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3年ぶりのマーチ
28日午後3時からは、3年ぶりに、ポーランドのアウシュビッツでは、March of the Living (アウシュビッツ(強制労働収容所)からビルケナウ(ガス室)までの3キロ)が行われた。
アウシュビッツ・ビルケナウが、収容所として稼働していたのは、1940年6月からソ連軍に解放された1945年1月27日までの約4年7ヶ月。1942年3月から、ユダヤ人たちが列車に積み込まれて到着し、4基のガス室(1日6000人ほど)が殺されて行った。3年ほどの間に、110万人がここで虐殺された。これは、決してナチスだけの問題ではなく、人類が決して忘れてはならない人間の罪深さを表している。
3年ぶりとなった今年のマーチへの参加者は、コロナの影響でまだ少なかったが、25カ国から2500〜3000人。先頭を歩いたのは、サバイバー8人と、ポーランドのドウュダ大統領。日本からは杉原伸生さん(杉原千畝氏息子)も参加していた。
アブラハム合意の実:レバノン、シリア、湾岸諸国からの参加
今年、注目されたのは、March of the Living にイスラエル在住の若いアラブ人学生100人の他、UAE、ヨルダン、エジプト、モロッコ、トルコ、レバノン、シリア、また東エルサレムのイスラム教徒が含まれていたことである。
Proud to be at #MarchoftheLiving with my dear friend Ahmed Obaid Al Mansouri pic.twitter.com/d23WiqcxPP
— פלר חסן נחום Fleur Hassan-Nahoum (@FleurHassanN) April 28, 2022
アブラハム合意が締結されたあと、イスラエルとアラブ諸国との関係強化を目指す団体シャラカが結成され、今回、アラブ諸国のイスラム教徒たちが、マーチに参加することになったとのこと。
今回参加したアラブ人たちは、特にSNSインフルエンサー、執筆者や活動家など、聴衆を持つ人々だという。
Times of Israelは、参加者の一人、レバノンで生まれ、ドイツの大学で学ぶルワン・オスマンさんを取り上げている。オスマンさんは、大学でドイツに行くまでユダヤ人に会ったことがなく、初めてユダヤ人を見たときは、攻撃されるのではと怖かったなどと話している。
しかし、すぐにユダヤ人が危険ではないことがわかってきたという。ルワンさんは、それまでは、ヒズボラ支持者だったが、調べていくうちに、状況は理解していたのと反対だったことがわかったなどと語っている。その後はユダヤ人とも共に働いている。
オスマンさんは、アラブ人とイスラエル人が、それぞれの意思で、どちらもがここに来ていることは本当に興味深い。若者たちは、これまでの世代より、説得しやす苦なっていると思う。信じられないかもしれないけど、イスラエル人と話したいとも思っている人も多いと語っている。
アヤシャ・ジャラルさんは、バーレーンのUNESCO関係者で、シャラカを通じてイスラエルを訪問、ヤド・ヴァシェムにも行ってから、アウシュビッツに来た。バーレーンでは、ホロコーストは起こっていなかったと教えられていたという。
シャラカのCEOアミット・デリ氏は、「アラブの世界では、歴史のこのページは存在しないので、それでも参加しようとするアラブの若者がいることに感動する。中東諸国のインフルエンサーたちが、ホロコーストの歴史を実際に見て、母国でその情報を広めるようになるということは歴史的なことだと思う。」と語っている。
なお、UAEは、これとは別に、政府からの代表を、March of the Livingに派遣していたとのこと。
石のひとりごと
これはかなりの驚きだった。まさに世代が変わりつつあると言うことだろう。とはいえ、このラマダン期間中に、こんな動きをするイスラム教徒たちは、まだまだ全然少数派である。本当にアラブ社会を揺るがすような影響を及ぼすことができるようにと思うが、とにかくも大きな一歩になるよう、祈りたい。