、殺されてしまった家族のことや、自宅が焼き払われてもう存在しないといった厳しい現実を聞かされているという。

以下はキブツ・ニール・オズの10月7日以前とその時のSNSでの会話の様子をまとめたクリップ。

ハマスによる惨殺が始まったのは朝6時半。終わったのは午後1時ごろ。治安部隊が到着したのは、午後3時だった。

パレスチナ囚人33人釈放:釈放すぐにハマスに忠誠誓うテロリストも

11人がガザから戻された数時間後、イスラエルは、パレスチナ囚人33人(女性3人と未成年男性30人)を釈放した。

イスラエルが釈放しているのは、未成年とはいえ、多くは実際にイスラエル人を殺そうとしたテロリストである。被害にあったイスラエル人としては、当然ながら、その者たちが釈放されることを穏やかに受け入れられない人もいる。

東エルサレムで今年4月、イブラヒム・スルタン・ザメル(16)に銃撃されて、重傷を負ったヤアコブ・モシェさん(48)と、モシェ・ハスさん(50)は、釈放者リストの中に、ザメルの名前があることを発見。首相府に「その名前があるのを見て以来、精神的苦痛が大きくて療養の害になっている。その名前をリストからはずしてほしい。」との書簡を送っていた、

以下はザメルの犯行の様子

また、今週末に釈放されたアブ・アガミヤは、釈放するやいなや、10月7日のイスラエル襲撃を指揮したハマスのモハンマド・デイフの武器になると叫んで、ハマスへの絶対的な支持を表明していた。

www.jpost.com/middle-east/article-775449

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。