24時間感染者668人:バット・ヤムとアシュドドを制限地域に指定 2020.6.26

コロナ患者のために、イスラエル軍81部隊が開発した人工呼吸機 出展:wikipedia

イスラエルでは1日の感染者が、毎日100人以上づつ増加しており、25日の感染者は668人となった。これまでの24時間の感染者数最大値819人(4月3日)に追いつく勢いとなっている。

ちなみに日本で24時間の感染者数最大は、720人(4月11日)なので、人工が日本の13分の1しかないイスラエルで、1日の感染者が668人というのが、どれぐらい多いかは想像していただけると思う。

総感染者数から回復者数をさしひいた現在の有症者は、6084人で、このうち、病院に入院している人は186人。このうち、中等度とされる人は52人、重傷者は47人。人工呼吸器依存者は29人。死者は1人増えて309人となった。

有症者のうち、837人は学生と教師で、全国230校が休校。2万2850人の学校関係者が自宅隔離となっている。

イスラエルのコロナとの戦いは、検査実施に重点を置き、感染者を早期に明らかにして、重症化を防ぐとともに、要注意地域を明らかにして、限局的、必要最短期で隔離するというものである。同時に、感染があまり出ていないところでは、通常通りの経済活動を続ける。

現在最も要注意とされるのは、テルアビブ近郊のバットヤムで、この3日間で40人の感染者(12%増)があきらかとなった。ここだけで今も204人が有症者である。

このため、テルアビブ、バットヤム、また同じく陽性者が出ているアシュドド、ブネイブラックでも、検査体制を強化する。

また、チェジー・レビ保健省長官は、すでに制限地域とされてきたアララ(ベドウイン地区)の制限を延長することに加えて、バットヤムと、アシュドド南部の3地区も制限地域に指定。この地域内の学校、幼稚園など、すべての教育施設を休校とし、人々の集まりを10人以下までと指示した。

一方で、先週、制限地域に指定されたラファット(ベドウイン地域)、ヤッフォのアジャミ地区のでの制限は解除された。ただし、マスク着用や、ソーシャルディスタンス(2m)などの基本的感染予防は継続である。

www.timesofisrael.com/668-new-infections-recorded-over-past-24-hours-in-largest-rise-since-early-april/

<シェバ・医療センターで重傷者90人対応病棟を準備>

感染者が重症化するのは、発症から1−2週間後なので、今後感染者数の増加とともに、重傷者も増加してくることが懸念される。このため、イスラエルで、最初にコロナ病棟を設置したシェバ医療センター(2000床)は、5月でいったん閉鎖していた地下のコロナ病棟(重傷者90人収容可能)を再開。準備をすすめている。

イスラエルでは、将来のロケット攻撃に備えて、必要時には、短時間で、地下駐車場をシェルターつきの病院にできる病院がいくつかあるが、その施設をコロナ用に使っていたようである。

シェバ医療センターは、コロナ渦の中で、最先端の遠隔医療を実施してきただけでなく、世界ではじめて、コロナ患者の死別時に家族がそばにいることができる病床も備えた。

このほか、軍が運営する中等度の患者を受け入れるホテル病棟は今も6件あるが、さらにその数を増やす準備を行うとのこと。

www.ynetnews.com/article/Sya8NUGRL

<集会制限は現状維持>

最悪の事態に備えながらも、現在、結婚式や、コンサートなどの文化活動での集会は250人までとする制限を変えていない。しかし、チェジー・レビ長官は、将来的に縮小する必要が出てくる可能性は否定していない。

今の所、小さいこどもたちの日帰りキャンプ(イスラエルはまもなく夏休み入り)は許可する方針だが、ティーンエイジャー以上の高学年学生のキャンプには、まだ明確ではないが、抑制する方針とのことである。

サデツキー公衆衛生担当官は、高齢者は、大きな集会には出ない方がよいとの警告を出した。

www.timesofisrael.com/health-chiefs-weddings-may-be-scaled-back-older-people-should-stay-off-buses/

<石のひとりごと:イスラエルの方針のわかりやすさ>

イスラエル政府の方針が完璧というつもりはないし、市民の間には多くの混乱もある。しかし、感染予防に関する国の方針という点では、非常にわかりやすく、少なくとも、国の基本方針に対して、市民からの大きな疑問や反発は出ていない。今の所ではあるが、政府の基本方針には、おおむね合意しているということであろう。

アーティストなどが、首相府前などでデモを行っていたが、これは国の感染予防対策に対する反発ではなく、経済支援を求めてのデモである。

日本では、どこをめざしていくのか、また、前回問題点としてあきらかになった検査数の問題や、IT化の課題、コロナ死亡者の定義づけなどに、どんな改善があるのか、どうもバラバラでてくるのと、政治家のコメントに具体性がないので、実にわかりにくい。

一方、民間では、医療技術や、様々なウイズ・コロナ関係のスタートアップを支援する発表会や、イスラエルのスタートアップと、事業者とつなぐオンラインのカンファレンスもかなり頻繁に行なわれている。

コロナ禍に関して、日本はいったいどうなっていて、どこあたりにいるのか、政府にはぜひ統括して、道筋をしめしていただきたいところである。・・・が、それがないということを前提に、それぞれが情報収集を積極的に進めて、前に進める人や会社、組織だけが、これから生き残るということなのかもしれない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。